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金子厚武のプレイヤー分析

きのこ帝国の音楽的変化と一貫性 あーちゃんのピアノとギターサウンドから紐解く

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 きのこ帝国がメジャーから初めてのフルアルバム『猫とアレルギー』を発表した。野心的にポップで開かれた地平を目指しつつ、一方では純粋な音楽ファンとしての面影を残す、バンドの個性がしっかりと詰まった素晴らしいアルバムだと思う。ここではこれまでオルタナなギターサウンドでバンドのイメージを決定付け、現在では端正なピアノでポップな側面にも大きな貢献を果たしているあーちゃんのプレイを解析する。

 まずはこれまでの歩みを簡単に振り返ってみよう。インディーズでのデビュー作『渦になる』や、セカンド『eureka』でのバンドのイメージは、一言で言えば「サイケデリック」であった。佐藤千亜妃がもともと好きだったというマイブラ直系のシューゲイズサウンドを鳴らすレディオ・デプト、90年代のUSオルタナを代表するバンドのひとつであるダイナソーJr.、さらには日本のインディーシーンで活動する夜の夢といったバンドからの影響を受けたあーちゃんのギターは、ノイジーかつ空間的な広がりを感じさせるのが一番の特徴。ライブではソニック・ユースのサーストン・ムーアのごとくドラム・スティックでギターをこすってノイズを生み出すなど、その存在はバンドのオルタナな側面の象徴だった。

 しかし、喪失感の中から生まれたという『ロンググッドバイ』をターニングポイントに、シンプルなアレンジでこれまで以上に佐藤の歌と美しいメロディーを全面に押し出した転機作『東京』を発表。続くサードアルバムにしてインディーズ時代のラスト作『フェイクワールドワンダーランド』でも「歌とメロディーが軸」という方向性を推し進め、R&B調の「クロノスタシス」など多彩なアレンジを披露した。そして、今年4月に発表したメジャーデビューシングル『桜が咲く前に』では、あーちゃんによるピアノがフィーチャーされ、より開かれた方向性の第一歩が示されている。

 『猫とアレルギー』においても、まず印象的なのは佐藤の表情豊かなボーカリゼーションと、ポップなソングライティングのクオリティの高さ。歌詞の内容も「『東京』以降」といった感じで直接的な描写が増え、「全曲ラブソング」と呼んでも差し支えないほどだ。そんな中、サウンド面での一番の変化は、あーちゃんのピアノが多くの曲でフィーチャーされているということ。先日ミュージックビデオが公開されたタイトルトラック「猫とアレルギー」で初めてキーボードを演奏する姿が公開されているが、この曲にはストリングスも加わり、「桜が咲く前に」以上のスタンダード感を感じさせる。

きのこ帝国 – 猫とアレルギー

 

      

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