『葡萄』ロングセラー化に見る、サザンの驚異的なメインストリーム力

参考:2015年4月20日~2015年4月26日のCDアルバム週間ランキング(2015年5月4日付)

 筆者のように過去に音楽雑誌で編集者/ライターとして長年仕事をしてきた人間にとって、今週のオリコン・アルバムチャートはなかなか鮮烈なものがあります。ジャニーズWESTのセカンドアルバムを頂点に、トップ10の残りは主に10代〜20代から支持されているゲーム/アニメ/ボカロ出身のアーティストがズラリと並んでいて、例外はサザンオールスターズと福山雅治のアミューズ両大ベテランのみ。で、そのサザンも福山雅治も紙メディアの露出は極端に限られているアーティスト。こうなってくると「日本の音楽シーンと既存の音楽メディアの関係性ってなんなんでしょうね?」と、誰にというわけでもないですが問いかけてみたくもなります。ここで言う「音楽メディア」というのは紙メディアのことだけではありません。ネットの音楽メディアも、近年は新しい音楽メディアとしての役割を果たしていると言われるようになった音楽フェスも、チャートの実態を反映しているとは言えないのが現実。もはや「何がメインストリームか?」という定義そのものが成り立たず、既存の芸能界/Jポップへのオルタナティブ感に満ちている最近のチャートも、音楽メディアも、フェスも、それぞれが個別なカルチャーとして存在しているのが現在の日本の音楽シーンと言えるでしょう。

 そんな中、初週で30万枚以上のセールスをあげて初登場1位、その後も2位、2位ときて今週も3位と、4週にわたってベスト3に踏みとどまり続けているサザンオールスターズ『葡萄』のロングセラー化は、瀕死にある「日本音楽界のメインストリーム」の威厳を保ったかたちとなりました。本稿はGW中に書いているわけですが、連休前からしばしば1位に返り咲き、リリースから1ヶ月以上を経た5月3日付けの最新デイリーチャートでもなんとトップに君臨しています。「レジャーのお供にサザン」という日本のスタンダードは不変といったところですね。

 これは余談ですが、最近小学生の息子が家の中で盛んに「アロエ」のあのサビ(《だから勝負! 勝負! 勝負出ろ! 勝負に行こう!》)を歌っていて、個人的にもサザンのメインストリーム力を思い知らされているところ。驚くのは、自宅や車の中で家族が一緒の時に、自分はまったく『葡萄』も、その収録曲「アロエ」も流したことがないということ(1人の時には聴いてますが)。つまり、テレビの歌番組やCMで数回耳にしただけで、そのフレーズとリズムが頭にこびりついて思わず歌ってしまっているわけです。「そんな身近なサンプル1人の話をされても」と思うかもしれないですが、同じ年頃の子供を持つ複数の親に訊いてみて、そんな「小学生アロエ化」が「小学生レリゴー化」「小学生ゲラゲラポー化」「小学生ドラゲナイ化」に続いて至るところで起きているという裏も取っています。先日サザンが『葡萄』のプロモーションでミュージックステーションに出演した際、桑田佳祐は冗談まじりに「SEKAI NO OWARI、きゃりーぱみゅぱみゅ、AKB、潰します」と言ってましたが、冗談でもなんでもなく、還暦に突入したメンバーもいるバンドの最新曲がセカオワやきゃりーの曲のライバルとして機能しているのです。

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