VIDEOTAPEMUSICが提示する、時空を超えたサンプリング術 「検索不可能な誰かの思い出にロマンを感じる」

VIDEOTAPEMUSIC、2ndアルバムインタビュー

 古今東西の様々なビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作するという独自のスタイルで活動するVIDEOTAPEMUSICが、セカンドアルバム『世界各国の夜』を<カクバリズム>から発表する。近年はかねてより交流の深いceroをはじめ、Gotchやサニーデイ・サービスのミュージックビデオを手掛けるなど、映像作家としての活躍も目覚ましいが、彼なりのエキゾチックなダンスミュージックを追求したという新作において、アーティストとしての評価もこれまで以上に高まることはまず間違いない。スタイルの確立からミュージックビデオ、そして新作についてまで、幅広く語ってもらった。(金子厚武)

「2015年の自分の立ち位置から、マーティン・デニーと同じ目線でいろんなものを見るような、そういう大きな意味で「エキゾ」って言ってやってます」

――まずは今の個性的なスタイルがどのように確立されて行ったのかを聞かせてください。美大に通っていたときに、家にあったデジタルビデオカメラで録音を始めたのがスタートだったそうですが、もともと音楽ではなく映像を志して美大に進学したのですか?

VIDEOTAPEMUSIC:映画とか現代美術とか、映像表現全般に興味があって、とりあえず美大に入ったっていう感じでした。なので、映像の機材は一通り持ってたんですけど、入学してから強く興味を持ったのが音楽だったりビデオアートだったりしたので、そういうスタイルになった感じです。

――「映画監督を目指していた」とかではない?

VIDEOTAPEMUSIC:もうちょっと漠然としてましたね。高校のときに友達のデジタルビデオカメラを借りて、遊びで自主映画を撮ったり、あとはいろんなミュージックビデオを見るのも好きだったんです。ただ、映画の学校とかに行っちゃうと幅が狭まっちゃうんで、とりあえずは美大に行って、入ってから今後どうするかを考えようみたいな感じでした。

――ちなみに、当時ミュージックビデオは何で見ることが多かったですか。

VIDEOTAPEMUSIC:それこそ、VHSですよね(笑)。YouTubeはないんで、『relax』の「スパイク・ジョーンズ特集」とかを見て、「ビースティ・ボーイズのこのPVがすごい」みたいなので、静止画からイメージを膨らませてました。それをブートのVHSが売ってるようなお店とかで血眼になって探して、「サボタージュ」のPVを見つけたときは「これか!」みたいな(笑)。

――当初の音楽性は初期のボアダムスやベックのようなジャンクでローファイなものだったそうですが、それがファーストの『7泊8日』で聴くことのできるよりラウンジ~リゾート寄りの作風になって行ったのは、どんな過程があったのでしょう。

VIDEOTAPEMUSIC:徐々に変わっていった感じではあるんですけど、初期のような音楽性で、映像も使ってってなると、当時はアカデミックなサウンドアート系の人だと思われがちだったんです。でも僕としてはそうじゃないと思ってたので、もうちょっとチャラくしたいと思って(笑)。それでリゾートっぽい感じ、エキゾチックな要素が出てきて、そういう音楽性がそもそもVHSでやることと相性がいいなって気づいたので、そこにフォーカスを絞っていった感じですね。もともと古い映画を見たときに自分が惹かれるシーンが、南国の島のパーティーみたいなのだったり、見たことないような民族の風習だったり、そういうものだったので。

――近年の<カクバリズム>には「エキゾチカ」を掲げるアーティストがたくさんいて、細野晴臣さんという先人がありつつ、SAKEROCKは自分たちなりのエキゾを鳴らそうとしたし、ceroは「自分たちの外側にあるもの」をエキゾと捉えました。VIDEOさんは「エキゾチカ」をどのように捉えていますか。

