大丸松坂屋百貨店のVTuber事業「EchoVerse」運営に聞く、2期生オーディションへの期待 「次世代型クリエイター」の創出を狙う“意味と意義”とは

 大丸松坂屋百貨店が運営するVTuber事業「EchoVerse(エコーバース)」が、2026年4月8日より2期生オーディションをスタートしている。

 第1期では“歌”を主軸に活動するVTuber・花依(はなより)よるはを輩出し、デビューから半年でYouTubeチャンネル登録者数3万人を突破。事務所としての基盤を着実に築き上げてきた。そんなEchoVerseが今回のオーディションで掲げるテーマは、なんと「アート」だ。「VTuber=配信者」という枠にとらわれず、イラスト・音楽・映像といった領域で自己表現を続ける“次世代型クリエイター”の発掘を目指すという。

 なぜ百貨店がVTuberを、そしてアートを手掛けるのか。EchoVerseタレントマネージャー・春田真里奈に、2期生オーディションの狙いと、事務所が見据える未来について話を聞いた。(浅田カズラ)

始動から半年、事務所として本格拡大 順調な成長を見せるEchoVerse

昨年9月にデビューしたEchoVerse1期生・花依よるは

──まずは、今回EchoVerseが2期生募集に踏み切った経緯を教えてください。

春田:EchoVerseがVTuber事務所として拡大していく基盤が整ったためです。1期生の花依よるはが2025年9月にデビューしてから、日々の配信や動画公開、外部イベントへの出演、オリジナル楽曲の制作、グッズ販売の体制といった所属クリエイター支援の環境を、この半年間で一通り築き上げることができました。ここから、本格的に事業として拡大していきます。

──花依よるはさんの活動状況はいかがですか。

春田:いろんな方に支えていただいて、精力的に活動しております。温かいファンの方々がついてくださって、配信もすごくあたたかい空気で、動画にもたくさんの応援コメントをいただいています。

 私たちは「大丸松坂屋百貨店」という異業種からの挑戦だったので、どこまでVTuberシーンの方々に受け入れていただけるかという不安もありました。それが今、VTuberというカルチャーを愛してきたファンのみなさまや、業界の方々にも受け入れていただいて、少しずつコラボもさせていただけるようになりました。そして、様々なクリエイターさんと一緒に面白いものを作っていることも、とても嬉しく感じています。

──デビュー当時から花依さんと春田さんの距離は比較的近い印象でした。デビューされてから、運営として花依さんとどのように寄り添って活動を続けてこられましたか?

春田:事務所として、彼女が安心して活動に専念できる環境作り、必要なコミュニケーションを徹底して行っています。活動に関する各相談先の設定、リスクを回避するための対策、配信設備やテクニカル面のサポート体制など、安心して長期的に活動できるような支援をこれからも継続していきたいですね。

 そしてタレントマネージャーとしては、彼女が最高のパフォーマンスを発揮できるように、作り込みを一緒に考えています。隣に立って一緒に走る伴走者として、「どんな活動をしていこうか?」「花依よるはとして何を伝えていこうか?」といったところから一緒に整理して、ともに手を動かしています。

──最近はコラボ配信にも呼ばれているとうかがいましたが、他のVTuber事務所やクリエイターとはどのような交流が生まれていますか?

春田:花依よるはは歌を主軸に活動していることもあり、同じく歌を軸とする方々とご一緒いただく機会が増えつつあります。ありがたいことに、これまでもすでにコラボ配信や歌枠リレー、リアル会場のライブフェスに参加させていただいております。そのたびにご挨拶の機会をいただき、横のつながりを増やすことができています。

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「次世代型クリエイター」を発掘する──2期生募集のコンセプトとは?

──いよいよ本題ですが、今回の2期生募集では「アート」がテーマになっています。歌が主軸の花依よるはさんから、方向性がかなり変わった印象を受けるのですが、このコンセプトに至った狙いを教えてください。

春田:EchoVerseは、クリエイターの方々と一緒に歩んで、その方の作品やご自身の魅力、ものづくりや創造の楽しさを響かせ広げていくプロジェクトです。花依よるはが取り組んでいる歌と同様に“心に響く表現”に向き合っていきたいという考えから、今回はアートをテーマとし、「次世代型クリエイターの発掘」をコンセプトに掲げオーディションを実施します。

──「次世代型クリエイター」とは、どのようなものなのでしょうか?

