伊藤真澄&ミト&松井洋平によるユニット・TO-MASが考える、“チームで音楽を作ること”の利点

豪華ユニット・TO-MAS“チーム制作”の利点を考える

 音楽ユニット・TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FORESTが、11月9日にシングル『FLIP FLAP FLIP FLAP』をリリースする。同ユニットは、リアルサウンドでも連載『アジテーター・トークス』を持ち、バンドのほかに個人でも『心が叫びたがってるんだ。』の劇伴などで活躍するミト(クラムボン)と、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDとして『おそ松さん』のエンディング曲「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」を手がけたり、個人では多くのアニメや声優に歌詞を提供する松井洋平、そして『劇場版 境界の彼方』シリーズや『IS(インフィニット・ストラトス)』シリーズなど数々の作品の劇伴を手がけ、自身もシンガーとして活躍する伊藤真澄の3人によるもの。彼らは2015年に結成されたばかりで、これまで『ももくり』『彼女と彼女の猫』の劇伴を手がけたほか、現在放送中のアニメ『フリップフラッパーズ』の音楽・エンディングを担当している。

 今回のインタビューでは、凄腕の音楽クリエイター3人が集結した理由や、各作品チームで音楽を作ることの利点、劇伴へ携わるユニットだからこそ生まれる音楽観について、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「ある種、異種交配みたいですよね」(伊藤)

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伊藤真澄

--TO-MASは2015年に結成されたばかりですが、まずは3人がここにきてなぜチームを組もうと思ったのか教えてください。

松井洋平(以下、松井):ある日、フィクサーである伊藤善之氏(ランティス副社長)から「伊藤真澄・クラムボンミト・松井洋平」と書かれたメールが届いたんです。ミトさんはわりと面識もありましたが、真澄さんはもちろんお名前は知っていてもお会いしたことはなくて。で、警戒しつつ1時間後にメールを見たら「3人でユニットを組むので、名前を考えてください。集合場所はここです」と書いてありました。ここで突然の結成です(笑)。

――「もう決定してます」というところから始まったんですね。

松井:他の2人も同じメールが来たと思うんですけど、会ってすぐに「名前が『TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST』になりました」とホワイトボードで発表いたしました。

ーーユニット名の由来は?

松井:ミトさんと真澄さんだから「TO-MAS」でいいかなと。で、「TO-MASの後ろに何かくっつけてください」とお願いされたので、「SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST」ーーつまり音の景色や風景が見える、蛍光色に光る森という意味の言葉を入れました。

ミト:これ、普通はもっとディスカッションとかあって良いと思うんですけど、結成することも名前もトントンともう決まって、早いのなんのって(笑)。

――で、そこから『ももくり』の劇伴に取り掛かったということでしょうか。

松井:いや、取り掛かったというか、集まった場所に『ももくり』の劇伴メニュー表がすでにあったんですよ。だからその時点で「これどうやって振り分けますか?」という実務的な話になるくらいの段階で。もちろん、真澄さんが先行して進めてくださっていたんですけど。

伊藤真澄(以下、伊藤):そうなんですよ。私のほうは先にベースを作っていて。

――展開が早すぎますね(笑)。もちろんお互いのことは以前から知っていたと思うのですが、初めて共同制作する前に、それぞれクリエイターとしてどのような印象を持っていたのでしょうか。

ミト:松井くんは……作詞家として多作すぎますよね。もうちょっと自重したほうがいいんじゃないかなとか思うくらい、ペースが早くて多い(笑)。

松井:ありがたい話です。真澄さんもミトさんも映画音楽をやっていて、『境界の彼方』(伊藤が劇伴を担当)も『心が叫びたがってるんだ。』(ミトが劇伴を担当)も観に行きましたよ。それで「劇伴すごいなー」と思っていた人がいきなりメンバーなんだから。

伊藤:ある種、異種交配みたいですよね。でも違和感は不思議なほどになくて、最初からワクワクした気持ちしかありませんでした。最初の打ち合わせもすごく楽しくて。

松井:異種も異種で、そもそも劇伴ユニットに作詞家を呼ぶって意味がわからないですよね(笑)。

ミト:それに、大前提としてやるはずの劇伴とメニュー表だけが来ていて、何をするかわかってない状態なわけですから。そもそもユニットって、ある程度のコミュニケーションから生まれる音楽があるわけで。こんな突飛な状態で組まれたのは、『進ぬ!電波少年』かどこぞのアイドルグループか僕らくらいでしょ(笑)。

松井:だから、最初に集められたときも「このメンバーで何ができるのか」というのが全然わからなくて、『ももくり』はある意味実験のようなものだったのかもしれません。

――公開実験的に互いの手の内を探り合いながら、自分の領分を見つけるという感じですか。

松井:2人の音楽はリスナーとして知ってるから、探り合いという感じではないんですよね。だからこそ、最初に僕の中で「もう遠慮しない」と決めたんです。2人ともキャリアもメンツもすごいけど、そこで遠慮したら僕がいる意味はないだろうと思って。

伊藤:この話、よく覚えてます。最初に松井さんが「俺、なんでここにいるんやろう」とひたすら笑っていて、途中から「わかった、腹括った」って急にエンジンがかかったように、メニュー表を見ながらバーっと急に「できる、できない、できない、できる……」と仕分けだして。

松井:自分にできることを把握して、次々に判断していったんです。その横でミトさんも「これは楽しそう」と言って取っていくもんだから、どんどん担当が決まったんですよね。

ミト:そうそう。だから最初にメニューを選びながら自己紹介しているようなもので、僕と真澄さんはどの音楽を手がけるか、松井くんはキャラ周りのリリックと、タイトルなど文字周りを全部担当しようと。

ーーそれで得意も不得意もわかったり。

松井:苦手な部分は取らないところで察してねと(笑)。ただ、自分のできることだけを区切っちゃうとユニットの意味はないと思ったので、1人では挑戦できないけど、これを試してみたいと思うことは、どんどんやることができました。

伊藤:私のメロディーをミトさんと松井さんがアレンジしてくださったりね。いやぁー、面白かったなー!

ミト:フィクサーである伊藤さんも、集めることまでは決めていても、どうなるかまでは見えてはいなかったはずだと思うんです。だから、ケミストリーがどう起こるのかをこちらに委ねてもらったのかなというのは、そのやりとりが始まったときに感じましたね。

――では、まだ集められた意図は聞いていないんですね。

伊藤:意図は全くなかったと思いますよ(笑)。

ミト:でも、彼のポリシーもといLantis社のやり方って、映像作品などのクライアントがあり、その仕事に組織をあげて的確に応えつつ、蓋を開けるといい意味で期待を裏切っていたり、面白いことになっているというものが多いと思うんです。だから、私たちを異種交配させるのはとっても得意分野だったのかもしれない。

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