>  >  > 武藤彩未が築こうとする独自のJ-POP

宗像明将が読み解く、ソロアイドルの現在地

武藤彩未の最新作『I-POP』はJ-POPの枠を超えるか? 各曲の音楽的進化を分析

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 武藤彩未のセカンド・アルバム『I-POP』を聴いてまず息を飲んだのは、武藤彩未のヴォーカル・コントロールの巧みさだ。そして、アルバムとしての構成はもちろんのこと、マスタリングまで凝っているスタッフ・ワークにも感心した。良い楽曲を集めたうえで約33分という簡潔さ、しかし内容は濃い。

 生バンドの演奏で80年代の感触を残しながらも現在のサウンドへと変化したメジャー・デビュー・アルバム『永遠と瞬間』から、さらに歩を進めているのが『I-POP』だ。

 冒頭の「パラレルワールド」はエレクトロなサウンドで幕を開けるが、軽い衝撃を受けたのは武藤彩未のヴォーカルの軽やかさだ。nishi-kenによるサウンドの厚さや激しさとコントラストを描くかのように、武藤彩未の歌声には浮遊感がある。そして本間昭光とnishi-kenの共作によるメロディーは、サビで早くもアンセム感を漂わせる。Agsaiによる歌詞で「複雑な時代だからこそ今 / 私は歌う」とまで歌うのだからなおさらだ。そして「変わり始める」という歌詞が肉声のみで歌われて「パラレルワールド」が終わった瞬間、間髪を入れずに「Daydreamin'」のイントロが始まる。『I-POP』が「アルバム」という形式を強く意識して制作されていることが明確に伝わってくる部分だ。

 篤志の編曲による「Daydreamin'」は、フラメンコ・ギターも響くスペイン風味のサウンドが新鮮だ。本間昭光作曲による緊張感のあるメロディーを、武藤彩未は熱く歌いあげているが、しかし熱くなりすぎない。こうした絶妙さは『I-POP』というアルバムを象徴する要素だ。

 同じく篤志が編曲した「Doki Doki」は、一転してバンドっぽい感触のサウンドになり、川嶋可能によるメロディーはほどよく歌謡曲の香りを漂わせる。フックのきいたサビのメロディーも印象的だ。

 「ミラクリエイション」はゲームのオープニングのようなサウンドで始まる。本間昭光とnishi-kenの共作によるメロディーはミュージカル・ソングや映画の主題歌を連想させ、武藤彩未は楽曲における主演女優のように細部まで歌声で表現してみせる。2014年12月27日のワンマンライヴで、武藤彩未は『I-POP』というアルバム・タイトルの由来を「愛されるように『I』」「I am popの『I』」「アイデンティティの『I』」「アイドルだから『I』」と語った。独自のJ-POPをひそかに築こうとするかのような意気込みが『I-POP』から感じられるのは、実はこの「ミラクリエイション」のような楽曲なのだ。現在のJ-POPのメインストリームの楽曲とは異なる曲調やサウンドだが上質であり、優雅さもある。

     
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