嵐『THE DIGITALIAN』が示した新潮流 日本のポップスは“メロディ信仰”から“リズム改革”へ

 念のために言っておくと、世界の最新モードに伴走しているから良いとか、時代遅れだから悪いとか、そういうことではない。問うているのは、そのグループがその音楽性であることの必然性と説得力である。例えば、KAT-TUNにはもっと先鋭的なダンス・ミュージックを追求して欲しいが、一方で、SMAPには90年代的なディスコ解釈を洗練させて欲しい。新しい音楽の潮流を最大公約数の歌謡曲に翻訳してきた嵐においては、最新モードであることとポップであることのバランスが重要だ。

 日本のポップスはめくるめく変化を遂げていると言えるが、どうもまだまだメロディ信仰が残っていて、リズムが保守的になる印象がある。しかし、嵐の新作がこれだけビートとヴォーカルに手を入れているという事実は、日本の歌謡曲が、いよいよメロディ重視から脱却する時期に来ているということなのかもしれない。日本のポップスはリズム改革を推し進めるべし。

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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