氷室京介『LAST GIGS』は“感謝のステージ”だったーーふくりゅうの総括レポート

氷室京介、『LAST GIGS』レポート

 氷室京介の名前がタイムラインやマスメディアにあふれた1週間だった。

 2014年のツアー中に、“トーンデフ”と呼ばれる耳の不調から、ライブ活動の無期限休止宣言を発表した氷室京介。最後のライブは、バンド時代と同じタイトルである『LAST GIGS』が選ばれた。

 なぜ『LAST GIGS』だったのか?

 BOØWYというバンドは、1987年12月24日に渋谷公会堂で最後の時をむかえていることをご存知だろうか。翌年1988年4月4、5日に完成したばかりの東京ドームで行われた『LAST GIGS』は、ファンへ向けたプレゼントであり、早すぎる最初で最後の再結成だったのだ。

 同じく、氷室京介の最後のライブは2014年7月19、20日に行われたツアーの追加公演となった横浜スタジアム公演がラストだったとみるのが正しいだろう。しかし、落雷による中断、リハ時のアクシデントでの骨折によって、氷室はオーディエンスへ最後のライブを約束した。4大ドームツアー『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』は、ファンに向けたプレゼントだったのだ。よって、選曲はソロ楽曲中心ではなく、35年のキャリアを総括するものとしてBOØWY曲とソロ曲から、ファンのリクエストを中心に選ばれた背景を持つ。

 2016年、大阪、名古屋、福岡、東京にて4大ドームツアーとして7回行われた最後のライブツアー『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』は、各地でセットリストが少しずつ異なっていた。

 大阪の京セラドームで行われた初日は全29曲。アンコールでBOØWYのライブ定番曲「IMAGE DOWN」〜「NO. NEW YORK」を続けて聴けたのが印象深かった。ファンとの関係性が歌われた「REVOLVER」では〈おまえがくれた何かに 震える夢 重ねれば 果てない孤独にも きっと耐えてゆける 〜 I will never say good-by,my love〉の一節が心に刺さった。そう、東京ドーム最終日のライブ後にモニターに映し出されたフレーズだ。2日目は全28曲となった。初日には披露されなかった、バンド時代にミュージックビデオも制作された隠れた名曲「ミス・ミステリー・レディ (VISUAL VISION)」が歌われている。

 ナゴヤドームではダブルアンコールで全30曲となり、ドームクラスが似合うダイナミックなナンバー「SEX&CLASH&ROCK'N'ROLL」、「IN THE NUDE~Even not in the mood~」、「VIRGIN BEAT」が追加されている。「VIRGIN BEAT」のダイナミックなアレンジ構成力は、ドームクラスの空間を演出するにふさわしいプログレッシヴなポップナンバーであったことは発見だった。

 福岡ヤフオク!ドームでは、体調不良もあったのか全25曲となった。しかし、ダブルアンコールのラストが「ANGEL 2003」から「SUMMER GAME」へとつながる最強のナンバーだったことに注目したい。日本ロック史上、鳥肌モノの最強な2曲だ。

 東京ドーム初日は全32曲となり、東京ではこの日のみ歌われたBOØWYの人気ナンバー「Marionette」や、初期の名曲「ROXY」がセットリストに加わった。アンコールラスト「SUMMER GAME」で、氷室が感極まって歌えなくなった様には涙した。氷室の心情が垣間みられた、ある種のハイライトだったのかもしれない。

 2日目は、安定感あるライブをみせながら、アンコールで「JEALOUSYを眠らせて」が追加され全30曲を披露した。オーディエンスの男女比が半々なのも氷室らしい現象だと思う。会場外で売られているグッズはほとんどがソールドアウトしていたようだ。

 最終日は、ヒムロックもオーディエンスも笑顔の絶えない最高のライブとなった。もしかしたら、氷室京介をよく知らないマスメディアにはネタにしづらかった最後のライブだったかもしれない。スペシャルなゲストもなく、演出もシンプルで、御涙頂戴の一切ない直球のステージ。そこにあったのはたくさんの感謝とリスペクトの気持ちと音楽の素晴らしさだ。本編ラストを飾った「ANGEL」は、ソロ活動の火ぶたを切った代表曲であり〈臆病な俺を見つめなよ ANGEL 今飾りを捨てるから〉のフレーズが強烈なメッセージ性として、今もリフレインする。当日は、アンコールが最多となるトリプルとなり、バンド時代のヒットチューン「B・BLUE」でラスト35曲目をむかえた。歌詞における〈やぶれた翼で もう一度翔ぶのさ こわれた心で もう一度笑ってよTO THE BOYS&GIRL〉の一節がグッとくる……。

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