『FFXIV』の音楽はまだまだ進化する 祖堅正慶・今村貴文・石川大樹・矢崎早彩が語り合う「7.xシリーズ」を経たサウンドチームの現在地

『FF14』音楽チームの現在地

流行の音楽をどうキャッチする?

ーーゲーム音楽の作家さんたちに対して、ユーザーベースでありながら自分の力をきちんと最大化している点にすごくリスペクトを感じているんですが、これは特別な訓練を経て身につくものなんでしょうか。

祖堅:自分をどこまで出していいかというのは議論になりやすいんですけど、僕は明確に、このチームでやるからには“ゲームが優先”というスタンスです。自分を出すこと自体は自由だけど、ゲームに合っているなら出していいし、ゲームに合わなくなるならやめるべき。最初に議論するのは作品の世界観に合っているかどうかというポイントですし。石川と今村は矢崎よりも早く僕のチームに合流したので、最初のうちは大変だったと思うんですけど、今はバランス感覚を意識しなくても分かるようになっている。2人とも入社当時から「ゲームを作りたい」という意思がすごく伝わってきたので、“こいつらとなら大丈夫”と思えたんです。

――たとえばパッチ7.2で実装されたレイドシリーズ第2弾『至天の座アルカディア:クルーザー級』第2層の「Back to the Drawing Board」はジャージークラブですよね。

今村:発注段階では「原宿系」という文言でした。ボスキャラがスライムっぽくて色々な色をしていて性別も分からない感じだったので、たしかに原宿系だなと。参考曲もいただいていたんですけど、正直ジャンルとしてはどれもちょっと違う気がして、僕が元々音楽的に好きだったこともあって、ジャージークラブを持ってきました。コージ(THE PRIMALSのボーカルも務めるマイケル・クリストファー・コージ・フォックス)に歌ってもらったんですけど、声をめちゃくちゃ加工して子どもっぽくしているうちに楽しくなっちゃいましたね。性別が分からない感じにしたくて、セクションごとに声を変えているんですけど、作りながら笑っちゃいました。

それぞれの推し曲(自薦曲)

TRAIL TO THE HEAVENS: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』 3秒ダイジェストPV

――続いては、今回のサウンドトラックの中から、みなさんが自信を持って送り出した、あるいはご自身の幅の広がりを感じた1曲をお聞きしたいです。

祖堅:僕から?  難しいけど、「Unleashed」……いや、「Absolute Tyranny」かな。このボーカルのルーク・カーデンさん(Luke Cuerden)もすごく良かったので。

ーーやっぱりいい曲ですよね、これ。私も本当に好きです。

今村:僕は『アルカディア』第2弾の「Ride the Rhythm ~至天の座アルカディア:クルーザー級~」ですね。プレイヤーの方にも喜んでもらえたかなという意味でよくできたと思っています。曲を作る前段階で開発チームとかなり綿密に打ち合わせていて、ゲーム内にちょっとした仕掛けが入っているんです。そこも含めて突き詰めて作れたのがよかったです。それから、制作段階では自分でボーカルも入れているんですが、テンションを上げるためにスピーカーからガンガン音を出した状態でマイクを持って歌ったので、元データはノイズだらけで、自分の声だけ抜き出す作業が大変でした(笑)。

石川:僕も同じくアルカディア第2弾から「Not Afraid」を。第1弾のライトヘビー級3層の楽曲「Burning Souls」のアレンジで、ギターも僕がひと通り弾いています。祖堅とギターの音色やドラムの感触を相談しながら進めていたんですが、珍しく祖堅が「これいいよ」と、頼んでもいないのにヘビーメタルのオススメを20曲くらい送ってきてくれて(笑)。熱量がすごくてありがたかったですね。ボーカルもコージ、祖堅、吉田が参加していて、皆さんの力強い歌唱をミックスしたのがすごく心に残っています。ギターの音作りでも、最初はテレキャスターのシングルコイルで録っていたら軽い感じになってしまって。祖堅の「ハムバッカーにした方が良いんじゃない?」のひと言でレスポールに変えて録り直したら、一気に解決したのも印象的でした。

