“艶ロック”新世代!? LACCO TOWER、THE ORAL CIGARETTESなど歌謡としての強さを誇るバンドたち

 今年の年始は意外な人(ライブに行きそうにない人、ロック聴いてたんだ?的な人)とも、THE YELLOW MONKEY再集結の話題を挨拶がわりにすることが多かった。その存在感の大きさはもちろん、大衆的な人気まで獲得し得た一つの理由には、妖艶で美しい、もっと言えば“歌謡的な”歌の世界がある。彼らを筆頭に、90年代には自らイエモンの影響を公言し、“艶ロック”と称していた椿屋四重奏、日本的なメロディが自然体で溢れるTHE BACK HORN、さらに言うならメタルもラウドロックも歌謡曲も貪欲に飲み込んだオリジナリティで衝撃的な登場を果たした9mm Parabellum Bulletもその要素を持っている。では、テン年代も後半の今、ライブキッズが低年齢化し、「かわいい」「かっこいい」バンドが大半な中、艶っぽいバンドはいないのか? というと、案外、今年ブレイクスルーを果たしそうなバンドに、その要素を見ることができる。

 まずは、2月3日にメジャー1stシングル『薄紅(うすべに)』をリリースするLACCO TOWER。10数年のインディーズ活動を経て、昨年6月、満を持してメジャーデビューした彼らの動機は、それが復活を遂げたロックレーベルの名門<TRIAD>からのオファーだったことは大きいはず。言わずもがな、THE YELLOW MONKEYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTらの数々の名盤を生み出したレーベルだ。デビューアルバム『非幸福論』には、冒頭から昭和の戦隊アニメの主題歌に似合いそうなマイナーメロとメタリックなギターリフ、X JAPANを彷彿させるハードなアンサンブルの表題曲を聴くことができるし、<瓦落多が手招いた 未来図は夢か幻か さあさあ手の鳴る方へ 丸い マゼンタ 僕を笑う>といった日本的叙情に怪奇の匂いを忍ばせた「葡萄(ぶどう)」では演歌的とも言えるメロディが際立つ。結成以来、ずっと漢字のタイトルで通してきたこだわりや、禁断の愛だからこそ切なさや哀しみが一層際立つ、松川ケイスケ(Vo)の歌詞世界も日本の歌謡が持っていた陰の美しさを際立たせる。しかも、若い世代に向けたアンセミックなナンバーですら、<僕ら不幸せ だからこそ知る思い>(「非幸福論」)という、リアルなパンチラインを書ききれる強さが個性になっている。

 そのLACCO TOWER初のメジャーからのシングル「薄紅」は、すでにオンエアされている『ドラゴンボール超』(フジテレビ系TVアニメ)エンディング主題歌という、ちょっと意外な抜擢。曲調もピアノ始まりでメジャーキー、アッパーな8ビートという新機軸だ。サビも松川のハスキーな声質でなければ、メロディックパンクに聴こえるほどストレートなのだが、別れの季節を叙情的に歌う言葉が重なりあった先にある、2サビの切なさは日本人のDNAが自然と反応するメロディ。何より“桜”という言葉を使わずに優しいようで切なく、不安定な春という季節を肌で感じさせるLACCO TOWERならではの音楽性が、メジャーキーで逆照射された印象だ。世代を問わずフックの多いバンドだけに、テレビ出演にも期待したいところ。出会い頭のインパクトは相当、大きいはずだ。

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