坂本慎太郎はなぜ“人類滅亡後の音楽”を構想したか「全体主義的なものに対する抵抗がある」

「さすがに、メッセージ的なものが何もない音楽って、今どうなんだろうって」

ーー今回はバンドとしてちゃんと練られたものとは言っても、ライヴを前提としては考えてないってことですか。

坂本:そうですね。ただあるとしたら、さっき言ったみたいな、ホテルのラウンジとかビアガーデンとか。お客さんがいて、いい感じの音楽が流れていて、音楽をみんなで共有はしてるんですけど、それぞれ全然別の方向を向いて喋ってたり、あるいは音楽を聴いてのったり踊ったりしてる人もいて、という。いろんな人がバラバラに共存してるところに、バンドの音楽がいい感じで流れている、というイメージなんです。そんな感じでライヴができるなら、ライヴもアリなんですけど(笑)、絶対無理なんで(笑)。

ーー人類滅亡後に流れている常磐ハワイアンセンターのハコバンの音楽、というテーマなんですが、音楽は言ってみれば楽園的な--幻想上の楽園かもしれないけど--のどかなものだけど、歌詞は逆にディストピア的なダークなものになってますね。

坂本:人類が滅亡したあとに、かって人類が目指そうとした楽園を作ろうとした人たちの、意志だけがあるって妄想した時に、なんでかわかんないけど、自然とこうなりましたけどね。ストーリーを作ってそれに沿って作詞したんじゃなくて。

ーーそこには文明批判的なニュアンスはあるんですか。

坂本:文明批判というよりは、今現在生きてて感じているような…さっき言ったような、巨大なロック・コンサートの宗教的なノリもそうですけど、なんかこう、全体主義的なものに対する抵抗とか…それが一番大きいですね。あとは、宗教的な陶酔とか熱狂とか、そういうものに対する恐怖もありますし。

ーーそういう宗教的な同化指向とか全体主義的な同調圧力とか、日々暮らしていて感じることが多いわけですか。

坂本:そうですね。

ーー坂本さんはもともと、そういう皮膚感覚というか、社会的な事象に対しての自分の感じ方や考え方を作品に反映させていきたいと考えるほうなんですか。

坂本:いや、考えない方です。

ーーですよね。

坂本:政治的な発言もしないですし、社会的なメッセージみたいなものも--もちろん普通に生きているんで、ありますけど--それを音楽で表現しようとは思わない。思わないんですけど、今回は作品をSF的な設定にしたことによって歌詞を--深読みできないぐらいストレートだと思うんですけど--ストレートに言っちゃったほうが、単純に面白い、というのと、あと…意外と生々しくないっていうのを発見して。僕個人の叫びに聞こえないっていうか。歌詞を単純化することによって、CMのコピーとか標語みたいな感じになる気がしたんですよね。それは強烈だし、なんか面白いなと。今まで自分がとってきたスタンスと矛盾するとは思わなかったし。

ーーなるほど。

坂本:あと、さすがに、メッセージ的なものが何もない音楽って、今どうなんだろうって、ちょっと思いますね。

ーーあ、思いますか。

坂本:はい。歌詞で言うとか言わないとかじゃなくて。なんでしょうねえ…ただ楽しければいいとか、おしゃれだからいいとか…そういうのを今作ろうとは思わないですね。
後編【坂本慎太郎が追い求める“一線を越えた”音楽とは?】に続く)

(取材・文=小野島 大/撮影=金子山)

■リリース情報
『ナマで踊ろう』
発売:5月28日
価格:初回限定盤 ¥2,600+税(紙ジャケ仕様/2枚組/BONUS CD付)
   通常盤 ¥2,600+税(2枚組/BONUS CD付)

<収録内容>
01. 未来の子守唄 (Future Lullaby)
02. スーパーカルト誕生 (Birth of The Super Cult)
03. めちゃくちゃ悪い男 (Extremely Bad Man)
04. ナマで踊ろう (Let's Dance Raw)
05. 義務のように (Like An Obligation)
06. もうやめた (Gently Disappear)
07. あなたもロボットになれる (You Can Be A Robot, Too)
08. やめられないなぜか (Why Can't I Stop?)
09. 好きではないけど懐かしい (Never Liked You, But Still Nostalgic)
10. この世はもっと素敵なはず (This World Should Be More Wonderful)

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