大野雄二×MUROが語る、ジャズからヒップホップまで“融合“の軌跡「音楽は混ざり合っていくもの」

大野雄二×DJ MURO対談

 「ルパン三世」音楽の生みの親、大野雄二が率いる新バンド・Yuji Ohno & Lupitnic Sixの1stアルバム『YEAH!! YEAH!!』が、各方面で話題を呼んでいる。新メンバーとなったのは、初代YOU & THE EXPLOSION BANDのオリジナル・メンバーである市原康(dr)とミッチー長岡(b)、そして若手鍵盤奏者の宮川純(org)。前身となるYuji Ohno & Lupitnic Fiveからは松島啓之(tp)、鈴木央紹(sax)、和泉聡志(g)が参加し、新旧ルパン・ナンバー全11曲を新たにレコーディングしている。オルガンを効かせた編成でダンサブルかつファンキーに生まれ変わった楽曲群は、かねてより大野雄二の大ファンであることを公言するMUROも太鼓判を押す仕上がりだ。リアルサウンドでは今回、大野雄二とMUROの対談を実現。新バンド結成の狙いから、おたがいの音楽性の共通点、そして世界中の音楽についてまで話は及んだ。

「スタジオミュージシャンを起用して、よりポップな方向性を目指した」(大野)

ーーLupintic FiveからLupintic Sixになって初のアルバムが完成しました。MUROさんは聞いてみてどう感じましたか?

MURO:すごくかっこいい曲ばかりで、さっそくDJでかけたいと思いました。10曲目の「愛のつづき」でフィーチャリングしているシンガーのTIGERさんは、以前にも僕の作品でコーラスを手伝ってもらったこともあって、そういう部分で大野さんと繋がりを感じることができたのも嬉しかったです。

大野:先日、TIGERと会ったときに、MUROさんの話を聞いたよ。このアルバムに限らずFujikochan’sという僕らのバンドのコーラスをやってもらっているからね、よく会うわけ。

MURO:彼女に大野さんと会うって伝えたら、今日も来たがっていました(笑)。

ーーMUROさんはこれまでも大野さんの楽曲を数多くDJで使用していますね。昨年末にリリースした70~80年代のアニメ・特撮ブレイクビーツのミックス『Super Animated Breaks & SFX』でも、「MAGNUM DANCE〜LONELY FOR THE ROAD〜」や「アンドロメダの彼方に」などを使っていました。(参考リンク:MURO×渡辺宙明が語る、ヒップホップと特撮・アニメ音楽の共通点「どの作品も実験的」

大野:昔から本当にたくさん紹介していただいて、ありがたい限りです。

ーー大野さんの今回のアルバムは、とても軽やかでダンサブルなナンバーも多かったですね。ビート感がくっきりしていて、DJプレイとも相性の良さを感じました。

大野:今回はYOU & THE EXPLOSION BANDのオリジナルメンバーである市原康がドラムを、ミッチー長岡がベースを担当していて、さらにオルガニストの宮川純が参加したんだ。以前のメンバー構成では、ウッドベースとジャズドラムがベースになっているという特徴があった。一方で、今回のふたりはYOU & THE EXPLOSION BANDでいうとオリジナルメンバーなんだけど、スタジオミュージシャンとしての経験が長くて、そこが大きなポイントだね。つまり、最近はジャズ寄りのミュージシャンを、僕のコントロールであまりディープになりすぎない感じで演奏してもらって、その面白さを追求していたんだけど、10年続けてきたから違うアプローチをしてみたくなったんだよね。スタジオでやってきたふたりをリズム隊にすることで、よりポップな方向に振ってみようと。スタジオミュージシャンは、バスドラの技術とかがジャズ畑のひととはやはり一味違って、ベースのパターンとアタックを合わせたりすることにものすごく神経を使っているんだ。そうなると、僕の譜面の書き方も変わってきて、ベースとドラムを合わせて展開するようになったりして、より立体的なリズムの面白さが出てくる。ジャズ系のひとは、良くも悪くもリズムパターンがアバウトで、それはそれで面白いんだけど、今回は一度、スタジオ寄りのサウンドに戻ってみようと思ってね。

MURO:今回、新しく撮り直した楽曲群は、新しいバンドの感じがはっきりと出ているなって、すごく感じました。7曲目の「TORNADO」なんかは昔から大好きなんですけれど、今回はビートやベースの感じが刷新されていて、またすごく良くて。ドラムブレイクもDJ的にもすごく嬉しいポイントでした。

大野:昔から市原君には、僕にとって大事な録音のほとんどをやってもらっていたんだ。だから、すごく譜面を書きやすいわけ。あいつだと、こういう感じでやってくれるなとか。ところが、今回久しぶりに彼らとやっていると予想外のことも出てきて、例えば、「LOVE SQUALL」なんかは当初、早めのボサノヴァにしようかと思っていたら、市原君がどんどんサンバ的な感じに持っていって、結局のところ、新しいサンバボッサみたいな曲になった。でも、そこにちゃんと説得力があるし、とてもポップに仕上がった。ミッチーのベースも大人な感じで対応していてね。ジャズ畑のミュージシャンは、プレイバックを聞いたときにトータルで聞いて、まあいい感じだからOKってなるけど、スタジオミュージシャンは「ここがちょっとうまく合っていない」とか、そういうところをすごく気にして聞いて、そこからさらにアレンジをするからその面白さがあるな。

MURO:僕の場合は打ち込みの現場なんですけど、やっぱりスタジオ寄りの方とライブ寄りの方では方法論が違いますね。

大野:どっちが良いとか悪いとかじゃなくて、両方とも面白い。その時々によって自分の好みも変わるしね。いまの僕は、どちらかといえば作り込んでいく面白さに寄っていて、聴いたときによりポップな感じを目指しているんだ。今回、割と有名な曲ばかりをやっているのは、このメンバーでやるとこう変わるっていうのを、改めてみんなに知って欲しかったから。新曲の「YEAH!! YEAH!!」も、このメンバーで作るとこういう音になるよって伝えたくて。あまりキメキメではない曲だけど、その分、バスドラとかはシビアに揃えていて、だからこそ軽やかな感じに仕上がっているんじゃないかな。

ーーアルバムの前半はとくに軽やかですが、中盤からはブラックミュージックらしいかっこよさも出てきますね。

MURO:5曲目「あこがれ feat. 佐々木詩織」から6曲目「ZENIGATA MARCH 2016」、そして7曲目「TORNADO 2016」の流れは、一番興奮しました。佐々木詩織さんのボーカルも本当に最高で、聞き惚れてしまいました。

大野:彼女はジャズ系の音楽学校を卒業しているからジャズ要素が強いけど、なんでもできるひと。一方で、TIGERはMISIAと同じ事務所ということもあってか、どちらかというとソウルなどの影響が強いかな。TIGERのブラックミュージック寄りのバラードは最高だね。

MURO:TIGERさんは先日、MISIAさんの野外ライブに出ていて久しぶりに生の歌声を聞いたのですが、本当に素晴らしくて、鳥肌が立ってしまいました。艶やかで色っぽい声なんですよ。

大野:強くていい声してますよね。

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