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9thシングル『恋』インタビュー

星野源が語る“イエローミュージック”の新展開「自分が突き動かされる曲をつくりたい」

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「自分の音楽を完全に確立したい」

ーー歌詞に対するスタンスについても聞いておきたいのですが、『YELLOW DANCER』のときはわりと情緒や風景の描写に比重を置いていましたよね。その気分はいまも続いている感じでしょうか?

星野:『YELLOW DANCER』はなるべくメッセージ性のない言葉選びを心がけてたんです。でも、たとえば「Continues」だと音のイメージだけは最初から明確にあって、つくってる途中でスカパー!のリオパラリンピックのテーマソングとして使われることが決まったんですね。で、パラリンピックの選手の映像に重なって流れる曲であることを考えたとき、意味のないことを歌うことに対してちょっと距離を置いてみようという気持ちになって。応援ソングってわりかしフワっとした歌詞が多いなと思っていて、この選手たちはそういった“良さげな言葉”が通用するような世界で生きている人たちではないだろうって思って。だからとにかく言葉の奥のほうにあるもの、もう根っこの根菜みたいな言葉ですべての歌詞をつくりたくて。そんなこともあって〈命は続く/日々のゲームは続く〉という本当に根源的なことを歌った曲になっていきました。あと、僕は細野(晴臣)さんに目の前をずっと照らし続けてきてもらったっていう思いがあるから、「Continues」ではその感謝の気持ちをこの機会に歌詞に込めたくて。なので「Continues」の歌詞に関しては、『YELLOW DANCER』でのアプローチは一旦置いておく感じでしたね。

――では改めて、今回のシングルに収録されている4曲についての全曲解説をお願いしたいと思います。まずは星野さんも出演するTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌にもなっている表題曲の「恋」から始めましょう。

星野:とにかく自分がワクワクする曲、自分が突き動かされる曲をつくりたいというのが第一にあって。やっぱりダンスミュージックをつくりたいという気持ちが強くあったんですよね。ただ、たとえば「Week End」みたいな曲をここで表題曲として出すことになると、『YELLOW DANCER』と直結でつながりすぎてしまうんじゃないかとも思っていて。それは引っ張ってくれる曲というよりは、どちらかというと『YELLOW DANCER』と横並びのイメージなんですよね。それでいろいろなアプローチで作曲をしてみて、それこそディスコだったりジャンプブルースだったりソウルだったりジャズだったり、いろいろと試して実際にレコーディングもしてみたんですけど、どれも自分的にいまひとつワクワクできなくて。そういう作業を経てから、いわゆるダンスミュージックのわかりやすいフォーマットではないんだけど、単純に体を動かしたくなるような曲の方向にシフトしていきました。そのときはだいたいBPMを130ぐらいでつくっていたんですね。やっぱり120~130ぐらいがいちばん踊りやすいと思うから。でも、それでもぜんぜんワクワクしてこなくて。で、どうしたものかずっと考えてるなかで頭のなかのBPMを徐々に上げていったんです。そうしたら急にワクワクし始めて、「これだ、このテンポだ!」と思って思い描いていたBPMを実際に割り出してみたらだいたい160ぐらいだったんですよ。そうやって曲のイメージを膨らませていったのが「恋」ですね。この曲のイメージとしてふと思い浮かんだのが“モータウンコア”という言葉で(笑)。モータウンの33回転のアナログをまちがって45回転で再生しちゃった感じですね。ディスコビートやダンスビートって、ある一定のリズムを超えるとダンスミュージックに聴こえなくなるんですよ。でもダンスミュージックに聴こえなくなるんだけど、それはあくまで記号としてのダンスミュージックに聴こえなくなるだけで、これが結構楽しくてわりと良いと思えることがよくあって。まちがえてレコードを速い回転数でかけちゃって、キーがめちゃくちゃ高くなって笑っちゃうんだけど、「これ意外とかっこいい!」みたいになることってあるじゃないですか。この曲は言わばそういうことなのかなって。

――“モータウンコア”という言葉のがむしゃらさ、たまらないですね(笑)。

星野:なんかいいですよね(笑)。特に間奏の部分にその感じが出ていると思うんですけど。

――自分の印象としては、この「恋」によってイエローミュージックという星野さんの発明が完全に確立されたというか、イエローミュージックのコンセプトがより磐石なものになったという気がしていて。やっぱり星野さんは『YELLOW DANCER』を通じて圧倒的なオリジナリティを獲得したんだなって、この曲を聴いて改めて痛感させられました。

星野:うれしいですね。今回のシングルのひとつの目的として、自分の音楽を完全に確立したいというのがあって。特に前置きがなくても星野源の曲ということで成立するような、そういう力を持った曲をシングルの表題曲に持ってきたかったんです。『YELLOW DANCER』のときはまだまだ説明が必要だったから、そう言ってもらえるのは本当にうれしいです。

ーーさっきの「モータウンコア」のお話じゃないですけど、曲のコアな部分にはしっかりとダンスミュージックの熱さや肉体性みたいなものが秘められているんですけど、でも曲のフォルム自体はものすごく気品があるんですよね。それはきっと、和やアジアの情緒を取り込むことがオリエンタリズムの強調だけでなく曲をエレガントに聴かせる効果をもたらしているんですよね。で、まさにその部分こそがイエローミュージックの魅力の肝になってくるんじゃないかと思っています。

星野:ありがとうございます。オリエンタリズムを入れるとどうしてもエグくなりがちというか、ちょっと飛び道具的に聴こえてしまうこともあると思うんですよ。でもそういうものには絶対にしたくなくて、そこはやっぱり細野さんの影響をすごく受けているんですよね。細野さんのオリエンタリズムの入れ方ってすごく土臭いんだけど、特に『はらいそ』なんかは相当エレガントなアルバムだと思うんですよ。「安里屋ユンタ」のストリングスなんか、すごく品があってめちゃくちゃかっこいいですしね。その洗練された感じっていうのは意識はまったくしていなかったんですけど、ダンスクラシックのなかにもオリエンタリズムが入っていたりするじゃないですか。これは明らかに沖縄音階だよな、とか。そういうところに密かに共通項を感じたりはしていたんですよね。イエロー・マジック・オーケストラという細野さんが発明したアイデアもそりゃあディスコと相性いいはずだよなって。そこを見つけ出した細野さんの感覚、その根っこにマーティン・デニーがあったりすることも含めて、これはもう本当に寒気がするほどすごいセンスですよね。自分がつくる音楽と細野さんがつくる音楽は全然違うものだと思っていたんですけど、「もしかしたら今後道が重なることもあるかもしれない」と思いながら『恋』をつくったようなところはありますね。で、それをあくまでJ-POPのど真ん中で実現するのが気持ちいいんだろうなって。今回『恋』はドラマの主題歌になっているわけですけど、この曲のイントロが日本のドラマやゴールデンタイムの歌番組でバーンと流れるのは相当気持ちいいだろうなって思ってます。

ーーこの曲調にして「恋」というタイトルが乗っかっているのがまた痛快ですよね。

星野:自分としてもすごく過激なタイトルだと思っていて。ただ、自分のなかで合点がいったのは「恋」という言葉が日本独特のもので英語に訳せないんですよね。だから、日本特有の機微がある「恋」という言葉はイエローミュージックのタイトルにするのにぴったりだと思ってたんです。やっぱりこのタイトルがいちばん気持ちよくておもしろかったので「恋」にしました。

ーー歌詞ではやっぱり〈夫婦を超えてゆけ〉という一節の圧倒的な強さですよね。こんなラインは聴いたことがないです。

星野:あはは(笑)。〈夫婦を超えてゆけ〉というフレーズを思いついたときに「あ、もう大丈夫だ」みたいな気持ちになれました。ラブソングって、どうしてもある特定の条件を歌ったものが多いじゃないですか。片思いだったり、カップルだったり、夫婦だったり。その特定のシチュエーションや登場人物にこっちの感情のトリガーが勝手に引かれて共感するパターンがほとんどだと思うんですけど、そうじゃなくてすべての恋に当てはまるラブソングにしたいと思っていて。恋愛のスタイルというものがどんどん多様化していますよね。異性でも同性でもその他ももっといろんなスタイルがあって。今まで当たり前だと思われていたものが古くなって、塗り変わっていく時代だと思うんです。あと僕は物語や虚構の世界を愛している人たちが大好きだから、本来実在しないものに対して恋をしたり、それによってそのひとの人生が充実していたとしたら、それが一般的に呼ばれる恋や愛といったいなにがちがうんだって思っていて。それも含めてフィットする歌をつくれないかって考えたときに、「夫婦を超えてゆけ」って言葉が思いついたんです。

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