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円堂都司昭が映画『ボーカロイドオペラ 葵上 with 文楽人形』を分析

ボカロオペラ『葵上』映画版に見る、ボーカロイドと文楽人形の共通性

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(C)2014 opera-aoi

 下北沢にある短編映画専門ミニシアター「トリウッド」で、『ボーカロイドオペラ 葵上 with 文楽人形』を見た(上映期間は9月10~15日。9月20~26日の追加上映も決定)。

 これは、ボーカロイドの歌う音楽で文楽人形が演じた舞台を撮影した映画。台本・音楽・演出・舞台美術・音響効果は田廻弘志、映画の監督・編集・背景ビジュアルは加納真が務めている。同作は、今年7月にイギリスで開催された日本文化のイベント「ハイパージャパン」で公開され、好評を得たという。国内では、今回が初上映となる。300年以上の歴史を持ち黒頭巾の人々が手で動かす文楽人形と、ゼロ年代生まれのプログラミングされた“歌声の人形”が共演したその物語は、特異な空気に満ちていて面白かった。

 日本の伝統芸能が現代的で洋風な要素をとり入れたり、逆に現代のエンタテインメントが伝統的で和風な要素をとりこむなどして新たなスタイルを模索することは、しばしば行われてきた。

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(C)2014 opera-aoi

 1960年代にエレキ・ギターのブームを牽引する一方、「津軽じょんがら節」など民謡を多数カヴァーした寺内タケシ。歌謡曲的なビッグバンドに三味線や和太鼓、拍子木などを加えた音楽を使い、時代ものの人形劇に黒子の人間も登場させて文楽っぽい演出をした『新八犬伝』(1973~75年にNHKで放送)。近松門左衛門による文楽の名作と宇崎竜童の音楽を組み合わせたロック版『曽根崎心中』(1980年初演)。セリフや音楽などを現代的にして先代の市川猿之助が生み出した「スーパー歌舞伎」の演目群(1986年から。加藤和彦が音楽を担当したこともある)。などなど。

 今春には、ロック・バンドの編成に津軽三味線、尺八、箏、和太鼓を加えた和楽器バンドが、ボカロ曲のカヴァー集『ボカロ三昧』を発表している。『ボーカロイドオペラ 葵上 with 文楽人形』は、そのような伝統と現代のハイブリッドにおける最新の達成だ。

 その物語は、なかなか複雑な成り立ち方をしている。日本のラヴ・ストーリーの古典『源氏物語』には、光源氏の妻・葵に彼の元恋人・六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)が嫉妬し、生霊となって取り憑く話が出てくる。そのエピソードを能の舞台へと脚色した「葵上」も、古典になっている。同作をもとにした『ボーカロイドオペラ 葵上』(以下『葵上』)は、舞台を現代に移し、さらに物語をアレンジしている。

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