祖堅:石川は、こういう曲やるの初めてじゃない? 最初はちょっと厳しいかと思ったんですけど、とんでもないのが上がってきて。ギターソロとかめちゃくちゃやってて「最高かよ!」と思いました。

石川:人がギリギリ弾けないような曲になりました(笑)。THE PRIMALSのライブでも演奏されることがあるんですが、お客さんの熱狂ぶりを見ると「作って良かったな」と思いますね。ギターのGUNNさんやドラムのたちばなテツヤさんに「誰だ、これ作ったの!」と言われましたけど(笑)。

矢崎:私は2曲、いいですか。ひとつはアルカディア第3弾4層零式――「The Arcadion」です。これまで実装されたアルカディア闘士たちのメロディフレーズを全部入れているんですが、ヘビー級の曲はスケジュール的にギリギリまで入れるか悩んだものの、アルカディアシリーズの集大成なのでやっぱり入れないとと思って。どこにどのフレーズを配置するかずっとパズルのようでした。プレイヤーとしてもアルカディアのストーリーやコンセプトが好きだったので、ライトヘビー級3層の「Burning Souls」とクルーザー級4層の「Unleashed / Peerless」のメロディを重ねるとか、キャラクターの関係値などを汲んで意図的に仕込んでいます。

――「The Arcadion」を初めて聴いたとき、“元気玉みたいな曲”だと思いました。まさにプレイヤー目線の仕上がりだと感じます。

祖堅:実際、発注内容に「元気玉」って書いてあった記憶があります。

矢崎:実は作っている当時はストーリームービーで使われるとは知らなくて、なんとなく「ここはこのフレーズだ」と思って「Burning Souls」を入れた箇所が、実機で見たらまさにライトヘビー級3層のブルートボンバーが登場するシーンで、運命を感じました。自分がこだわったポイントが全部ゲームに反映されていて、本当に達成感がありましたね。

 もう1曲はパッチ7.5の飛空戦艦工廠の道中でかかるBGM「空知らぬ艦 ~妖異侵攻 クルティウス魔導工廠~」です。もともと透明感のあるピアノの音色がすごく好きで、自分がそういう曲を作るときもすごく楽しんでいます。パッチ6.4で「Fleeting Moment 〜万魔殿パンデモニウム:天獄編〜」という曲を作らせてもらったのですが、この曲もそういった作りのトラックで。ただ、当時ミックス作業、特にベースやドラムなどのリズム隊でとても苦労したんです。今村にすごく協力してもらってなんとか完成させたんですが、個人的には悔いが残っていて。今回、電子ドラムでジャンルは違うけれど、ひとりで納得のいく形に仕上げられて、ちょっとリベンジができた気がしています。自分の成長という意味では、「空知らぬ艦 ~妖異侵攻 クルティウス魔導工廠~」ですね。

「これ、自分が作ったことにならないかな」と思う曲

――他薦曲についてもお伺いしたいです。「自分が作ったことにしたい」と思うほど、お好きな楽曲はありますか?

石川:僕は、ウィンタラーのテーマ「冬を越える者たち」ですね。曲自体がすごく好きというのもあるんですが、祖堅の曲を聴くと「『FF14』だな」と思うんですよ。パッチ7.0以降は僕らに任せてもらうことも増えて、祖堅自身が手がける曲は相対的に減ってきてはいるんですけど、改めてこの曲を聴いたときに、自分が『FF14』をプレイしてきた過去の思い出や感情が湧き出てきて。祖堅の曲からしか得られない栄養素がある、と改めて実感した一曲です。

祖堅:でもこれ、半日ぐらいで作った曲なんですよね、実は。

石川:それはそれでいいんです。手癖というか、そこに祖堅らしさが出ている。

祖堅:この曲を作っているとき、僕も含めてみんな追い込まれていたんです。“やべぇ、何も出てこねぇ”みたいな状況でした。全員何か抱えているから作業をお願いできず、「俺がやるわ!」と言って取り組んだ記憶があります。

ーー図らずも楽曲名が「冬を越える者たち」で、追い込まれていたサウンドチーム側をも指しているダブルミーニングになっていたわけですね。続いて祖堅さんはどうでしょう?

