>  > 鈴木竜馬氏が語るこれからの音楽シーン

unBORDE・鈴木竜馬氏が語る、音楽シーンへのメッセージ「新しいマーケットの作り方はある」

関連タグ
きゃりーぱみゅぱみゅ
J-POP
ROCK
unBORDE
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 レーベル創立5周年を迎えたunBORDEが、活発な動きを見せている。去る3月9日には所属12アーティストによるunBORDE all starsが新曲「Feel」を発表。4月10日には幕張メッセでレーベル設立5周年記念イベント『Coca-Cola presents unBORDE 5th Anniversary Fes 2016』を開催する予定だ。神聖かまってちゃんを筆頭に、個性的なアーティストが所属する同レーベルの新展開は、音楽業界内外にインパクトを与えるはずだ。

 リアルサウンドでは一昨年、unBORDEのレーベルヘッド・鈴木竜馬氏へのインタビュー記事(「まずはクラスの端っこの子たちに届けたい」)を掲載し、アーティストのマイノリティ的感性を重視する鈴木氏のレーベル運営方針は大きな反響を呼んだ。それから約1年半を経た今、所属アーティストの個性に磨きをかけつつ、よりメジャー的で華やかな施策を次々と打ち出す鈴木氏の真意はどこにあるのか。音楽業界の現況分析も含め、じっくりと話を聞いた。

「音楽業界に対してポジティブな行動をしたい」

ーー前回のインタビューでは、「エッジの立ったものを一つひとつ成功させていく」「ミリオンセールスを10万枚×10アーティストで考える」など、unBORDEのレーベル運営方針を伺いました。そして今回、レーベル設立5周年の記念企画として、unBORDE all starsによる「Feel」を収録したオムニバスアルバム『Feel + unBORDE GREATEST HITS』がリリースされます。コカ・コーラのタイアップがあり、幕張メッセでフェスもあるというプロジェクトがこれだけ大きな形で実現することで、unBORDEはまた新しいステージに進んだのではないでしょうか。

鈴木竜馬(以下、鈴木):まず、前回のインタビューで「クラス全員が聴いてくれる音楽ではなくて、教室の隅に固まっているデコボコした人たちに対してアクションを起こす」と申し上げたけれど、そのアイデンティティは5年経っても変わっていません。よくも悪くも、unBORDEに東京ドーム公演ができるアーティストはいないーーただ逆に言うと、ほとんどのアーティストが武道館など、アリーナ公演ができるところまでは来ている。5周年でそういうアーティストが揃い踏みできるような段階になったときに、すごく思ったことがあって。それは、興行やマーチャンダイジングはともかく、レコーデッドビジネスにネガティブな要素が多く、音楽業界が「しんどい」という話ばかりしている状況で、もっとポジティブな行動を起こせるんじゃないか、ということです。不良なのに、生徒会長になっちゃうヤツっているじゃないですか(笑)。そういうノリに近い感じで、「俺らがやるよ」と。

 そんなことを考えているなか、A&Rの担当者も参加した去年のミーティングで、「5周年記念で、オールスターをやるのがいいんじゃないか」という話が出てきて。要するに「We Are The World」みたいなものがやりたいと。平行して、アリーナクラスを揃えてZeppでパーティーするのもプレミアム感があっていいけれど、せっかく5周年なんだから、幕張メッセで派手にやろうぜ、ということになったんですよ。

ーーコカ・コーラとのタイアップは、あとから決まったんですね。

鈴木:そう。オールスターも幕張メッセも含めて、こんなご時世でも音楽が好きで、うちのレーベルを愛して音源を買ってくれたり、聴いてくれたりする人に対して、どう還元するか。そう考えたときに、「Feel」については所属アーティストの代表曲を入れたコンピレーションにして、14曲入り1000円という価格破壊のような感じでリリースしようと。一方で、フェスをファン感謝デーにするなら、やっぱりタダが1番じゃないですか。そこで、コカ・コーラさんとお話をしたら、「春から新しいキャンペーンがあるので、一緒にやりましょう」と言ってもらえて。巨大なナショナルクライアントが、サザンもミスチルもいないわれわれのフェスに協賛してくれると。

ーー先ほど仰ったように、これは音楽業界へのメッセージでもあると?

鈴木:やっぱり、業界に対して「楽しいことやろうぜ」「自分たちでdoするんだ」というポジティブなメッセージを発信したかった。そして、日頃から僕らの音楽を楽しんでくれている人たちに感謝を表したかった、というのが今回の企画のとっかかりですね。

