>  >  > 市川哲史がUDO MUSIC FESTIVALを振り返る

市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第30回

おやじロックの真髄「UDO MUSIC FESTIVAL」の愉楽と蹉跌ーー市川哲史が幻のフェスを振り返る

関連タグ
POP
ROCK
フェス
ライブ
市川哲史
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 今年の夏も日本全国津々浦々、野外屋内問わず巨大規模から極小サイズまで、イベンターやらプロダクションやらアーティストやら町おこしやら地元放送局やら音専誌やら有象無象の主催で、いろんな<<夏フェス>が開催された。

 大型ロックフェスが、日本の夏を代表するスマートでポップなエンタテインメント(苦笑)として定着し、既に久しい。1997年から『FUJI ROCK FESTIVAL』、2000年からは『SUMMER SONIC』に『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』――フジロック初回の<水責め>地獄が懐かしい。

 お目当て以外の、「たまたまついでに観た」未知のアーティストに興味を抱く契機になるという、夏フェスが観客にとってメディア機能を果たしているのは事実だ。なので既存のメディアに頼らず、ライブで己れの存在をアピールするアーティストが増えたのも自明の理だろう。

 とはいえそれが具体的な音楽セールス増に繋がったわけではないから、やはり単にいちエンタメ・コンテンツとして自己完結してるだけなのだ。

 にしても何だよ《肉ロックフェス》って。

 さて50代の私がフェスを観戦するのは、さすがにいろいろ面倒臭いし煩わしい。そんなときふと、9年前にただ一度開催された「大人の夏フェス」を想い出す。当時のキャッチコピーは<この夏、ウッドストックの興奮が蘇る!>。

 すごいぞ世界最大級の大風呂敷。知る人ぞ知る2006年7月22・23日@御殿場・富士スピードウェイ――伝説の《UDO MUSIC FESTIVAL》ことウドーちゃん祭りだ。

 御出演アーティスト様をざっと挙げるだけでも、サンタナ、ジェフ・ベック、ドゥービー・ブラザーズ、プリテンダーズ、KISS、ポール・ロジャース、バディ・ガイ、スティーヴ・ヴァイ、ヌーノ・ベッテンコート、アリス・イン・チェインズ、セバスチャン・バック、ベン・フォールズ、セバスチャン・バック、ポーキュパイン・トゥリーなど!

 かなり節操はないラインナップだけども、とりあえずどうだまいったか。

 一般の若者や音楽メディアが、同日開催のポルノグラフィティ@横浜スタジアムや《オーガスタ・キャンプ》@すぐ近所の富士急ハイランドに群れ集うのを尻目に、一般も評論家もメディアも好き者のおっさんたちが集結したのである。

 特にドゥービーズ→ベック→サンタナで締める初日は、これぞ<おやじロック>の真髄だろう。

 彼らを知った青春時代、頼れるものはレコードと『ML』のみ。中身が薄い提灯雑誌なのはわかっていても、他に情報源が無いのだからしょうがない。ビデオも無ければ、貴重な来日公演に行くにはまだ学童だったり、ド田舎に住んでたり――そんな過去の悔恨と怨念を、小金を持ち時間に融通が利くおっさんになった今、時空を超えて快楽に昇華させて何が悪い? そんな自らの思春期を貪ったあげくのオプティミズムが、会場を能天気に支配していたのであった。

 ちなみに私は腐れ縁の元某誌編集長Mの新雑誌、その名も『おやじロック』創刊号仕事で出動していた。宿泊場所をキープしておらず、我々は濃霧の御殿場山中をあてどもなく車で彷徨った記憶がある。

 他にも、<クラプトンが使用するギターと同じものを全種蒐集中♡>という常軌を逸した開業医を、広島県福山にわざわざ訪ねたりとか、なかなか愉しい雑誌だった。結構売れたのに「広告収入に期待が持てない」との理由から創刊号だけで即廃刊にした◯◯◯◯は、つくづくつまらない会社であることよ。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版