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渡辺志保の新譜キュレーション 第1回

マックスウェル、フランク・オーシャン……晩夏に聴きたい“メイル・ソウル・ミュージック”選

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 皆様、こんにちは。いくつかの台風が過ぎ去り晩夏の季節となりました。今年の東京の夏は雨量も多く、あまりカラっとした夏晴れのお天気には恵まれぬように思いますが、それぞれいかがお過ごしになられたのでしょうか。というわけで、今回は終わりゆく夏を感じながら聴きたい“メイル・ソウル・ミュージック”を5枚ご紹介したいと思います。

 まずは先日、デビュー20周年目にして初めての来日公演を成功させたマックスウェルが今年7月に発表した新作『blackSUMMERS'night』。本作に先駆けてリリースされたアルバムのタイトルが『BLACKsummer’snight』。そう、このアルバムは「Black」「Summer」「Night」という三つの章からなるトリロジー・アルバムなんです。

 『Black〜』で一度終焉を迎えた男女の愛を、再び燃え上がらせるべくアップビートの「All the Ways Love Can Feel」で幕をあける『SUMMERS’』は、全体を通してドラマティックな愛の囁きが紡がれています。「海のそばの湖で二人っきりで時間を過ごそう」と囁くシングル「Lake by the Ocean」を聴くと、今からでも遅くはないかしらん……と思わず晩夏のアバンチュールを求めたくなりそう。ちなみにマックスウェル氏のインスタグラムにはプールで美女たちとパーティーを興じるポストもあり、実世界でも歌詞の内容のようなスウィートでゴージャスな時間を過ごしているのね、といろんな意味でクラクラしてしまいそうです。

 マックスウェルといえば、片腕とも言えるプロデューサーでありギタリストでもあるホッド・デイヴィッドをはじめ、デビュー当時から同じクリエイター・チームと作品を作り続けていることでもお馴染みです。先日の来日公演のバンドメンバーも、大半は長らく活動を共にしているメンバーばかりでした(バックシンガーのラティーナ・ウェブは、あの1997年の『MTV Unplugged』にも参加しています)。ですので、マックスウェルを筆頭に、ステージ上の彼らから放たれる成熟したグルーヴは本当に迫力満点! 数千人が集まった大きな会場でもインティメイトな一体感を感じたのは、彼のソウルそのものがアツい証拠でしょうか。そうそう、ライブならではの「Lake〜」のカリビアン・テイスト溢れるアレンジもイマっぽいテイストで最高でした。ライブ前日に行われたトークショーでは「デザイナー、ドレイク、フューチャーといったラッパーたちの作品も聴いている」と教えてくれたマックスウェル。デザイナーはマックスウェルと同じブルックリン出身(そして、カニエ・ウエストのレーベルに所属しています)というだけあり、今後、もしかしたら若いヒップホップ・エッセンスとのケミストリーも期待できるかも?とときめいてしまいました。ついでに、先述した「Lake~」のリミックスを担当したメロー・Xもブルックリン出身、今年はビヨンセの新作『LEMONADE』にも大きく貢献した注目のサウンド・メイカーです。

マックスウェル「Lake by the Ocean」

 そして、2枚目にご紹介したいのはインターネット上を中心に話題をかっさらったフランク・オーシャンのセカンド・オリジナル・アルバム『blonde』。アルバム発売を前に、突如自身のウェブサイトに埋め込まれたライブ・ストリーミングの動画。殺風景な風景が映し出され、何も進展がない様子に世界中のファンはヤキモキしていたのですが、米国時間8月18日夜に突如動きが。『Endless』と題されたビジュアル・アルバムがストリーミング形式で発表されました。そして、20日には改めて彼の新作アルバム『blonde』がiTunes上で発表となりました。

 個人的な感想ですが、前作よりもアブストラクトな魅力が強いのが本作かな、と。アルバムというよりは、フランクの想いを日記のように(楽曲の構成に捉われず)散文的に綴った断片集という向きもあります。そして、思わずニヤリとしてしまうのがフランクらしいユーモア。特に、母親の留守電メッセージ「Be Yourself」から「Solo」への流れは最高! 「誰かの真似をしちゃダメよ。クスリとアルコールには手を出しちゃダメ。マリファナはあなたを面倒臭がり屋に、怠け者に、アホに、そして無関心に(Sluggish, lazy, stupid and unconcerned)してしまいます」とママからキツいメッセージを受け取ったフランクですが、続く「Solo」ではさっそく気持ちよさそうにマリファナをふかす描写が。この辺りのアンビバレンスなユーモアは、彼がもともと活動の拠点にしていたクルー、オッド・フューチャーことOFWGKTAにも通じるものがあるな、と感じました。

 そして、これぞフランクの醍醐味!といった、美しいメロディ・ラインに詩的な描写、ジェンダーを超越したセンシュアルな表現もふんだんに盛り込まれています。リスナーの感情の襞を、そして想像力を、ビンビンに刺激する作品なので、ぜひ御一聴を。愛するパートナーや大切な悪友の顔を浮かべながら聴くと、より一層楽しめるかもしれません。アルバムの最後は、フランクの実弟ライアンが11歳のときにレコーディングしたインタビュー音源で締められる、というギミックも面白く、ライアンは「卒業アルバムの写真よりもサイアク」とツイートしています。そうそう、フランクのポップアップショップでゲットできる限定バージョンには、日本からラッパーのKOHHが参加した「Nikes」が収録されている模様。アルバム・クレジットにはKOHHに加えて同じ日本人ラッパーのLOOTAの名前も。日本人ヒップホップ・アーティストとして素晴らしい快挙ではないでしょうか。

フランク・オーシャン「Nikes」

     
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