「大器晩成」が圧倒的な強さを見せた2015年 ハロプロ楽曲大賞を振り返る
ハロプロを愛する者たちの間で毎年恒例のファンイベントとなっているのが『ハロプロ楽曲大賞』である。インターネット上で投票を募り、1年間に発表された楽曲に順位を付けてみんなで楽しく盛り上がろうという趣旨の催しである。2015年末も「第14回ハロプロ楽曲大賞'15」と銘打って開催され、3557人が投票参加して大きな盛り上がりを見せた。総順位などの結果は公式サイトをご覧ください。
前回の「第13回ハロプロ楽曲大賞'14」では、結果発表後の年明け1月に、リアルサウンド編集部からの依頼でイベント主催者でもある私ピロスエが順位を読み解く分析記事を寄稿した。今回はその2015年版である。昨年度の記事はこちらをご覧ください。
2014年のハロプロを完全解析! ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」の結果から考察する
それでは早速、2015年の順位を振り返っていこう。以下の論考は、下記URLのランキングと併せてお読みください。
http://www.esrp2.jp/hpma/2015/comment/result/song.html
楽曲部門1位:アンジュルム「大器晩成」
2015年の第1位に輝いた楽曲は、アンジュルム「大器晩成」だった。正月ハロコンでライブ披露され2月にシングルリリースされたこの曲は、当初からファンの評価がとても高く、「この曲が今年の楽曲大賞なのでは」という声も少なくなかった。言ってみれば2015年は、「大器晩成」を超える曲が登場するかどうかを1年かけて待ち続け、結局「大器晩成」が一番だったというオチがついた1年でもあった。
なぜこの曲が支持を集めたのか。2014年秋の3期メンバー加入、スマイレージからアンジュルムへの改名を経てのグループ再スタート、その第1弾シングルというタイミングだったことがまず挙げられる。不安も少なくなかった中での勢いある楽曲の登場はインパクト大だった。
また、この曲の作詞作曲を手がけたのは中島卓偉。2015年という年は、ハロプロ楽曲のほぼすべての制作を担当していたつんく♂が喉の病気のこともあってプロデューサーを勇退し、楽曲の制作体制が複数作家制へ移行した1年でもあった。そんな大きなターニングポイントを象徴する役割も担ったのが、この曲だったのではないだろうか。
さらに言えば、2012年から続いた6人体制で着実にスキル経験値を蓄え、そこに3期メンバーのフレッシュな魅力も上乗せされたというメンバー構成も、楽曲の魅力に間違いなく貢献しているだろう。ウェブ番組『MUSIC+』で楽曲制作メイキングが放送されたことも効果があったはずだ。数々の要因が組み合わさった結果、2位にダブルスコア以上の点差をつけた4995.5pts、1841票という圧倒的な支持を集める、2015年を代表するハロプロ楽曲が誕生したのであった。
楽曲部門2~3位:こぶしファクトリー「念には念」、カントリー・ガールズ「愛おしくってごめんね」
2位、3位はこぶしファクトリー「念には念」、カントリー・ガールズ「愛おしくってごめんね」と続く。まず「念には念」は、2015年結成の新グループであるこぶしの初オリジナル曲。The WhoやT.REXといった偉大なロックグループの名曲テイストを感じさせる力強く骨太なサウンドによって、グループの第一歩を華々しく飾った。Aメロの<ねんねんねんね…>や、井上玲音の歌唱パート<忘れんなアンブレラ>など、キャッチーなフレーズも多い。
カントリー・ガールズ「愛おしくってごめんね」も、2014年末のハロプロカウントダウンライブにて初披露されるやたちまち話題となった初オリジナル曲。古き良きアメリカのオールディーズサウンドを現代アイドルポップスに落とし込むというカンガルの方向性が如実に現れた楽曲であり、ここ数年のハロプロ楽曲で見られがちだったクールかつスキル至上主義的な指向とはまた別の路線を提示したという意味でも非常に新鮮だった。
そしてそんな楽曲の方向性と期せずしてリンクしたのが、島村嬉唄というメンバーの存在だった。曲中セリフパートをはにかみながら担当する彼女の可憐さは、同年6月の突然の脱退劇によって消失し、かつ永遠のものとなった。その後はライブでのセットリストから外され長らく封印状態にあったこの曲だが、2015年末のハロプロカウントダウンライブにおいて、梁川奈々美と船木結という新メンバー二人の加入を機に再び歌われることとなった。
1位の「大器晩成」も再デビュー曲と考えれば、トップ3の3曲はいずれもグループの初めてを象徴する楽曲ということになる。過去のハロプログループの例を振り返っても、デビュー曲というのは制作陣の力が入るのか、良曲率が高くファン人気も高い曲がそろっている。納得のベスト3だろう。