『ドラクエ12』5年越しの“作り直し”を発表した理由は? 国民的シリーズの最新作に制作陣が示す覚悟

『ドラクエ12』“作り直し”を発表した理由

 日本を代表するRPGとして知られる、スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエスト」シリーズ。5月27日に公開された動画にて、その新作ナンバリングタイトルが新しい体制で“リスタート”していることが発表された。今の時代に大作RPGを作り上げるということは、かなりハードルが高くなっているのかもしれない。

ドラゴンクエストからのお知らせ

「ダークな大人向け」から方向転換した背景

 今回公開された動画には、エグゼクティブ・プロデューサーの齊藤陽介氏とゲームデザイナーの堀井雄二氏が登場し、現在の開発状況について説明。齊藤氏は「『ドラゴンクエスト』のナンバリングタイトルがどうあるべきかを突き詰めていった結果、新しい体制で『ドラゴンクエストXII』を作ることを決断」したと語り、「発売まではもうしばらくお待ちいただきたいと思います」とファンに向けて呼びかけた。

 そもそも同作についての情報が初めて世に出たのは、今から約5年前。2021年5月のシリーズ誕生35周年記念配信でのことだった。そこでは『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』というタイトルが発表されていたほか、堀井氏が作品の方向性について「ダークな感じ」「大人向けのドラゴンクエスト」と語っていた。

 しかし新たに公開された動画のなかで、堀井氏は「今回は、ふしぎな夢が見えてしまう主人公の冒険を描いた物語です」「夢の彼方には、きっとダークではなくて明るくワクワクするような世界が広がっていると思いますよ」と説明。作品のコンセプトが大きく変わったことを匂わせている。

 また作品名についても『ドラゴンクエストXII 夢の彼方へ』へと変更されるとのことで、さまざまな部分が一新されたことが分かる。

なぜ5年動いたプロジェクトをやり直せたのか

 現在のゲーム業界では、大作ゲームの開発コストが膨らみ、開発期間が長期化している。そんななかでプロジェクトをリスタートさせるという決断に踏みきることができたのは、「ドラクエ」シリーズが国民的IPであり、スクウェア・エニックスに企業としての余力があったからだろう。

 とはいえ齊藤氏が「とても大変な決断ではありました」と語っていた通り、制作陣にとって苦渋の決断だったことは間違いないはずだ。

鳥山明・すぎやまこういち両氏の“遺作”として

 ではなぜこうした判断に至ったのか。その理由については、色々な事情が推測できる。たとえば思い浮かぶのは、開発陣がファンの想いを汲み取った結果、“王道路線”への回帰を選んだという可能性だ。

 「ドラクエ」シリーズといえば鳥山明氏がキャラクターデザインを担当し、すぎやまこういち氏が音楽を担当してきたことはあまりにも有名。しかしこの2人が逝去したことで、『ドラゴンクエストXII』は遺作という位置づけになることが確定している。

 そして堀井氏は、2024年5月27日に自身のX(旧Twitter)にて「亡くなったお二人の遺作に相応しいものをと思っています」と、『ドラゴンクエストXII』にかける意気込みを語っていた。

王道回帰と新規層獲得という難題

 元々発表されていた“大人向けのダークな作風”というコンセプトは、『ドラクエ』シリーズを新たな層に向けてリーチするための挑戦として考えられていたはずだ。しかし『ドラゴンクエストXII』は、既存のファンたちが大きな期待を寄せる作品である。そのため新しい分野を開拓するよりも、王道の面白さを追求する方向へと路線変更したのかもしれない。

 その一方、ただでさえ存在感が薄くなりつつあるRPGというジャンルにおいて、新規層を取り込むための試みは必要不可欠ではあるだろう。とくに「ドラクエ」はJRPGの代名詞とも言えるシリーズだからこそ、既存ファンのニーズを満たしつつ、新規層への目くばせを行うという難しい課題を強いられているように思われる。

 これは予想に過ぎないが、おそらく『ドラゴンクエストXII』はコンセプトとして王道回帰の方向性を打ち出しつつも、何らかの形で若いゲームファンを意識した要素を盛り込もうとするのではないだろうか。

 5年動いたプロジェクトをリスタートさせるという“力技”は、果たしてどんな結果をもたらすのか。『ドラクエ』シリーズの渾身の一作が、新時代を切り拓くようなヒット作となることを期待したい。

『ドラゴンクエストX』にAIバディ「おしゃべりスラミィ」登場へ 堀井雄二の“NPCにAIは違う”から生まれた「自分だけの友達」

『ドラゴンクエストX オンライン』にGoogle Cloudの生成AI「Gemini」を活用した対話型バディ「おしゃべりスラミー…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる