京都から世界へーー『にゃんこ大戦争』1億1,111万DL突破の裏側にあった“App Storeとの共闘”

『にゃんこ大戦争』1億1,111万DL突破の裏側

 1990年に設立された、京都を拠点とするポノス株式会社が2012年にリリースしたスマートフォン向けゲーム『にゃんこ大戦争』は、現在世界166カ国で配信され、毎月約100万ダウンロードのペースで成長を続けている。英語、韓国語、繁体字への対応に始まり、2021年にはフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、そして2023年にはタイ語に対応するなど、多言語展開を推進した結果、2026年3月には全世界累計で1億1,111万ダウンロードという金字塔を打ち立てた。

 同作の快進撃はゲームアプリにとどまらない。著名IPとのコラボレーション、Nintendo Switch版の展開(累計160万本突破)、コミック化(累計150万部突破)、さらには台湾、韓国など海外を含めた大規模なオフラインイベントやグッズ展開にまで広がりを見せている。全世界のSNSフォロワー数は400万を超え、まさにグローバルなIPへと成長を遂げた。

 App Store新生活キャンペーンにてフィーチャーされたことを機に行われた本取材会には、開発責任者・プロデューサーの若林篤氏と、チーフプロモーターの野澤勇太氏が登壇。App Storeというグローバルプラットフォームとの強固なパートナーシップ、多言語展開の挫折と成功、そして「唯一無二」と称される世界観がいかにして受け入れられてきたのか。14年にわたる奇跡の軌跡を、余すところなく語ってもらった。(編集部)

1億1,111万DLの衝撃と、ガラケーからスマホへの挑戦

――『にゃんこ大戦争』は2026年3月に累計1億1,111万ダウンロードを達成しました。この数字を、お二人はどのように受け止めていますか?

開発責任者・プロデューサー 若林篤氏

若林: 2026年11月で14周年を迎えることになりますが、14年前は1億ダウンロードを超えるなんて1ミリも想像していませんでした。リリース当初は「日本編第3章」までの非常にコンパクトなボリュームで完結する設計で、長期的な運営を前提としたプロジェクトではなかったんです。ただ、リリース直後からApp Storeのランキングに入り、たくさんの人に遊んでもらえるようになってからは、とにかく夢中でコンテンツを積み上げてきました。

 それが気づけば14年。そしてついに1億DLを達成し、社員全員が驚いています。「こんな日が来るなんて夢にも思わなかった」というのが本音です。

チーフプロモーター 野澤勇太氏

野澤:1億という数字は日本の人口とほぼ同じくらいですから、そう考えると改めてすごい数字ですよね。今回フィーチャーいただいたApp Storeというプラットフォームがなければ、私たちが作ったゲームをこれほど簡単に世界へ発信することはできませんでした。13年以上前のことになりますが、あの時、世界に届ける決断をして本当によかったと思っています。

――2012年というスマートフォンゲームの過渡期に、App Storeでのリリースを決断された経緯や背景を教えてください。

野澤:当時、私たちはすでに『にゃんこ大戦争』以前にもスマートフォンゲームを数本リリースしており、早い段階からApp Storeへのリリースを継続していました。その中でヒットしたタイトルもあり、App Storeには非常に大きな可能性を感じていたんです。ただ、『にゃんこ大戦争』は最初、ガラケー版としてリリースしていて、ユーザーからは「ボタンをポチポチ押してキャラクターを出撃させるシステムでは、指が疲れてしまう」という課題もあったんです。そんななかで日本や米国のApple様と継続的にお話ししたときに「スマートフォンのタッチパネル機能を活かしたゲームが求められている」と感じ、当時の私たちのラインナップだと『にゃんこ大戦争』が最も適していると考え、スマートフォン版の開発に踏み切りました。

若林:ガラケーからスマートフォンへ移植するにあたり、当時はまだユーザーに馴染みの薄かった「タップ」や「フリック」という操作を、いかに「心地いい」ゲーム体験へと昇華させるか。そのUI/UXの手触り感には徹底的にこだわりました。直感的にプレイできる操作性に加え、ゲームの戦略性、そしてApple様と二人三脚で進められたこと。この掛け算が大きな躍進に繋がったのだと思いますね。

「ストレンジイングリッシュ」からの脱却と、究極のローカライズ

――リリース当初から海外展開は意識されていたのでしょうか? それともまずは国内展開を優先したのでしょうか?

野澤:海外展開は最初から意識していました。『にゃんこ大戦争』以前のタイトルもすべてリリース時から英語版に対応していましたから。せっかく世界へスムーズに届けられるApp Storeというプラットフォームがあるのだから、海外を意識しない手はないと社内でもコンセンサスが取れていました。ただ、最初は私が英語版の翻訳をしたため、海外のユーザーに「ストレンジイングリッシュ(おかしな英語)」と評価されてしまって(笑)。

 もちろん英語だけが理由ではないのですが、一度日本版に集中しつつ、海外展開についても社内体制をしっかり整えてから改めて挑戦しよう、という判断になりました。

 そこから若林と相談し、京都に住んでいる日本文化に造詣の深いネイティブスタッフを採用し、体制を整えました。今でもその翻訳者がプロモーションも兼任しており、開発陣と同じフロアでコミュニケーションを取りながら仕事をしています。

若林:翻訳は直訳ではなく、初期段階からネイティブスタッフと「にゃんこらしさをどう伝えるか」にこだわってきました。

 『にゃんこ大戦争』には日本固有の文化やネタを題材にしたテキストが多く、そのまま直訳しても現地のプレイヤーにそのおもしろさは伝わりません。そのため、日本の文化と現地のカルチャー双方に精通したネイティブスタッフに表現の裁量を大きく委ねています。私たちの主観で指示を出すのではなく、現地の方に自然に受け入れられるカルチャライズを最優先し、時間をかけて丁寧にローカライズを進めています。

野澤:子どもの頃に『にゃんこ大戦争』を夢中で遊んでいたプレイヤーが成長し、入社してくれたケースもあります。英語が堪能なそのスタッフが翻訳チームに加わり、ネイティブスタッフと「ああでもない、こうでもない」と議論しながらローカライズを進めている姿を見ると、非常に感慨深いですね。

――2014年〜2015年に英語、韓国語、繁体字版を出し、その後さらに多言語展開を進められましたが、その経緯を教えてください。

若林:世界166カ国に配信している中で、当初はヨーロッパやタイのユーザーにも英語で遊んでいただいていました。しかし、プレイしてくださる現地のユーザー数が増えるにつれ、やはり現地の主要言語で遊んでいただく方がより楽しんでもらえると考え、2021年からフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、そしてタイ語を順次、追加していきました。結果的に、多言語展開が現地ユーザーの定着に大きく繋がっています。

App Storeとの二人三脚 データ分析と開発検証の優位性

――App Storeを活用する上で、Appleからどのようなサポートや提案を受けたのでしょうか?

野澤:リリース初期は100円の買い切りゲームを作っていて、マネタイズが難しかった時期がありました。そんな中で「アプリ内課金を入れたゲームを作っていこう」と舵を切り、iPhoneの機能を活かしたゲーム性についてApple様と継続的にお話しさせていただいたことが非常に大きかったです。

 また、当時の私はプロモーションのプの字も知らないカスタマーサポート担当だったのですが、初めての海外出張がアメリカのApple本社でした。翌年にはWWDC(Worldwide Developers Conference)にお招きいただき、世界中のデベロッパーの話を聞く機会を得ました。そこで得た、アプリ内課金以外の広告マネタイズなどのトレンドを日本に持ち帰って試行錯誤したことが、今の広がりに繋がっていると感じています。そうしたサポートや、「Today」タブなどでのフィーチャーによる露出がなければ、私たちのゲームがこれほど世の中に広まることはありませんでした。

 さらに、マーケティングの観点では「App Store Connect」というデベロッパー向け管理サイトの分析機能が非常に役立っています。App Storeでの検索や探索から自然に流入してくるオーガニックなユーザー数の伸びが目に見えてわかるため、フィーチャーされた際の効果測定やビジネス判断に大いに活用しています。年々分析機能が使いやすくなっているので、本当に助かっています。

若林:開発の観点からも、iPhoneというプラットフォームは非常に魅力的で、Apple様の審査プロセスを通じて修正を行い、品質を保てる点は、開発者としても大きな安心感に繋がっています。

唯一無二のIPへの成長と、ベンチマークを持たない独自路線

――日本だけでなく世界中で『にゃんこ大戦争』が受け入れられている理由について、どのようにお考えですか?

