『FGO』10年の旅路を彩った音楽の集大成 芳賀敬太が語る第2部 終章の楽曲制作秘話と“アフタータイム”への展望

音楽として非常に重要な役割を果たした「エリア51」
ーー冠位戴冠戦の楽曲について伺います。グランドアーチャー戦の「黄金の王 ~Grand Duel 3~」には「cosmic air」のモチーフも入っていました。
芳賀:ギルガメッシュといえばギルガメッシュの曲じゃないと、ということで制作しました。「cosmic air」の上に成り立っている「黄金の王」のグランドバージョンにしたいという話になり、結果的に「cosmic air」のモチーフも逆輸入的に変形して入っています。今のギルガメッシュの音楽の文脈では当たり前に入っているような部分ですね。
ーーグランドアサシン戦の「晩鐘の天使 ~Grand Duel 2~」はいかがでしたか。アニメなどではこれまでハサンモチーフの楽曲が多く登場していますが、その辺りを参考にされたりなどはしましたか?
芳賀:アニメの音楽はそのアニメーションがあってのものですから別ものだと考えるようにしていて、基本的には参考にすることはないですね。僕自身が制作し、はじめからアニメとゲームを繋ぐ意図があった場合は別ですが。「晩鐘の天使 ~Grand Duel 2~」に関しては「ダークで荘厳な曲」ですとか、「静かに迫る死」というオーダーで、終章に向かう流れとは少し方向性が異なるテイストになりました。
ーー第2部 終章の楽曲「カウントダウン」は、「into the end」の派生でありながら、終盤はストリングス、ギター、シンセサイザーが絡み合うスリリングな構成でした。
芳賀:終章は「カウントダウン」を作った時点で、全体的なサウンド感や方向性が見えました。物語的に大きく動く場面ではなく、白紙化地球マップが終章仕様に変わる部分だったので、シンプルにやらなければいけないという縛りがありましたね。いかにシンプルに緊張感や圧を出すかという点で、これまでの「into the end」の緊張感のあるベースを残しつつ、アレンジを加えました。
ーー終章全体のロードマップとしては、どのような方向性を定めたのでしょうか。
芳賀:章の雰囲気にもよりますが、普段はシンセサイザーを1〜3トラックぐらいしか混ぜないのですが、今回はシンセがメインになってアンダーグラウンドな方向に行ってもおかしくないし、とにかく必要な表現をしようと思って作っていきました。実際に「人理保障天球:オルガ・カルデアス」や「エリア51」など、デジタルな曲が多くなりましたね。逆に終盤の「マリス・カルデアス」などではオーガニックに大きくする曲と混ぜることで、従来よりも厚みを出せるようにしました。
ーー「エリア51」のシーンでは、淡々としたアンビエントな楽曲が使われていて、シナリオの悲惨さと相まって非常に効果的でした。
芳賀:シナリオを読んでいて苦しくなる場面でしたから、もしエモーショナルな曲や怖い曲だったら、僕もプレイヤーもかなり削られていたと思います。あそこで淡々とした曲を鳴らすことで、「出来事の観測として受け止める場面なんだ」と納得できるようになっていたと思います。音楽が「こういう場面なんだ」ということを表現する上で非常に重要な役割を果たした曲ですね。
ーー「主よ、この獣に憐れみを」は、燃え尽きるソロモンのシーンで流れましたが、元はアニメのデモバージョンだったそうですね。
芳賀:当初あの場面には曲の発注がなく、あるものでいく予定だったと思うのですが、イベントスチルにかなり力が入っていたこともあり、新曲にしようという話になりました。ちょうどソロモンの宝具用に、アニメ『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』のメインテーマだった曲のサビを作っていたので、あの曲で表現できるんじゃないかと。当時僕の方ではデモとしてしか作っていなかったので、あらためてフルバージョンとして制作しました。
タイトル画面&ターミナル楽曲の新録に込められた意味
ーーサントラには「Grand Order ~Re-recording ver.~」と「カルデア ~Re-recording ver.~」という新録バージョンが収録されています。これはどういった経緯で制作されたのでしょうか。
芳賀:第2部が完結し、ゲームのタイトルが一旦無印に戻った状態なので、曲も無印の時のものが適切だろうということになりました。ただ、そもそもの「Grand Order」がループ仕様ではなかったのと、当時とはサウンド感も変わっているので、手を入れなければいけませんでした。ループさせるためにトラックの切り貼りはしていますが、新しく作曲したフレーズは一切ありません。あくまでも100%「Grand Order」です。ターミナルの「カルデア」は、タイトル画面を新録した以上こちらもということで新録しましたが、スコア的には何も変わっていません。
ーーTVCM曲「Reson8te (feat. 六花)」についてお聞きします。スパイラル・ラダーとしての楽曲ですが、これまでのシリーズ同様、タイトルに数字が入っていますね。これまでは漢数字でしたが、今回は英数字の「8」を使っています。
芳賀:リアルサウンドの読者は洋楽好きが多いかもしれないので共感してくれたら嬉しいんですが、欧米のカルチャーでは接尾辞の「-ate」を「Eight」として表現することがたまにあるんですよね。そこでまず語尾が「-ate」のワードにすると決めました。そこから、八名の隊士が結集する物語ということで、「Resonate(共鳴する)」に。ただもっと「8」ということを分かりやすくしたいということで「Reson8te」という表記になりました。ボーカルの六花さんにも、これまでに出してこなかった洋楽的でロックな歌い方を取り入れてもらいました。
ーーこの曲のバトルアレンジ「Reson8te ~リターンオブ誠~」も収録されていますが、歌モノからバトルアレンジにする際に苦労する点はありますか?