春田:現代は、作品そのものだけでなく、クリエイター自身の魅力や、作品が生まれるまでの創作プロセスにも価値が宿る時代になっていると感じています。そこで私たちは、アート作品の制作や発表という枠組みを超えて、自身の体験やストーリーも含めて自己表現を行っていく存在を、「次世代型クリエイター」と呼んでいます。そうした方をEchoVerseで発掘し、世の中に届けていきたいと考えています。

──なぜそれを百貨店が手掛けるのか、という点も大きなポイントだと思います。EchoVerseは大丸松坂屋百貨店のDX推進部から立ち上がった事業ですが、VTuber事業は元々「クリエイターとの価値共創」というテーマを掲げてスタートしている、と聞いています。

春田:はい。「クリエイターとの価値共創により、その個性や情熱に彩られる経済をつくる」というテーマは、DX推進部が立ち上がった当初から、私たちの部門のDNAとして刻まれています。VTuber事業もその延長線上にあり、「次世代型クリエイター」の解像度をさらに高めていくことで、事務所としての役割や機能を拡張したいと考えています。

作品だけでなく、背景も想いも届ける「百貨店のキュレーション」という営み

──大丸松坂屋百貨店は百貨店として、これまでアート作品や伝統工芸を取り上げて展示・販売してきた、キュレーションの文化を持っているかと思います。今回のオーディションにおけるアートと「次世代型クリエイター」との文脈も、こうしたキュレーション文化が根っこにあるように感じます。

春田:大丸松坂屋百貨店は、創業の江戸時代からずっと、デザイナーさんや職人さん、様々なクリエイターさんたちと一緒に歩み、価値共創をしてきた歴史があります。そこにキュレーターの思想が根付いて、「価値を見極めて、文脈を作り、届ける」という営みを重ねてきたと考えています。

EchoVerseタレントマネージャー・春田真里奈さん

 「価値を見極める」とは、まだ世に見つかっていない素晴らしいクリエイターさんを発掘していくことでもあります。また「文脈を作る」というのは、百貨店だとモノを売る印象が強いと思いますが、実は百貨店は作り手の思いや背景といったストーリーを編集して、価値としてお客様に届ける……といったことにも取り組んでいます。

 さらに、ひとりのクリエイターさんの文脈だけに留まらず、「このクリエイターさんとこのクリエイターさんが一緒にものづくりをしたら、もっと面白いものが生まれるよね」というご縁を繋いで新たなコラボレーションを生み出すことにも取り組んできました。そうして生まれた価値を、最終的にお客様に長く愛してもらえる形にして大切に届ける。これが私たちの考える「楽しみ方の創出」であり、強みだと考えています。

──花依よるはさんの場合も、まさにその座組で彼女のストーリーを編んでいるわけですね。

春田:そうですね。彼女は素晴らしい歌声と表現力を持ちながら、内面には強いチャレンジ精神を秘めたクリエイターです。その才能やこれまで積み重ねてきた努力、ここから歩みはじめるゼロからのストーリーにさらなる魅力を加えるため、外部のクリエイターさんとのご縁を繋いでいます。

 彼女のビジュアルに目を向けると、デザインを担当いただいたイラストレーターの森倉円さんは、新たな挑戦を後押しするようなキラキラとした表情を描き出してくださいました。そんなお仕立てに、北米で活躍されているVTuberモデル制作スタジオ・Iron Vertexさんが、Live2Dモデリングで“動き”を与えてくれたことで、彼女の歌の魅力を視覚的にも表現できるようになりました。まるで踊るように、愛らしく動く姿が印象的です。

 また、先日告知した初のオリジナル楽曲では、花依よるは自身が作詞を担当しています。自身の生き方や表現と向き合いながら紡いだ歌詞に対し、作曲として白神真志朗さん、監修として堀江晶太さん、クリエイターチームのPHYZが参加。楽曲の構想段階から彼女の描きたい世界観を軸に打ち合わせを重ね、それぞれの専門性が掛け合わさることで、一つの作品として結実しました。

 このように、多様なクリエイターとの出会いによって新たなストーリーが生まれていく──その文脈ごとお客様に届けていきたいと考えているプロジェクトが、EchoVerseです。

作詞して歌いました。晩創膏/花依よるは 監修:堀江晶太PHYZ,作曲:白神真志朗 #shorts #vsinger #vtuber

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