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AKB、SKE、NMB、HKT、乃木坂……ドキュメンタリー映画が迫った各グループの「奥行き」

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香月孝史
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 この一年ほどの間に、AKB48系の各グループのドキュメンタリー映画が相次いで公開されてきた。被写体となったのはSKE48、NMB48、HKT48といったAKB48の姉妹グループ、そしてAKB48の公式ライバル乃木坂46の4グループである。発足から間もないNGT48と欅坂46を除けば、国内のAKB48派生グループすべてがドキュメンタリー作品を持ったことになる。もっとも、AKB48のドキュメンタリー映画だけでも過去に4作を重ねている。第1作目を監督した寒竹ゆり、そして2作目以降、回を追うたびにフォーカスするポイントや遠近感を少しずつ変えつつAKB48のトレードマークの一面を作ってきた高橋栄樹によって、AKB48系の組織の諸側面は多角的に捉えられてきた。そこに加えて、この一年でさらに4作品が積み重ねられたことになる。作品数だけを見れば、いかにも48系ドキュメンタリーは飽和しているようだ。けれども、AKB48本体がドキュメンタリー映画を発表しなかったこの期間の作品群が見せるそれぞれのスタンスの広がりは、10周年を迎えた組織が抱えるダイナミズムの総体がまだまだ豊かで巨大であることを示している。

 ちょうど1年前、2015年2月27日に公開された『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』は、それまでのAKB48ドキュメンタリーとは捉えようとするスパンが異なっていた。公開時点で6年を超える歴史を重ねていたSKE48について、監督を務めた石原真はその歴史全体を追い、素人然とした初期メンバーたちが鍛えられてプロフェッショナルになっていくまでの足跡をたどった。直近の一年間程度にフォーカスされることの多いAKB48のドキュメンタリーに対して、この作品は見据える期間が圧倒的に長い。それゆえ、インタビューで初期のSKE48について語る顔ぶれの中には少なからずグループを卒業している者もいたし、映画の構成として公開時点のSKE48主力メンバーとそうした元メンバーとが同等の比重で扱われていた。AKB48グループで長きにわたって活躍する人物と、ある時点で48グループの外へと視野を移して別の道へと分かれていった人物とを、その人生において同じ重さで扱うこと。石原が手がけたこのドキュメンタリーにはそうした意図が忍ばされているように見えた。

 48グループから離れた「別の道」を尊重するその作りは、姉妹グループの中で最もAKB48系の内部競争に意識的なグループであるSKE48を扱う作品で実現されるからこそ効果的になる。初期からグループ内で鍛え上げられることで48グループ屈指の存在感を示すようになった松井玲奈は、同時に48グループの外へのビジョンを獲得しながらキャリアを重ね、この映画公開の年にこれ以上なく準備万端の状態で卒業を発表した。この映画でももちろん重要人物となる松井の歩みは、メンバーそれぞれのライフコースが同等に尊いことを示していたSKE48ドキュメンタリーと相まって趣き深い。

 その松井玲奈が、短いシーンながら強い存在感をもって、ある種の超越者として立ち現れるのが7月10日公開『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』だ。一時乃木坂46にも兼任メンバーとして加入していた松井はこの作品内で乃木坂46について、「グループとして自分たちの方向性がまだ見出だせていない」という表現を用いる。急いで補足すれば、これは必ずしも批判的な意図ではない。乃木坂46というグループの性質を「何か、透明な感じ」と語る中で、あくまでニュートラルな視点として分析した言葉だった。AKB48グループが仕掛け続ける大掛かりなストーリーにコミットしてきた松井の視点は、乃木坂46というグループの性格とある意味で非常に対照的だ。乃木坂46のMVも多く手がけてきた丸山健志が監督する『悲しみの忘れ方』が基調とするのは、AKB48を代表とする今日のアイドルシーンに対する、乃木坂46メンバーの心理的な距離感である。それはナレーションの言葉がメンバーたちの母親という、「一般人」の視点でつづった文言によって構成される点に象徴的だ。我が娘にオーディションを勧めたことについて「とりかえしのつかないことをしてしまった」という表現を選んだメンバーの母の言葉にもあらわれるように、この映画の視点はアイドルシーンにではなく、そこに乗りきれない人々の視点に寄り添っている。とはいえ、この映画が公開された2015年はまさに乃木坂46がアイドルシーンの中心に自らを位置づけた年である。それは、松井の言う「グループとしての方向性」を確固たるものにしていったということでもあるが、乃木坂46というブランドはそれでもなお、競争的なアイドルシーンに素直に順応するのとは違う仕方で独自色を築いている。そうした色合いの違いも、グループ単独のドキュメンタリーが作られることであらわになる。

     
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