雨のパレード・福永浩平、新しい“歌のあり方”を語る「日本のポップスを更新していきたい」

雨のパレードが求める新しい“歌のあり方”

 「時代を塗り替えたい」と高らかに宣言し、3月にアルバム『New generation』でメジャーデビューを飾った雨のパレード。彼らが海外の同世代とのリンクを踏まえて提示した「バンドでありつつ、バンドサウンドじゃない」という考え方、つまりはギター、ベース、ドラムといった楽器の他に、サンプリングパッドやアナログシンセを生演奏し、新たなサウンドを生み出すという方法論は、2016年上半期の日本にジワジワと波風を立たせていった。

 そして、7月20日にリリースされるメジャー1stシングル『You』は、福永浩平の「辛い状況にある人を救える曲を書きたいとずっと思ってました」というコメント通り、雨のパレードにとってのソウルミュージックであり、ブルースである。また、アルバムで提示した新たなサウンドの先で、より広いリスナーに届けるための「いい歌」を模索した作品であるとも言えよう。数年後振り返ったときに、間違いなくターニングポイントになっているであろう名曲の誕生について、福永にじっくりと語ってもらった。(金子厚武)

「人を助けられる曲を書きたいとずっと思ってた」

ーーまずは2016年の上半期を振り返ってもらいたいと思います。3月に『New generation』でメジャーデビューをして、そのときの取材では日本におけるバンドサウンドの刷新について話していただきましたが、手応えをどのように感じていますか?

福永浩平(以下、福永):僕らなりに手応えは感じています。地方を回っても、SPD-FX(サンプリングパッド)を使ってるバンドが結構いたりして、世代的にも、時代的にも、そういう流れが来てるのかなって。まあ、少しずつ少しずつって感じですね。

ーーちなみに、海外のアーティストに関しては、上半期で誰がよかったですか?

福永:そうですね……ジャック・ガラットにはじまり、Låpsleyもかっこよかったし、今月だとThe Invisibleの新譜もすげえいいなって思いました。ジャック・ガラットは同い年なんですよ。衝撃ですよね、チェット・フェイカー並みの髭を蓄えて、あれで同い年かって(笑)。でも、ああいう界隈では珍しく、ロックの魂を持ってる人というか、ライブにグッと来るものがあったりして。

ーー演奏してる姿を初めて見たときは衝撃でした。

福永:ホントそうですよね。あのパーカッションのタイム感がすごいいいんですよ。あのタメの中にある魂がかっこいいなって。

ーーアルバムに続いて、今度はメジャー1stシングルの『You』が出るわけですが、カップリング曲にはタイアップがついているものの、表題曲がノンタイアップで、メジャーデビューしてまだ数か月の新人が、いきなりシングルを出すこと自体珍しいと思うんですね。逆に言えば、それだけ「このタイミングで出したい」という意志があったのかなって。

福永:レーベルの方々が力を入れてくれてるので、それに応えたいっていう気持ちでずっと曲は書いてるんですけど、シングルを出させてもらえることになったので、僕らとしても気合いを入れて臨んだ一曲にはなってます。

ーーそうやって書き続けてきた中から選んだ曲なんですか? それとも、初めからシングルになることを念頭に置いて作った曲なのでしょうか?

福永:基本的に、僕らの曲って毎回シングルのつもりで書いてるので、その延長線上だったのかなって。常にずっと作ってるんですけど、この曲が出来たときには、「これで行きたい」っていう気持ちになりました。

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ーー資料のコメントには「辛い状況にある人を救える曲を書きたいとずっと思ってました」とありますね。

福永:玉置浩二さんの「田園」とか、キリンジの「Drifter」とかって、精神的な困難を経験をした人が聴くとものすごくグッと来るものがあると思っていて、ああいう、人を助けられる曲を書きたいとずっと思ってたんです。今回メジャー1stシングルのタイミングなので、それを書こうと思って書きました。

ーー「田園」って、そういうテーマの曲なんでしたっけ?

福永:玉置さんがそういう経験を経て書いてるものだと僕は認識してて、サビに<生きていくんだ それでいいんだ>って歌詞があるんですけど、僕はそれが答えだと思ってるんです。でも、僕がそれを言うにはまだ若いし、説得力もないなって、書きながら思いました。

ーー「人を救える曲」を書きたいと思ったのは、何か背景があるのでしょうか?

福永:過去にすごく近しい人が精神的に辛くなってしまった時期があって、その後、僕自身もまいってしまって、学校に行ってない時期もあったり。

ーーそんな時期に、福永くん自身を救ってくれたものは何だったのでしょう?

福永:何だったんでしょうね……その時期は現実逃避ばっかりしてたかもしれないです。映画もめっちゃ見てたし、漫画もめっちゃ読んでたし、音楽もめっちゃ聴いてたし。今振り返ると、そういうものに助けてもらってたのかなって。

ーーつまり、「田園」だったり「Drifter」だったりが、そういう曲だった?

福永:でも、当時は「音楽に助けてもらってる」みたいなことはそんなに意識してなくて、振り返ってみればっていうくらいなんですけどね。ただ、大人になってそういう曲を聴くと、「すげえな、こんなの書けないな」って、感動を覚えることが多くて、僕もいつかは書いてみたいっていう気持ちがありました。

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