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ブルーノ・マーズの最高傑作! 娯楽性に振り切った『24K・マジック』が爆発的に売れる理由

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内本順一
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 11月18日に発売されたブルーノ・マーズの3rdアルバム『24K・マジック』が爆発的に売れている。数字に関しては日々伸びていくばかりなので最新のデータをチェックしていただきたいが、とりあえずiTunesのチャートにおいて世界31カ国以上で1位を記録したのを始め、あちこちのチャートで総合1位を獲得。来年3月から始まる世界ツアーのチケットは販売開始から24時間で100万枚以上が売れたそうで、いまのブルーノがいかに勢いづいているかがわかるというものだ。

 『24K・マジック』は発売当日からSNS上での広がり方も凄まじく、聴いた誰もが「最高」と絶賛。日本のミュージシャンのウケもよく、スガ シカオは「めっちゃFUNKYでシビれた。いままでのアルバムで一番好き!」とツイートしていたし、星野源は自身のラジオ番組で「ジャケットも含めて世界観がバッチリ統一されていて、本当に最高」と褒めちぎりながら数曲をかけた。何しろ絶賛の嵐が吹き荒れているわけなのだ。

 チャンス・ザ・ラッパー『Coloring Book』からフランク・オーシャン『Blonde』まで、2016年は聴かずに通り過ぎることのできない国外重要作が数多く誕生。とりわけ米国産の傑作が次々に生まれている年であるわけだが、シリアスでアート性の高いそれらとは、『24K・マジック』は種を異にする作品だ。低体温のダウンビートで抽象性を伴ってジワジワ迫りくるのではなく、メロディもサウンドも明快で華やか。社会的だったり政治的だったり宗教的だったりの主張や問題提起も、ここにはない。芸術性ではなく娯楽性のほうに迷いなく振り切ったアルバムで、その意味でブルーノは自分の役割、使命を、完全にわかっていると言える。世界的にオルタナティブかつ深遠な傑作が続々登場しているいま、誰もが単純に楽しめるこのようなアルバムが世に放たれたことが、かえって新鮮。「こういう音楽を聴きたかったんだ!」と声をあげたくなる人の気持ちもよくわかるというものだ。

 基本、歌詞は“パーティーしようぜ。楽しくやって気持ちよくなろう”というトーンのもの。踊って、いいお酒飲んで、愛し合おう。そういうことだ。が、もとよりブルーノは、誰もが身に覚えのある特別じゃない行為や感情を特別なものとして聴かせる(特別なこととして実感させる)才能を持ったシンガー・ソングライター。歌詞のなかに小道具を入れ込むのが実に上手いし、髪型だったり(例えばパーマ)、ドレスだったり(例えばヴェルサーチ)、お酒だったり(例えばストロベリー・シャンペン)、旅先だったり(例えばプエルトリコ、例えばパリ)の名称を具体的にして聴く者にイメージを浮かび上がらせる術に長けている。そう、優れた映画監督がそうであるように。特に今作は前2作と比べ、シチュエーションがある程度統一され、曲順も練られているため、まさに一遍の映画を楽しむ感覚が味わえる。まあ、パーティー好きでモテモテのオレがセクシーなガールをモノにして気持ちよくなって、イエ~イ最高だぜ、ってなってたら、電話に出てくれなくなって、サヨナラされちゃって、ああもっと大切にすればよかった、本当に愛してるのはキミだけだとようやく気づいたのに……という、それはとても単純なお話であるわけだが、しかしパーティーの昂揚感と愛し合ってる際のロマンチックなムードと別れたあとの切なさ悲しさを、同等の説得力、同等の強度で伝えられるのもまた彼の優れた才能。チャラいことを歌ってもどこか洒落ていて、ちょいワルを気取ってもその向こうから誠実さと人間好きなところとミュージシャンシップが見えてくる、そういう稀有なアーティストなのだ。

 先に歌詞のことから述べてしまったが、今作『24K・マジック』の何が面白いかと言えばまず、80年代、そしてそれ以上に90年代初頭のブラックミュージックのうま味をすくいあげて随所に散りばめているところ。そのサウンドが歌詞と連動し、ラグジュアリーともバブリーとも言える世界観を立ち上がらせて聴く者に華やいだ気分を与えるのだ。だからその時代に夜遊びしていた現40代~50代前半の人たちなら、食いつかずにいる理由がない。実際、筆者とFBで繋がっているその世代の方々の本作を聴いたときの反応たるや凄まじいもので、その声をまとめるなら「なにこれ、オレたち(私たち)のための音楽じゃん!」といったふう。EDMにもインディR&Bにもノリきれなかった人たちほど絶賛しているのが面白く、誰かが言ってた「おっさん(&おばさん)ホイホイ」という譬えにも頷いてしまう。

 例えばオープナー「24K・マジック」のイントロのトーク・ボックスは、まんまロジャー・トラウトマン(ザップ)流儀だし、シンセの使い方はプリンス的で、ハハァ、オッオーといった鳴き声のようなコーラスの合いの手はモーリス・デイ(ザ・タイム)的。3曲目「パーマ」のファンク感はそのままJB~プリンスのライブを想起させ、5曲目「ヴェルサーチ・オン・ザ・フロア」のメロディの美しさはマイケル・ジャクソンのそれをイメージせずにいられない(この曲のキーボードはMJとの共演もあるグレッグ・フィリンゲインズ)。6曲目「ストレイト・アップ・アンド・ダウン」のイントロの「フ~ウ~ウ~」はスティービー・ワンダー風だが、この曲では90年代前半に活動した4人組男性R&Bグループ・シャイの「ベイビー・アイム・ユアーズ」をサンプリング使用。8曲目「フィネス」はベル・ビヴ・デヴォー「ポイズン」(ブルーノはライブで度々この曲を取り上げていた)のビート構成に、テディ・ライリーが率いた3人組・ガイ風のコーラスを混ぜ込んだニュー・ジャック・スウィング曲で、9曲目「トゥー・グッド・トゥー・セイ・グッバイ」のメロディラインの一部はいかにもベイビーフェイスっぽい(それもそのはず、ソングライティングとコーラスで実際にベイビーフェイスが参加)。ほかにもフレディ・ジャクソンやらキース・スウェットやらボビー・コールドウェルやらを想起させるところがあったりして、何人かと「これって〇〇〇っぽいよね?」「いや、〇〇〇というより△△△でしょ?!」とか言いあいながら聴くのもまた楽しい作りだ。

     
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