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姫乃たまのユニット作『僕とジョルジュ』が放つ異彩 底なし沼のような“怪作”を読み解く

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 姫乃たまは自分自身を「地下アイドル」と称する。しかし、彼女と佐藤優介、金子麻友美によるユニット「僕とジョルジュ」による同名アルバム『僕とジョルジュ』は、地下アイドルというイメージからも遠く離れた、暗く深い地下壕のような作品だ。深読みをすればするほど溺れ死ぬ、底なし沼のような怪作。そしらぬふりをした方が身のためかもしれない。

 姫乃たまは、エロ方面にも造詣の深いライターとしても活躍し、9月22日には初の単著『潜行 -地下アイドルの人に言えない生活』を発売したアイドル。私が彼女と初めて話したのは『週刊金曜日』のイベント(参考:『アイドル論者が語る“握手会と現場”の最前線「人の心は金で買えないけど、ヲタの心は“握り”で買える」』)に一緒に登壇した日だったが、あのとき「私のライヴにいらっしゃいましたよね……?」と瞬時に私の素性を見抜いた彼女の聡明な目は忘れられない。

 佐藤優介は、カメラ=万年筆のメンバーにして、スカートやカーネーションなどのサポート・メンバーとしても活躍するミュージシャン。アイドル関連では、うどん兄弟の『ラストアルバムvol.1』をカメラ=万年筆としてサウンド・プロデュースしたことが記憶に新しい。金子麻友美は、Nゼロなどアイドルへの楽曲提供も行っているシンガーソングライター。彼女のアルバム『はじまるマジカル』は8月5日に発売され、『僕とジョルジュ』は8月19日に発売。関連作品が8月に2枚連続でリリースされたことになる。私が初めて金子麻友美の名を知ったのはマーライオンのサポートだったが、そのマーライオンと姫乃たまは旧友でもある。因果は静かに渦巻いている。

 そして、『僕とジョルジュ』も金子麻友美の『はじまるマジカル』も、MY BEST!レーベルからリリースされている。ぱいぱいでか美の2014年のアルバム『レッツドリーム小学校』もこのレーベルからリリースされており、人脈的には『僕とジョルジュ』と重なっている。そんな一筋縄ではいかないMY BEST!レーベルの中でも、『僕とジョルジュ』はひときわ異彩を放っているアルバムだ。

 私はアナログレコードを聴いて育った世代なので、短いアルバムが好きだ。が、『僕とジョルジュ』は21曲も収録されているのに、34分に満たない。極端すぎて不穏な香りがする。ゲスト・ミュージシャンには、スカートの澤部渡、NATURE DANGER GANGのシマダボーイ、タコ/ガセネタの山崎春美などの名前があるが、各曲ごとの詳細なクレジットはない。ヒントがないのだ。聴きはじめると同時に、もう退路が断たれたも同然である。

 『僕とジョルジュ』には、「恋のすゝめ」というリード・ナンバーがある。アルバムの2曲目だ。姫乃たまとシマダボーイが恋人役(?)で出演しているMVも制作されている。

僕とジョルジュ/恋のすゝめ

 「恋のすゝめ」は、言うのも憚られるほどストレートに後期ピチカート・ファイヴだ。「電話のベル」「レコードの針」といった歌詞の単語も「いかにも」である。しかし、『僕とジョルジュ』というアルバム全体としては、野宮真貴が加入してからのピチカート・ファイヴよりも、まだ田島貴男が在籍していた1990年の傑作『月面軟着陸』を連想させられる。そこに共通しているのは、少しドロッとしたほどの密度だ。

      

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