160313_sr_int_1.jpeg

ーー「Feel」について、これだけ個性的なアーティストを揃えて1曲作るというのは大変なプロセスだったのでは。

鈴木:楽しいことになってましたよ(笑)。昨年11月くらいにやろうと決めたんですが、みんな“クラスの端っこ”過ぎて、アーティスト全員に強いアイデンティティがあるから、「オレがオレが」になるんじゃないかと。それもアリだけれど、全員が「この人が作るんなら」と納得してほしいと思った。そこで、まずはベテランのRIP SLYMEだろうということで、PESと飯を食いながら話したら、二つ返事でOKがもらえて。ただ、RIP SLYMEがツアー中であったということと、作曲がFUMIYAだと単純にRIP SLYMEの曲になっちゃうから、時代の申し子的な意味も含めて、トラックは中田(ヤスタカ)にお願いしようと。中田くんに至っては、酒を飲みながら少し話をして、そのあとで正式に相談しに行ったときには、「A・B・A・Bで進んで、フックがあって、最後は少し掛け合いができたらいいですよね」なんて、もうほとんど曲のイメージができていた(笑)。それから2~3週間でトラックが上がってきたんです。ただ、PESはツアーとプロモーションでまったく隙間がない。ちゃんと話ができたのはクリスマスが明けたくらいで、年明けには武道館公演も控えているなかで、2~3日で歌詞を上げてくれました。そこから少し修正を入れて、形になったのは本当に年の瀬だった。30日にPESが仮歌をいれて、大晦日にそれを各アーティストに配って、アーティストの皆には申し訳なかったけど、「正月休み返上で、三が日で覚えてくれ」と(笑)。それで、1月4日からトータル3日間でレコーディングしたんです。

ーー「We Are The World」的なお祭り感もありつつ、中田ヤスタカさんらしい音のエッジも感じられる曲ですね。

鈴木:時代に合った、元気になれる曲ができたなと。MVも作ろうぜ、となったときに、レコーディング以外に12アーティストを集めて何かをするのはどうにも難しかったから、スタジオにバッカンバッカン照明を入れて撮影しました。ただ、リスペクトはしていても「We Are The World」をそのままやっても仕方がないし、スタジオの映像をつなぐだけでなく、時代感のあるものにしたかった。レコーディング風景も活かしながら、丹修一監督が非常に丁寧に仕上げてくれて、もちろん現場を仕切ってくれたA&Rが居てのことですが、手前味噌だけれどいいビデオもできたと思います。

unBORDE all stars「Feel」official music video(コカ•コーラ | unBORDEコラボソング)

ーーPESさんと中田ヤスタカさんの打ち合わせ風景というレア映像から始まり、冒頭から「何かが始まるぞ」という感覚が伝わります。レーベルとしても、次の成長段階へと入っていくところなのではないでしょうか。

鈴木:この5年間で「エッジが立っていてバズればいいな」というところから、アリーナでライブができるくらいのところまで評価されるようになって。そういうアーティストが集まることで、別のうねりを作ることができればいいし、もっと言うと「それを作る責任を負いたい」という思いがあったんですよ。「音楽業界にとってきびしい時代で……」なんてネガティブなことを言うより、「端っこの連中でも、集まればこんなことができるんだぜ」ということを伝えなければという、大義に近い思いがあった。「ただ端っこでヘラヘラしてたわけじゃねえぞ」と。そういう意味では、コカ・コーラさんという表の大企業が僕らの活動を理解してくれて、すごく感謝しています。自分たちの進んでいる道が間違っていなかったことが確認できて、背中を押してくれる安心材料になったから。冒頭に「生徒会長」と言いましたけど、アーティストやマネジメントにも、そのあたりの自負は持ってもらうように話しています。

ーーアウトサイダー的な魅力を持ったアーティスト、レーベルが求心力のあることをやっているのが面白いですね。

鈴木:メインストリームにもそういう意気込みを持った人たちはいて、 例えば、僕がavexという会社が素晴らしいと思うのは、みんなあまりネガティブなことを言わないんですよ。若い人もプロモーターのときから気合いが入っていて、「売るんだ」「届けるんだ」という勢いでやっていて、ガチ感がある。だからこそ、ひとつのムーブメントを起こしているんだと思う。松浦勝人さんという強烈なリーダーがいてのことだと思うけれど、あの大きな会社で上から下まで行き届いているのがスゴいですね。体育会系でチャラそうだ、みたいなイメージもあるかもしれないけれど、やることをやっているんだから、実際にチャラかったとしても別にいいでしょう(笑)。ただ、音楽業界を見渡してみると、もっとゆるい感じで傷を舐め合ったりとか、ネガティブなことを言い合ったりしながら、運試しのようにヒットが出るのを待っている感じもある。今回の企画が、そんな業界のムードへの問題提起、ポジティブなベンチマークになればいいなと。

 一方で、5年間やってきたなかで、正直なところunBORDEの名前は業界内にしか浸透していなくて、ユーザーにはまだまだ行き届いていない。だからこそ、今回の企画で一般リスナーに「unBORDEってこんなに面白いレーベルなんだ」ということをあらためて伝えたいとも思いました。ヒットを積み重ねてきたなかで説得力も変わっていると思うし、ここでリローンチするというか。

ーーユーザーとのコミュニケーションのあり方も、次の段階に入って行くと。

鈴木:そうそう。僕はもともと山下達郎さん、竹内まりやさんの丁稚みたいなところから始まっていて、今でも必ず達郎さんのライブを観に行くんですよ。よく周りにも「疲れたら達郎さんのライブを観に行け」と言っているんだけど、3時間半でどれだけパワーがもらえるか。音楽の素晴らしさ、ご一緒させてもらっていることの幸せに加えて、もっと広いところで言うと、「音楽業界にいてよかったな」と思えて、ネガティブなマインドなんて吹っ飛んでしまう。そういうことを、アリーナクラスのアーティストたちとどういうふうに発信していくか。そして、音楽業界、音楽が好きな人たちにどう貢献していくか、という熱い思いもありますね。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版