なぜ実写を活用するVTuberがいるのか バーチャルな人たちのさまざまな“在り方”を知る

 バーチャルとリアルの姿、両方で活動する配信者「XTuber」という語が株式会社PANDORAによって商標登録され、話題だ。

 PANDORA社のプレスリリース(※1)を読むと、あくまでも概念として確立するための提案とのことで「個人・団体を問わず、自らの活動を表す文脈で『XTuber』と名乗ることは、基本的に自由であり、当社としてもそのような形で言葉が広がっていくことを歓迎しています」と明記されている。「特定の企業やサービスによる独占的・排他的な利用」を防いだり、「先使用権についても認識している」ことを明確にしており、いわゆる「商標トロール」のようなことをするつもりはない、ということだ。

 同社が先使用権について触れているように、かつてからバーチャルアバターだけではなく、リアルな姿も活用して“2.5次元”的に活動するVTuberは多く存在している。そこで今回の記事では、こうしたVTuberたちの在り方の変遷と、特に全身を実写で見せてリアルとバーチャル両方を行き来しているVTuberたちを紹介していきたい。

「アバターを身にまとう配信者」だけじゃない、VTuberの在り方

 VTuberといえば、なんらかのキャラクターアバターをまとって配信をしたり動画を撮ったりするもの、というのが一般的な認識になっていると思う。

 アバターをまとうことには多くのメリットがある。まず、なりたい姿で活動することができるというのは大きいだろう。性別、種族、年齢などを飛び越えて、好きなビジュアルを選択することができる。キャラクター性を持たせ、自身の世界観を作ることができるのも大きな利点だろう。お姫様、魔王、宇宙人、学生、動物など、好きな物語的背景を持った存在になってロールプレイしながら配信活動をすること自体に楽しさを見いだす者も多い。

 また、実写の姿を出さないことでプライバシーを保護できるというのも、大きな利点のひとつだろう。リアルの生活を匂わせなければ、日常にネガティブな影響をきたすことなく、たとえば会社員として働きながら目いっぱい配信活動を行うことも可能だ。

 しかし、こうしたVTuberたちの中にはきちんとしたアバターを持っているにもかかわらず、あえて実写の姿を見せて活動する者もいる。そして、そんなVTuberたちは年を追うごとに増えている。

なぜVTuberが「実写動画・配信」を行うのか

 そもそもの前提として、現在でもVTuberの大半は実写の姿(アクター)を映すことがほぼない。あくまでも2Dや3Dのアバターをメインに用いて活動している。VTuberを見ている側からしたら、しゃべっているのはアバターのキャラクターに他ならないのだから、黒子に近いアクターの姿は見えなくて当然だ。むしろ、実写の手足や身体が映るのは放送事故とされることのほうが、かつては多かった。

 ただ、VTuberがアバターのみで活動する場合、企画の内容に制約が生じてしまうのも事実。Vlogのような外出ロケ動画や、食べ物を扱う動画、物品の開封動画、ボードゲーム動画、リアルな人間とのコラボ動画など、現実に干渉するような企画を行うときが顕著だろう。

 この制約を乗り越えるために、アバターが実写に混じりこむAR技術を用いたり、自身のアバターに近い着ぐるみやパペットを用意したりしてキャラクター性を保持するVTuberもいるが、これには大変な労力がかかる。

 こうした中で、思い切って自身の手など、、顔以外の実写の姿を映すVTuberが現れ始めた。加えて、普段はバーチャルの姿で活動しつつ、ライブイベントに出演する際は生身で出演するVTuberも、多くはないが出てきている。

 こうした変化を語る上では、発信側だけでなく受け手側——つまり、視聴者側の受容の変化についても触れる必要がある。視聴者側が色々なネット文化(ストリーマー文化や歌い手文化など)の文脈を咀嚼したうえで、VTuber側の表現の意思を尊重するようになり、実写でも「アバターと同じ人物(キャラクター)」だと受け入れられるように変化してきたことは、非常に大きな要素だろう。

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