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香月孝史が『アンダーライブ at 日本武道館』の意義を読み解く

乃木坂46のアンダーライブが成し遂げたことーー武道館公演が示した「歴史」と「進化」を読む

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香月孝史
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 12月17、18日の乃木坂46『アンダーライブ at 日本武道館』公演を迎えるにあたって感じられたのは、このアンダーライブがもはや、選抜メンバーへの“対抗”のような段階から抜け出て、ある独立した色を持ちながら乃木坂46の一部として存在するイベントになっているということだ。この一年、「アンダー」の概念をとらえ直す、もしくは選抜・アンダーという区切りを問い返すような、乃木坂46メンバーの発言が各所で見られた。これは広くメディア中心に活躍する選抜常連メンバーに対して、アンダーのライブ活動がある種のカウンター的な機能を持っていた昨年から、また一歩グループのあり方が先へ進んだことを示している。単にカウンターであるならば、そこにはまだ上下のような見立てが色濃く残ることになる。しかし、少なくともグループ内において、ライブパートの充実を担うアンダーと選抜とが、同等の重さを持ちそれぞれのベクトルで発信力を高めた今年、より屈託なくアンダーライブ特有の密度の濃いライブを楽しめるようになっている。

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 もちろんそれは、期待通りにアンダーライブを育ててきたアンダーメンバーの足跡あってこそだ。17、18日の武道館ライブ前半を飾った、MCタイムを排して連続で楽曲を披露するノンストップライブは、4月の『アンダーライブ 3rdシーズン』での企画を継承したものである。『3rdシーズン』の際に初登場したノンストップライブは、前年からのライブの経験値を積み重ねつつアンダーメンバーが育んできたプライドを見せるものだった。そこから半年以上を経て、武道館であらためて披露されたノンストップライブは、そうしたアンダーとしての誇りを強調するような段階から一歩進化し、「乃木坂46アンダーライブ」がごく当たり前に備えているライブの幅広さのひとつになっていた。また、13枚目シングルのアンダーメンバー曲「嫉妬の権利」から始まり、シングル表題曲以外の楽曲を連ねていくセットリストには、10月の『アンダーライブ 4thシーズン』を踏まえた趣きもある。それらによって一年のアンダーライブを振り返りながらも、ただの企画の反復にならず、武道館という大会場で余裕を見せながらパフォーマンスできていた。すでに今年、『4thシーズンまで』の実績を受けて、武道館アンダーライブへの期待は事前から大きくなっていた。その“期待通りに”“いつも通りの”ライブを、武道館という場所でごく自然に達成できたこと、それがアンダーが着実に積み重ねてきた底力を証明している。

 ライブ中盤、すでに『3rdシーズン』で選抜とはまた違う完成形を作り上げていた「命は美しい」が力強く披露されたあと、アンダーの軌跡を振り返る武道館アンダーライブは、さらに時間を巻き戻す。用意されていたのは、ちょうど一年前、有明コロシアムの『アンダーライブ 2ndシーズン Final!~Merry X'mas “イヴ”Show 2014~』で企画された、「全員センター」だった。アンダーライブ参加者全員が一曲ずつセンターポジションを務める同企画は昨年、それまで中心に立ったことのないメンバーがセンターに座る鮮烈さと同時に、アンダーライブを経験した彼女たちの自信を示すひとつの形だった。そして今年、武道館で披露した「全員センター」は、やはりノンストップライブ同様、単なる過去の反復ではなかった。全メンバーが主役を務める輝かしさはもちろんのこと、2年間のアンダーライブを経てきたメンバーによって、楽曲自体の解釈をリニューアルして見せるような瞬間が随所に見られた。特に今回、大所帯の中でのセンターというよりは、各楽曲のセンター担当メンバーがソロパートを持つような構成が目立ったことで、乃木坂46のレパートリーに予想外の色が吹き込まれた。たとえばグループ内でも際立つ歌唱力、ダンススキルを持つ川村真洋は、グループ全体で楽しまれるイメージの強い「そんなバカな...」のセンターを務めたが、ソロパートを含め彼女個人のフィルターを通すことで、楽曲の世界観がより具体的に前に押し出される形になった。あるいは中田花奈がセンターで披露する「何度目の青空か?」も、楽曲に新たな解釈を吹き込んだ好例だろう。生田絵梨花センター、もしくは当時アンダーの井上小百合センターで定番の形を作ってきた同曲が、中田のソロから始まったこの日のパフォーマンスでは、彼女独特のアイドル観を体現する見え方のものになっていた。結成4年を迎えた一期生メンバーが、今なお新鮮なカラーを発明できているのも、この2年のアンダーライブの成果ゆえだろう。

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 同様に2期生メンバーも「全員センター」で、それまでにない姿を見せる。オリジナルでは生駒里奈がソロで歌う「水玉模様」は、この企画内で北野日奈子に継承された。特に10月の『4thシーズン』から目立つ局面が多くなり、力強さを増した北野がパフォーマンスするそれは、生駒によって担われてきたこの曲に、思いがけない可能性を見せた。また、年長メンバーのユニット曲「立ち直り中」のセンターを担当した寺田蘭世も、同曲のイメージを一新させる面白みを見せる。昨年の有明コロシアムでは、寺田はまだ研究生という立場だった。一年前の「全員センター」は寺田をはじめとする研究生メンバーにも同等にセンターが用意されていたが、それは彼女たちもまた正規メンバー同様にアンダーライブを支えてきたことの証しでもあった。それから一年、正規メンバーとしてアンダーライブを盛り立てた彼女たちの存在感は幾重にも増している。アンダーライブの軌跡をたどることはまた、2期生メンバーの立場の変遷を確認することでもある。単純な人選の目新しさに終わらず、その先の可能性を示した今年の「全員センター」は、前年とは奥行きがまったく異なっていた。ノンストップライブや「全員センター」に象徴されるのは、これまでの歴史をたどりながらもその繰り返しに終わるのではなく、2年間の軌跡を昇華して次の段階に進化した乃木坂46アンダーライブというブランドの成熟だった。単なる回顧や反復でないからこそ、18日のアンコールで過去のアンダーライブ経験メンバーが登場して共にパフォーマンスするという演出も、歴史を再確認する意義深いものになっていた。

     
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