芳賀:基本的には難しいですね。ただ自分の場合はコードではなくハーモニーで作曲するスタイルなのと、そもそも初めからインスト版も視野に入れて歌も作っているので、比較的自由度が高く、多少落とし込みやすくはあります。
ーーイベント楽曲についても伺います。「ぐだぐだ新選組・ジ・エンド」では、「誠」という近藤勇のテーマ曲が印象的でした。
芳賀:僕自身もライターの経験値さんも一番こだわった曲です。逆境から立ち上がり大きな使命に向かうイメージで制作しました。イベント全体としては新選組のフレーズで固めつつ、そこに近藤、彦斎、松永という新しいエッセンスを乗せることができました。新選組のイベントが本当に終わるのかどうかは分かりませんが、「ジ・エンド」と銘打つなら新選組にまつわるもの全てを出し切りたいという思いでした。
ーー「ファイナル・ハロウィン2025」では、初期のハロウィンモチーフが使われていました。
芳賀:ユニヴァースでファイナル感のあるバージョンということで、SF映画のオープニングで流れそうなスケールの大きさにしてみました。モチーフは2015年初出の「歌うカボチャ城の冒険」です。そして「鮮血魔嬢ユニヴァース」では、今回初の試みとして、中盤に非常に原曲に近くなる部分を作りました。これまでお世話になってきたこの曲への感謝と敬意を忍ばせています。
“アフタータイム”へ向けて――シンプルさへの回帰と、積み重なる歴史
ーー最後に、「アフタータイム」以降の展開についてお話しできる範囲で教えてください。
芳賀:第2部 終章でひとまず一番盛り上げなければいけないところは過ぎたので、まずは一旦原点に回帰するような形で、再スタートを意識しています。まだ始まりですのでいきなり終章級に派手な曲を作ることはせず、徐々にこの先を探っている段階です。タイトル画面のBGMも新しいグランドオーダーになりましたが、第2部の時のようにクワイアは入っていません。
ーーまたここから積み上げていくということですね。
芳賀:そうです。例えば、新しいグランドバトル曲は「運命 ~GRAND BATTLE~」のアレンジになっていますが、今回はただ「運命」に戻るだけではなく、終章の「マリス・カルデアス」のモチーフがメドレー的に繋がってより大きな曲になっています。第1部があり、第2部があって、その先に時が止まった今があるという「時間の流れ」を示したかったんです。ユーザーのみなさんにも、過去だけではなく現在や未来がちゃんと積み重なっているんだということを感じてもらえたら嬉しいです。
■リリース情報
『Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅷ』
発売:2026年7月1日(水)
価格:4,180円(税込)
仕様:全3枚組
初回仕様特典 :三方背ケース
ジャケットイラスト(原画:武内崇、彩色・仕上げ:こやまひろかず、彩色補:縞うどん、背景:竹之内佳和)
※商品の特典および仕様は予告なく変更になる場合がございます。
商品情報HP : https://www.fate-go.jp/music/ost8.html
配信URL:https://anxmusic.lnk.to/rPITAz
発売告知TVCM:https://www.youtube.com/watch?v=UIXobXPMEEw

