若林:基本的には日本版から開発し、それをローカライズして海外に配信するという手法を取っています。海外に特化したカルチャライズを行っているわけではないのですが、どの国のユーザーからも「キャラクターの魅力」や「戦略性のあるゲームシステム」が人気を集めていて、万国共通なのだと感じています。

野澤:ゲーム性だけでなく、キャラクターへの愛着も世界共通です。先日台湾で開催したポップアップショップでは、開始わずか3時間でグッズが売り切れてしまうほどの反響がありました。世界中のお客さまに、ゲームだけでなくグッズなどの形でもしっかり『にゃんこ』を届けていくことが今後の課題であり目標です。

――グローバル市場には数多くの競合タイトルがありますが、ベンチマークにしているアプリやゲームはあるのでしょうか?

若林:他作品をベンチマークとして意識していたことはありますが、今は「ベンチマークはない」と言えます。何かを真似るのではなく、独自のアイデアを貫いてきたからこそ、世界中で受け入れられたのだと思います。これからも無理にベンチマークを作ることなく、自分たちのスタイルを貫いてやっていきたいです。

継続率へのこだわりと、App Storeを通じた今後の展望

――ここまで長く愛され続けるために、運営面で特に重視していることは何ですか?

若林:運営で一番大切にしているのは、「どうすれば長く、飽きずに遊んでいただけるか」そのための施策を常に考え続けています。

 実は『にゃんこ大戦争』って、最初から最後まで無課金でもしっかりと遊べる設計になっているんです。課金はあくまで「時間を短縮したい方」のための選択肢。この無理のないスタイルだからこそ、お子様から大人まで、幅広い層の皆さんに長く楽しんでいただけているのだと思います。

――昨年はApple Arcadeでもスピンオフタイトル『それいけ!スーパーにゃん』などをリリースされました。こちらの狙いや手応えはいかがですか?

若林:Apple Arcadeはファミリー向けで課金要素のない安全なプラットフォームです。タワーディフェンスというジャンル以外にも、アクションゲームなど別ジャンルのスピンオフを出すことで、『にゃんこ大戦争』を遊んだことがない新しいユーザー層に『にゃんこ』というIPを知ってもらう良い機会になりました。

野澤:エコシステムの中に違うタイトルを出すことで、IPとしての露出を図れる非常に大きなチャンスでした。実際に、Apple Arcade版から本編である『にゃんこ大戦争』へ興味を持ってくださる流れも生まれており、ブランドの認知拡大に大きく貢献していると感じています。

――最後に、これからApp Storeを通じてグローバル展開を目指す日本のデベロッパーへ、メッセージをお願いします。

若林:私たちが14年間続けてこられたのは、自分たちだけの力では絶対に無理でした。無料ランキングへのランクインや、Todayタブでのフィーチャーといった露出があってこそ、ユーザーの目に触れ、インストールに繋がります。自分たちの目先の利益だけを追うのではなく、Apple様と連携し、お互いに協力しながら取り組んでいく姿勢が非常に重要だと思います。

野澤:App Storeは世界に向けて挑戦できる、非常に巨大で大きなチャンスがあるプラットフォームです。私たちもヒットするまでは、いくつものタイトルで試行錯誤を繰り返してきました。ただ単に世界に配信すれば広がるというわけではなく、ユーザーにしっかり届く体験を作り、挑戦し続けてほしいと思います。

関東初上陸『にゃんこ大戦争展』横浜会場レポート 累計1億1111万DLのスケールと歴史をリアルに体感した

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