赤い公園・佐藤千明が語る、"ポップな存在”への道「曲も人間も開けてきている」

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 9月に2ndアルバム『猛烈リトミック』を発表した赤い公園が、10月24日の福岡Drum Be-1公演を皮切りに、『赤い公園マンマンツアー2014~お風呂にする?ご飯にする?それとも、リトミックにする?~』をスタートさせた。亀田誠治や蔦谷好位置といったプロデューサー陣を迎え、プロフェッショナルな姿勢で楽曲と向き合ったアルバム制作を経て、さらにバンドとして研ぎ澄まされた姿を見せるツアーとなることは間違いないだろう。今回はボーカルの佐藤千明を迎え、ツアーの展望と共に、「ポップな存在になりたい」という彼女たちの理念について、改めて話を訊いた。

「プロフェッショナルな部分を、ちゃんとツアーでも形にしたいと思っています」

――10月24日からツアーが始まっていますが、これまでのライブと比較して、セカンドアルバムの制作を経た今、どのようなライブになっているのでしょうか?

佐藤千明(以下、佐藤):今まで私たちのライブが評価されてたのって、曲の鋭さというよりは、アグレッシブなパフォーマンスとか、飛び道具的な音の使い方、あとは感情が爆発しているところとかだったんですね。「野蛮」って言われることも多かったり(笑)。それはそれで嬉しかったし、自分たちでも感情が先行した表現の仕方がありだと思ってやってたんですけど、『猛烈リトミック』に関しては、感情が先行した演奏とか歌は一切なくて、プロフェッショナルな意識を持って、「私の音はどこでどんな風に鳴ればいいんだろう」っていうことをみんなが考えて、そこを突き詰めることができたアルバムなんです。なので、そのプロフェッショナルな部分を、ちゃんとツアーでも形にしたいと思っています。

――ご自身の「歌」ということに関しては、どんな面においてプロフェッショナルな部分を見せたいですか?

佐藤:『猛烈リトミック』に対して、すごく言っていただけたのが、「歌詞がとてもいい」ってことだったんですね。でも、今までのライブで歌詞が届いてるって思ったことはあんまりなくて、それは楽器との音量のバランスもあるし、自分の歌い方とか発音もすごく関係してると思うんですけど、今回はちゃんと歌詞を届けられたらいいなっていうのが、具体的な目標としてはあります。より発音がはっきり聴こえるマイクに変えてみたり、今いろいろチャレンジしてます。

――歌い方の部分に関しては、どんなチャレンジをしていますか?

佐藤:例えば、「NOW ON AIR」とかって、CDだと普段の歌い方と結構変えてるんですけど、喉を使う歌い方なので、ライブだとあんまり飛ばないというか、開いた声に聴こえない歌い方なんです。なので、ライブ用に声をいろいろ考えてるんですけど、でもCDとライブで歌い方が全然違っちゃうのも嫌なので、口の形はレコーディングと同じにしつつ、お腹を意識したり、いろいろ試行錯誤して、今はCDとライブでそんなに離れてない歌い方ができてきたと思います。

――他のメンバーはそれぞれどんなことを意識しているんでしょう?

佐藤:赤い公園の曲って、静と動がすごく激しいんですけど、それを今までライブで表現し切れてなかったと思うんですね。それはエフェクターとか、細かい部分の話なんですけど、ベースが一番その調節が難しくて、そこを今すごく意識して、リハで詰めてます。中音(※)のバランスを考えて、音量を今までの半分くらいに落としてやったりとか、それは今までだったら考えられないことなので、ツアーに向けての意気込みを感じます。
※ステージ上で演奏者に聞こえる音。外音は観客者に聞こえる音

――佐藤さん、FUGAZIってわかりますか?

佐藤:フガジ? わかんないです。麩菓子なら知ってます(笑)。

――(笑)。FUGAZIっていうアメリカの伝説的なハードコアバンドが来日したときにPAをやった人の話によると、彼らは中音めちゃめちゃ小っちゃくて、その代わり、外音はものすごく音を出していると聞きました。

佐藤:中音で絞れたら、外いくらでも出せますよね? 今アンプの音でバーンって出してる状態だから、そりゃあ静と動出ないだろって話で、今PAさんとより連携を強化して、すごくいい感じになってきてます。FUGAZIの話もしてみます(笑)。

――赤い公園はアンサンブルがすごい緻密なので、それをプロフェッショナルに再現するっていう意味でも、中音を絞って、ちゃんと細かい部分も聴こえるようにした方がいいんだと思います。

佐藤:そうですね。今中音が絞れてきて、「ここでドラムがこんなことやってるんだ」とか、「ここのギターはこうなんだ」っていうのがすごいよくわかるようになって、それをわかった上で歌うと、リズムとかも全然違って聴こえて、気持ちいいんですよね。特に、歌川(ドラム)は前からリズムをすごく意識してて、彼女はライブが終わるごとに、「今日リズムどうだった?」って聞いてくるんです。「自分はぶれない」っていう精神性が、ドラムにもすごく出ていて、いつも後ろを振り返ると安心します。

――佐藤さんも以前自分の課題としてリズムを挙げてましたよね?

佐藤:はい、私はとにかくリズムが苦手で、リズムの取り方がワンパターンなんです。KREVAさんと「TOKYO HARBOR」をご一緒したときに、KREVAさんはいろんなのり方をされるんですよね。そのとき津野が、「いろんなのり方ができれば、歌の聴こえ方も変わってくると思う」って言ってて、私、後でのるとか前でのるとかもわかってなかったんですけど、最近は意識するようにしてます。あと赤い公園のリズム隊って、ドラムがちょっと走ってて、ベースがちょっともたってるんですね。津野も私もそれが気持ちよくて好きなんですけど、でも曲によっては個性を消して、かっちり合わせることができればより強いから、そこも意識するようになりました。

――津野さんに関してはどうですか?

佐藤:自分では言わないんですけど、人一倍練習してると思うんです。「ギター鬼じゃん」っていう、難しい曲があって、「これ絶対できない」ってリハで言ってても、次のリハまでに絶対できるようにしてくるんですよ。しかも、わざと「できるようになった」って軽く言って、「できるようになってる! 私たちも頑張らないと」って、促してるんですよね。「頑張れ」とは言わずに、背中で語る系。今までもそういう人だったけど、その部分が最近より濃く出てて、いいリーダーだなあって思います(笑)。

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