伊藤真澄&ミト&松井洋平によるユニット・TO-MASが考える、“チームで音楽を作ること”の利点

豪華ユニット・TO-MAS“チーム制作”の利点を考える

「このチームはまだ伝家の宝刀的なものを出し切っていない」(ミト)

――チームで音楽を作ることについては、MONACAやSUPA LOVE、Elements Gardenをはじめ、最近は畑亜貴さん・田淵智也さん・黒須克彦さん・田代智一さんによるQ-MHzが活躍するなど、垣根を越えてプロフェッショナルがチームとして集まることが多くなっている気がします。

松井:僕らは集められたから違うかもしれないけど(笑)。想像もしなかったベクトルから光が当たるのは新鮮だし、尊敬するクリエイターの音楽を客観的に聴いて、自分で提案することができるし、それが受け入れられるという面白さはありますよね。

――3人だからこそ自由にできるっていうところもあるし、一歩踏み込みやすいということでしょうか。

松井:何よりもちゃんと全員色を持っている人たちであることが重要ですよね。これがなかったら、コラボレート自体に意味を感じない。真澄さんは真澄さんの音楽があって、ミトさんはミトさんの音楽があって、そこをみんなが聴いていて「ここは真澄さんの音楽だ」「ミトさんの音楽」という記名性を感じるから、独自の音楽に聴こえると思うんです。

ミト:それだけ4〜5分の間にオリジナリティーが求められているということですよね。世の中に数多と曲がありすぎて、自分たちの音楽を20秒聴いてもらえる間に、聴いている人が良いと思ってもらわないとならない時代ですから。

松井:聴くことに関して能動的ではなく、受動的になっている気はしますよね。

ミト:だから、うちらが作ったエンディング曲や劇伴も、途中から観ている視聴者に「面白いじゃない」と感じさせなきゃいけないし、昔のように雰囲気だけで流して良い時代じゃなくなったから、濃い人たちがこうやって集まるようになったんですよ。

松井:劇伴は舞台に寄り添ってこそですが、エンディング曲でありシングル表題曲なので、TO-MASの我を出さないと意味がないわけで。密度の濃い劇伴を作っている人間たちが、1曲に持てるものすべてを込めるとここまでになるのかという情報量になったと思いますよ。

ミト:「FLIP FLAP FLIP FLAP」のリリックは松井くんが普段持っている手札の中でも、情報が多くてテクニカルな印象だったんです。普段松井くんの書いているリリックが決してテクニカルじゃないとは言わないけど、より筋肉質に見えるというか。

松井:確かに「TO-MASのリリックはこういうものだ!」という記名性は欲しいとおもって、いつもとやり方は変えていますね。つかみ方とか、音の止め方とか。でも、それはメロディから導かれているところも多分にあると思います。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDは単語のブロックを置いていく感じですし、キャラソンは意味優先なので。わかりやすくいうと、TO-MASでは尖ったところではなく、丸みのあるリリックを選ぶ方にしています。

伊藤:私も、普段よりやりたいようにやれているのは、松井さんが間を丁寧に埋めてくれて、ミトさんがスクエアにパッケージングしてくれるからかも。楽に自分のできることをやれたという印象ですね。

ミト:その「楽」という感覚、すごくわかります。普通はもうちょっと自分を自重しなきゃいけないし、私たちは放っておくと奇想天外な音楽しか作らなくなるわけですから(笑)。ミュージシャンにとって一番辛いことは、自分たちの我を自分たちで削らなきゃいけないところで、その役割をお互いで補完し精査することの良さがありますよね。

――今後はTO-MASとしてどのような展開を予定しているのでしょうか。

伊藤:それはもう、ライブですよね。

ミト:あ、周りがザワッとし始めた(笑)。

伊藤:劇伴ユニットっていうぐらいだから、本当に後ろに映像を流して劇伴風のライブにしちゃうとか。

松井:あとは映像、映画にまつわることもやりたいですよね。

ミト:あと、身も蓋もないことかもしれないけど、仕事は受けたけどスケジュールの都合で100%の力を注げないというときに「あ、TO-MASいるじゃん」と思って振れるのは大きいかもしれません。実際に自分でやっている案件で松井くんの力をお借りしたものもありますし。

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――例えばですけど、1人のアーティストの作品をTO-MASが手がけたり、真澄さんがボーカリストとしてもっと前に出るということも考えていたりします?

ミト:それ面白い。

伊藤:一度、ミトさんの書いた歌詞に乗せて歌ってみたいですよね。

ミト:そう考えると、このチームはまだ伝家の宝刀的なものを出し切っていないのかもしれませんね。

伊藤:うん、まだまだ無限ですよ。もうゴールなんて全然見えない。3枚作品を作ったけど、まだほんの少しという感じです。

松井:まあ、TO-MASの音楽を聴いてくださいという自己紹介のフェーズは一通りこの3枚でできたと思いますよ。

――次にどの作品に関わるかによってもどんどん変化してくるわけですもんね。

松井:その通り。世紀末っぽいアニメが来たら大きく変わると思います。こういう作品だからTO-MASに頼もうというよりも、こんな作品をTO-MASがやったらどうなるんだろうというほうが面白いかもしれませんね。今回のアー写もまだまだ全然財宝を隠している感じがすごいでしょ(笑)。

ミト:計画を立てることが好きそうな感じですからね(笑)。

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
『FLIP FLAP FLIP FLAP』
発売:11月9日(水)
価格:

<収録内容>
1.FLIP FLAP FLIP FLAP
作詞:松井洋平 作曲:伊藤真澄 編曲:TO-MAS  TO-MAS feat. Chima
※TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌
2.OVER THE RAINBOW
作詞:松井洋平 作曲:mito 編曲:TO-MAS    TO-MAS feat. パピカ(cv.M・A・O)&ココナ(cv.高橋未奈美)
3.FLIP FLAP FLIP FLAP(Instrumental)
4.OVER THE RAINBOW(Instrumental)

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