市川哲史が明かす『LUNATIC FEST.』の隠された物語 <V系万博>2日間を“呑み”の視点で振り返る

 思えばV系には、ドーム公演を満員にしようがアルバムを軽くミリオン売ろうが、同業者からも世間からも不当に過小評価されてきた歴史がある。当該バンドマンたちの「ネタ化必至の伝説」大量製造マシーンぶりも、拍車をかけたのだけども。しかし2015年初夏の、広義的な<V系>の範疇に属する(と思われる)バンドたちの集会により、その「鬼っ子」V系が人力ロックの醍醐味をずっと遺してきたのが明らかになったわけだ。

 うん、なんかいい気分である。

 正直な話、今回のフェス開催を最初に聞いたときはあまり必然性を感じられなかった私だ。自らの25周年に合わせてV系を総括するというアイディア自体は悪くないが、なんか後ろ向きだもの。

 ところが文字通りに手厚い<主宰者LUNA SEAの献身>が、一バンドの25周年フェスをV系万博へと昇華させた。開催前には率先してプロモーションに勤しみ、本番では出演者に礼を尽くして労を惜しまない。LUNA SEAメンバーの多彩な客演が話題になったが、これぞ気遣いとおもてなしの心の結晶だろう。

 LUNA SEA×2とLUNACY×2とX JAPANとDIR EN GREYとDEAD ENDとKA.F.KAでステージに立ち、the telephonesとcoldrainとFear,and Loathing in Las Vegasと[Alexandros]を観客から見える位置で観戦したほぼ<杉原祭り>状態のSUGIZOを、「死なないスかね?」と<一生涯好青年>TAKUROが心配していたが、これがSUGIZOなりの献身なのだから仕方ないではないか。

 《LUNATIC FESTA.》はいいフェスだった。本当に。

 それでも、これだけは言っておかなければなるまい。YOSHIKIだ。

 この男は後輩の25周年記念フェスで、新曲のコーラスを客に唄わせレコーディングしたばかりか、MCで「皆本当にどうもありがとう」となぜか泣いていた。そういえばGLAY20周年@東京ドーム公演の時もサプライズ出演したものの、MCで「皆本当にどうもありがとう」となぜか泣いていた。

 おまえじゃねぇよ。ぎゃははは。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる