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冬将軍が6thアルバム『HELLO WORLD』をレビュー

SCANDALがこだわり抜く“ロックバンドの基本”とは? セルフプロデュース色強めた新作を分析

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 今や日本のガールズバンドを代表する存在になった、SCANDAL。6枚目のアルバムとなる『HELLO WORLD』は、13曲中、10曲が彼女たち自身の作曲によるものであり、セルフプロデュース色を強め、彼女たちの現在、そしてこれからのバンドとしての姿を提示したアルバムである。SCANDALといえば、HARUNA(Vo.&Gt.)のちょっと斜に構えた“ロック姉貴”らしさを軸に、アン・ルイス「六本木心中」や山口百恵「ロックンロール・ウィドウ」のカバーが物語るような、昭和歌謡ロックに通ずる印象的な節回しの楽曲が特徴的だ。普遍的でもあるロックの持つ不良性を時代を超えて感じられる、今となっては少なくなったバンドでもある。今作では、そこにメンバーの個性が色濃く出た楽曲が加わることで、バラエティに富んだガールズ・ロックの真髄を見せてくれた。

低音や音圧よりも音抜けを重視したサウンドメイク

SCANDAL 「Image」

 オープニングを飾る、疾走感とサビの爽快感が共存した、MAMI(Gt.&Vo.)作詞作曲の先行シングル「Image」。SCANDAL節全快の「Runners high」。亀田誠治プロデュースの哀愁ロック「Deperture」。HARUNAのハスキーで色気のある感情的な声と、TOMOMI(Ba.&Vo.)のイコライザーでいじったような対象的な声の織りなすツインボーカルは、彼女たちの大きな武器だ。そこに、作曲者自らメインボーカルを取る楽曲が彩りを与える。力まない歌とリズムが良い味を醸し出す、MAMIの「本を読む」、畳み掛けるリズム隊が気持ちよいTOMOMIの「缶ビール」。年ごろの女の子が書いたとは思えない素っ気ないタイトルではあるが、飾ることのない内面を表現した楽曲でもある。缶ビールを「明日休みだし もしも飲めるなら開けてしまいたい」とお酒の飲めない女の子の視点で描いたかと思えば、次曲で「自動販売機のココアを2人で分けあう」と歌うのも、メンバーの語る「誰かの生活の一部になるような曲を歌いたい」という等身大の姿。打ち込みサウンドと浮遊感のある歌、そこに絡みつくようなベースラインが印象的なRINA(Dr.&Vo.)の「おやすみ」では、迫り来るシューゲイザー・ギターアプローチに驚かされるが、このギターはRINA本人によるものだ。

 なにより、今作を象徴するのはサウンド面の変化だ。SCANDALはガレージロックをベースとしたガッツリとしたギターサウンドを全面に出していたが、今作では全体的にギターの歪みを抑え、すっきりとした音像になった。変わって前に出るのはリズム隊である。「Image」の図太くタイトにキマるスネアドラム一発でこのアルバムのすべてを持っていかれる感すらある。ベースは高・低音を強めたドンシャリ気味のサウンドとなり、ゴリゴリとした荒々しさとしなやかさ、指弾きによる細かいニュアンスも伝わってくる。SCANDALがシンプルでストレートながらも独特のノリを感じるのは、鋭いキレと歌心のあるグルーヴを持ち合わせた躍動感溢れるリズム隊によるところが大きいが、それがより色濃く強調された。バスドラムよりもスネア、低音や音圧よりも音抜けを重視したサウンドメイクは、2本のギターの棲み分けがより明確になったことも相俟って、洗練されたアンサンブルの印象を受ける。今までのような派手さは薄れたものの、大人びた拡がりのあるサウンドにバンドとしての進化を感じられるだろう。そして、サウンドの拡がりを象徴する今作のエピローグにふさわしく、生粋のバンドプロデュースに関しては意外とも思える人選、小室哲哉プロデュースの「Place of life」で幕を閉じる。

セルフプロデュース色を強めた理由は?

 過去のガールズバンドというシーンを紐解いてみれば、「アイドル的な売り方」をされることに本人たちが違和感を覚えることや、外部者の作曲に抵抗を示した事例が多くある。しかし、彼女たちはアイドル的なことも外部提供曲でも率先して楽しんでやっている印象を受ける。

「全部自分たちでプロデュースしたい欲はなくて、そんなことより良い曲、そのときやるべき音楽をずっとバンドしてるべき」

 初回盤に収められているインタビューでRINAはそう語る。彼女たちの音楽、バンドに対する生真面目な姿勢だ。表現者としては、自身の楽曲よりも他人の曲を自分のものにするほうが難しい。中田ヤスタカ、和田唱(TRICERATOPS)をはじめとした、ジャンルの異なるアーティストによる多くの楽曲提供を自分たちのものにしてきた。その経験が自信に繋がり、SCANDALというバンドを築いてきたともいえるだろう。今回彼女たちが、セルフプロデュース色を強めたのは、“アーティストとしての自我の芽生え”ではなく、可能性と幅を拡げること、確固たる自分たちの現在を提示したことであり、ごく自然の流れであると思える。

     
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