祖堅:僕の推しは、矢崎の「新しき世界 ~黄金~」ですね。「クリティカルエンカウント」という、多人数参加型のバトルコンテンツの曲なのですが、矢崎がついに「ちゃんと作れるようになったな」と思った曲です。それまでの矢崎の楽曲もゲームに実装するクオリティとしては全く問題ないんですけど、心をガシッと掴みに来る部分がもう一歩足りていなかった。でもこの曲を「できました」と持ってきたときに、ゲームプレイしながら聴いて、これはすごいぞと。原曲は植松(伸夫)さんの楽曲なんですが、このアレンジには本当にびっくりしました。

ーー具体的にはどういった技術なのでしょう?

祖堅:技術は積み重ねていれば誰でもいつかできるようになるものなんですけど、心を掴むかどうかは教えてできることじゃない。経験を積んでいくうちに、いつの間にかできるようになっていることなので、正直言葉にするのが難しいんですけど、聴いてグッときたんです。ちょっと抽象的で伝わりにくい要素かもしれませんが、ゲームサウンドにとって必要なものなんですよ。ユーザーがそのゲームをプレイしているときに、高揚できるかどうか。優れたゲーム音楽ってそれができるんです。矢崎がアレンジした「新しき世界 ~黄金~」は、限りなくそれを実践できていた。

矢崎:ありがたいです。いろいろな楽曲にチャレンジさせてもらっているので……。『FF14』の凄さですね。このゲームが引き出してくれるものってすごく多い気がします。

 私も石川と同じで、祖堅の「冬を越える者たち」です。『FF14』では関連するテーマのフレーズを引用することが多いんですけど、この曲は先を見越した新しいテーマ曲になっていて。ムービーを見ながら初めて聴いたときの衝撃がすごかったです。こういう組織がいて、こういうキャラが出てきて、こういう世界観です、みたいな情報がこの1曲で表現されているような気がするんです。パッチ7.2から登場するカリュクスというキャラクターにもぴったりですし、何度も登場するたびにハマっている。さすがだなと改めて感じた一曲です。

今村:僕は矢崎の、FF9の原曲をアレンジした「最後の闘い (FINAL FANTASY IX) ~黄金~」です。原曲は僕も当時プレイしていて強烈にイメージが残っていて、テンポも原曲はもっと速いんです。オリジナルは植松さんが手掛けていますが、オリジナルから大きく変えたアレンジをすると、元々の曲の印象から乖離してしまって良い結果にならないことも多々あります。でも矢崎が上げてきたアレンジを聴いたとき、「そんな変え方をするのか」と驚きましたが、原曲の良さもちゃんと残しつつゲームにマッチしていて素晴らしかったです。正直、僕にはできないアレンジだったので、推したいなと。

チームはまだ「黎明期」

ーー最後に、今回150曲を超えるボリュームの中で、チームとしてのピークを感じるポイントがあれば教えてください。

祖堅:ピークという意味ではまだピークにたどり着いていないかもしれません、というのが正直なところです。ただ、物凄く上り調子の最中にいると感じています。今日は“矢崎アゲ”の回でしたが(笑)、「Not Afraid」でいえばオケ畑だった石川がいきなりヘビメタに挑戦し、今村は自分の得意なところでブイブイ言わせています。成熟期というよりは、黎明期を超えてぐんぐん伸びている真っ最中という感覚が強いです。2027年1月リリース予定の新たな拡張パッケージ『白銀のワンダラー』も、すでに制作は順調に進んでいて、彼らはもうすごいですよ。彼らみんな大活躍しますんで。

■リリース情報
『TRAIL TO THE HEAVENS: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』
発売:9月16日(水)
価格:¥5,500(¥5,000+tax)
仕様:Blu-ray Disc Music

■ゲーム情報
『ファイナルファンタジーXIV(ファイナルファンタジー14)』
プロモーションサイトはこちら
ジャンル:MMORPG(オンラインゲーム)
プラットフォーム:PlayStation®5|PlayStation®4|XBOX Series X|S|Nintendo Switch 2|Windows®|Mac|Steam®

■関連リンク
『TRAIL TO THE HEAVENS: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』特設サイト:https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/ff14/TRAIL_TO_THE_HEAVENS/

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