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POLYSICSの本質は「なんじゃこりゃ???」にあるーー小野島大が新アルバムを考察

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 POLYSICSは昨年9月に東京で、2日間で計100曲(初日30曲、2日目70曲)をカブリなしで演奏するという前代未聞の企画ライブをやっている(100曲のセットリスト)。ぼくは所用のため見逃してしまい、あとで知り合いから「ディアンジェロのライブより凄かった」という、ワケのわからない絶賛の言葉を聞き、しまったやっぱり無理しても行くんだったと死ぬほど後悔したのだが、なんときたる3月4日には、一晩で100曲プレイするという、もはや頭の回路がショートしているとしか思えない暴挙を大阪で決行するという。

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POLYSICS

 1回のライブで100曲? 当然すべての曲が完奏できるはずもない。さわりのみの断片の楽曲が次々とメドレーで演奏される、言ってみればバンド演奏でDJしてるみたいな様相になるのだろう。しかも普通のクラブDJのように緩急強弱をつけた起伏のあるドラマを演出するというより、すべてがピークタイム、VUメーターの針がずっと右側に張り付いたようなハイテンションの演奏が最初から最後まで3時間以上にもわたって続くという、天国だか地獄だかわからないライブになるに違いない(実際東京のライブはそんな感じだったらしい)。

 アレンジとリハーサルの大変さは察するに余りあるが、なぜそんな無謀なライブをやるのか。POLYSICSだからだ。手抜きを知らない生真面目さ、思いつきを片っ端からぶち込んでみないと収まらない過剰さ、3時間超のライブを最初から最後まで全力疾走しても大丈夫な体力、どんな変態で凝ったアレンジでも難なく凄まじいスピードでこなせる演奏力、同じことを決して繰り返さない意固地さと発想の豊かさ、絶対人を飽きさせないサービス精神、なにがなんでも自分の世界に引きずり込んで楽しませてやろうとする執念、どんなときでもユーモアを忘れない明るさ、そしてなにより、こんなライブを思いついて実行に移してしまうアイディアのぶっ飛びぶり、そんなものがあるからこそ、100曲ライブなどという暴挙は可能なのだ。

 この100曲ライブにこそPOLYSICSの本質がある。そしてこのライブを成功させた勢いのままに作り上げたアルバムが、新作『What's This???』、つまり『なんじゃこりゃ???』である。19曲入りという曲数と、そのわりに短い58分というサイズの本作には、前段で述べたPOLYSICSの資質がすべて詰まっている。凄まじい速度と強度、そして情報量。目まぐるしい展開、変態なアレンジ、ややこしい変則リズム、そんなものをどう考えても正気の沙汰とは思えない常軌を逸したスピードでぶちかましてくる。

 そして本当に凄いのは、ここまでせわしなくてやかましくててんこ盛りで過剰で極端で無駄に凝っていてアバンギャルドと言っていいほど奇妙なのに、無類に人懐っこく親しみやすく、サビのメロディはシンガロングできるほどポップでキャッチーな、言ってみればポップ・ソングとしてちゃんと成立していることだ。しかもそこにはありきたりなJ-POPやJ-ROCKにありがちな共感狙いの空疎なメッセージなど何もなく、徹底して乾いたナンセンスなユーモアに彩られている。本作ではこれまでのように語呂合わせなど言葉遊びや語感の気持ち良さだけを考えて言葉をチョイスするのではなく、楽曲ごとにテーマやストーリーやシチュエーションを設定して歌詞を書いていて、その意味では通常の歌ものに近づいたとも言えるが、その本質は何も変わっていない。猫の肉球を歌った歌にメッセージなどありはしない。

     
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