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矢野利裕のジャニーズ批評

SMAP✕椎名林檎✕tofubeatsが照らし出す、国民的グループの「過去」と「未来」

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矢野利裕
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 SMAPの「華麗なる逆襲」が、作詞作曲に椎名林檎を迎えてリリースされた。TOKIO「雨傘」や同じくSMAP「真夏の脱獄者」など、椎名林檎のジャニーズ仕事は少しまえから増えており、いずれもが良い仕事である。本作も、SMAPと相性抜群の良曲だ(フィッツジェラルドのパロディのようなパロディでないような曲名が謎ではあるが)。

 とは言え、本作で特筆すべきは、椎名林檎自身も仕事をともにしている村田陽一のアレンジである。4つ打ちのようなビートにストリングスとキーボードが入るフィリーソウル的なアレンジを中心にしつつ、テンションの高いホーンセクションが入る中盤には、ビッグバンド・ジャズの要素が入ってくる。間奏になって、背後で鳴っていたキーボードがラテンになっていくという遊び心も楽しい。そしてラストには、完全にリズムがジャズになって華やかに終わる。アレンジャーとプレイヤーの気合いが、よく伝わってくる。

 このような曲はやはり、SMAPによく似合う。4つ打ちのようなビートと書いたが、この明らかにダンス・ミュージック以降のビートに生楽器のウワモノというバランスは、もはやSMAPのオハコとでも言うべきものである。「俺たちに明日はある」「しようよ」などといった90年代前半のSMAPの名曲たちは、生音から打ち込みになっていく移行期に生まれている。「華麗なる逆襲」について、「リズム+管楽器+弦楽器の三位一体加減が相当うまくいったと自負しております。40代のアイドルSMAPの大人の魅力をアシスト出来たと思います」(村田のブログ記事「椎名林檎さん書き下ろし楽曲のSMAP2015年第1弾「華麗なる逆襲」」より)と語る村田は、その意味で、SMAPの魅力というか本質のようなものをよく掴んでいる。SMAPへの提供曲としては、文句のない仕事だろう。

 ところで、SMAPがCDデビューする直前の90年代に生まれて、現在ノリにノッている音楽クリエイターがいる。通常版で「華麗なる逆襲」のリミックスを手がけたtofubeatsである。SMAPが生音から打ち込みの移行期に活動したとすれば、物心ついたときにはSMAPが国民的アイドルであっただろうtofubeatsにとって、自分の身のまわりにある音楽は、とっくに打ち込みのサウンドだっただろう。tofubeatsは、そういう環境のなかで音楽を作り始めた世代に属する。必然、自分が作る音楽も宅録で作りこまれ、サンプルをチョップしたりピッチを極端に変えたりなど、新しい手法をどんどん試していくことになる。SMAPの音楽が、センス的にも方法論的にも90年代に台頭したクラブカルチャーと歩みをともにしていたのは間違いないが、tofubeatsもまた、そんな90年代クラブカルチャーのセンスと方法論を引き継いでいる。その意味でtofubeatsの起用は、コンセプチュアルで、良い人選である。細かくチョップされ、ピッチも自在に操作された「華麗なる逆襲」のtofubeatsのリミックスは、SMAPの本来的な魅力をそのままに、サウンド自体はアップデートされている。「華麗なる逆襲」という曲は、SMAPの過去と未来に開かれているのだ。

     
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