VIDEOTAPEMUSIC:ceroとは昔から仲がよかったので、「エキゾチカ」の解釈に関しては、同じ感覚を共有しているような気がします。僕もマーティン・デニーに代表される南国っぽいものをエキゾと捉えるというよりは、マーティン・デニーが南国に抱いていたような感情を、アメリカの青春映画の中の10代の日常に見たり、同じ日本でも戦前戦中の歌謡曲とかにエキゾを感じるので、2015年の自分の立ち位置から、マーティン・デニーと同じ目線でいろんなものを見るような、そういう大きな意味で「エキゾ」って言ってやってます。自分が音楽を作る手法、趣味、普段から考えてること、そういったことが一番相性よく馴染むやり方を探って行ったら、今のスタイルになって行ったっていう感じだと思いますね。

「その人自身の思い出みたいなものとコミュニケーションしながら作るっていうのは、すごく楽しいですね」

――VIDEOさんはいろんなアーティストのミュージックビデオを手掛けられていますが、VIDEOTAPEMUSICとしての活動とは区分けがあるのか、それとも同一線上にあるものなのかというと、いかがですか?

VIDEOTAPEMUSIC:そこはどういう意味合いで頼まれるかにもよりますね。「VIDEOTAPEMUSICにやってもらいたい」ということなのか、普通に人付き合いの中で頼まれてるのかっていう。ceroとはお互いコミュニケーションがとりやすいので、わりとVIDEOTAPEMUSICとは切り離して、ceroの今やりたいことをちゃんと形にするっていうスタンスですけど、例えば、サニーデイ・サービスの「夏は行ってしまった」っていう、VHSをバリバリ使ったやつとかは、「VIDEOTAPEMUSICにやってほしい」ということだったと思うし、そういう使い分けはありますね。

――Gotchさんの「Wonderland / 不思議の国」とかは、「VIDEOTAPEMUSICにやってほしい」っていうタイプでしょうね。

VIDEOTAPEMUSIC:あれはいきなり依頼が来て少しびっくりしました。あだち麗三郎さんの「ベルリンブルー」のPVを見て、気になってくれたみたいなんですけど。

――曲調自体ベックに対するオマージュが色濃かったりするので、VIDEOTAPEMUSICの音楽性ともリンクがありますよね。

VIDEOTAPEMUSIC:最初は「何で僕に依頼が来たんだろう?」って思ったんですけど、曲を聴いたら腑に落ちたというか、「こういう曲で僕に頼むっていうことは、こういうことをやってほしいってことだろうな」って、自分なりに汲み取って、90年代っぽい感じを意識して作りました。

――まさに、90年代のベックを彷彿とさせますよね。他に「VIDEOTAPEMUSICらしさ」を意識的に出したミュージックビデオを挙げるとすると、どの作品が印象深いですか?

VIDEOTAPEMUSIC:さっきも言ったサニーデイの「夏は行ってしまった」は、曽我部さんから昔のサニーデイのVHSをいっぱいもらって、「これでやってくれ」って言われたんですけど、ただそれを編集しても面白くないから、ビデオデッキのネジを外して開けて、VHSを再生しながら手でヘッドの部分をスクラッチして故意にノイズをつくるみたいなことをやってます。実験音楽的なものも好きだったんで、最初は自分のライブでそういうこともしてたんですけど、あまりにエクスペリメンタルなので封印してたら、「あ、ここで使えた」っていう(笑)。あとはHi,how are you?の「お盆」も、ボーカルの原田くんの実家にあったホームビデオをもらって作ったんですけど、その人自身の思い出みたいなものとコミュニケーションしながら作るっていうのは、すごく楽しいですね。

――VIDEOさん、結婚式用のビデオとかよく頼まれません?

VIDEOTAPEMUSIC:昔普通に仕事としてやってました(笑)。知り合いのもたまにやりますけど、仕事として、いわゆる記録物というか、結婚式もそうだし、幼稚園の遠足とか、子供のお遊戯会とか、そういうビデオを作る仕事をしてたんです。

――過去にやってきたいろんなことが、ちゃんと今につながってるんですね(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる