堀江晶太とクミン100gが考える『VRChat』のクリエイティブ バンドとアートワークが紡ぐ無邪気な創作の世界

メンバーそれぞれのスキルで拡張されたバンドの世界観
――それがワールド制作に繋がっていくと。OFFICE DESTRUCTION GIRLが纏う世界観はもともとバンドが持っていたのでしょうか? それともクミンさんのアートワークによって形作られていったのでしょうか?
クミン100g:元からバンドの世界観があったと思います。cazeさんを中心に、音楽から発せられる色合いや匂いに惹かれてやってきた自分やHONNWAKA88さんが、アートワークや音、見せ方、発信の部分で拡張していったように思います。
堀江晶太:聞いていると、原型の美しさに惹かれて集まった集団、というところがまた面白いバンドですね。メンバーが持ち寄ったもので、みんながしたかったことが形成されていくサイクルが、今までずっと続いてるような印象を受けます。
――個人で取り組んでいることが「切なさ」という単語とリンクしてることが多いのかなとも思いました。HONNWAKA88さんの曲も、「放課後の帰り道」のような切なさが表現されてる曲が多いですし、それがバンドにもとからあった要素とマッチしているようにも感じます。
堀江晶太:元々取り組んでいた技術やジャンルはバラバラだけど、根底に持っていた「何に美しさを感じるか」はリンクしていそうですよね。そして、ルーツがバラバラだからこそ、互いにできないことを持ち寄って、もっといろんなことが実現していくところが、このバンドの編成だと感じます。そもそも、「アートワーク担当」という形でメンバーがいるのもすごく面白い。
クミン100g:ああ確かに。それはよく言われますね。
堀江晶太:もちろんイラストレーターがいるバンドはありますが、リアルでは「いつ、何をする人」かがちょっとわかりにくい。『VRChat』ならば、そのロールは「異なる角度からバンドを表現する人」として自然に確立できますよね。音楽集団に面白いスパイスが一つ加わったバンドが、OFFICE DESTRUCTION GIRLなのかなと。
――堀江さんは、OFFICE DESTRUCTION GIRLに対して自身の活動、特にPENGUIN RESEARCHとのシンパシーを感じるところはありますか?
堀江晶太:一緒だなと思うことと、羨ましいなって思うことが、両方あります。
一緒だなと思うのは、長く取り組んでいく中で、「美しいな」「面白いな」というような、“琴線に触れるところ”が一致する瞬間があるところです。バンドはもちろん、一緒に楽曲を作るアーティストやディレクター、MVやイラストを作ってくれる人とも、そうした共感が起きた時には未だに「やっぱり、これいいよね」と思えます。僕にとって、そうした瞬間が生まれることはものづくりに必要な要素なのだなと思います。
そして、これはメジャーでも、インディーズでも、インターネットシーンでも同じです。そう感じられる人が集まって生み出し続けるモチベーションは、傍から見ていても良いなと思いますし、シンパシーを感じますね。
一方で、羨ましいなと思うのは、レコーディングからミックス、ライブまで、多岐にわたる活動を家にいながら取り組めていることですね。OFFICE DESTRUCTION GIRLのメンバーは全員社会人だと聞いていますが、ゆえに毎日ずっとバンドにリソースを費やすことは難しいはずです。『VRChat』ならではの、ライフスタイルの隙間で本格的に物作りに向き合い、遠隔でリハをやれる環境は羨ましいですね。僕自身も家が好きなので。
それから先ほどクミンさんがおっしゃっていましたが、OFFICE DESTRUCTION GIRLの初期メンバー3人は、昔いっしょにバンドをしていたんですよね。
「羨ましい」とは少し違いますが、一度はバンド活動を終えて、それぞれが別の道を歩んでいったあとに、また集まって、新しい“ワクワクすること”に取り組めているのは、いち音楽人としてものすごく魅力的だなと思います。
――長く活動してるバンドであれば一度休止・解散を挟むことだってありますし、それが10年後くらいに再び集まるということもあります。そうしたリユニオンが、物理的制約が取り払われることでよりやりやすいのは素晴らしいことですね。
堀江晶太:そう思いますね。ものづくりでなかったなら、ひとつの集団として再集結することもなかったかもしれませんしね。そして、その再始動の場所が『VRChat』だったことも面白いですし、結果的によかったのだろうなとは思っています。それこそ、リアルだったらクミンさんにも出会えていないはずですし、新しい色が加わった“現在のOFFICE DESTRUCTION GIRL”はなかったかもしれない。、その点で、ユーモラスな拡張性を感じています。
――たしかに、ただバンドを再開するだけでは得られなかった表現が得られている点で、VRChatの良さが全面に出ていますね。
堀江晶太:それこそ、僕のメタバース上の友人にも、一度やっていたことを諦めてしまったけれど、もう一回『VRChat』でやってみるんだ、という人が結構いるんですよ。
それは音楽に限らず、接客イベントやクラブイベントなどにも言えて、もともとそういうお仕事をしていたけれど今は辞めている、という人が多くて。でも人とお話ししてもてなすことが好きだから、『VRChat』でイベントキャストをやっている……という人が意外といるんです。
こういうのを見ていると、「もう一度可能性と向き合う場所」から生まれるエネルギーやモチベーションが、僕はめちゃくちゃ好きなんだなと、改めて実感させられますね。クミンさんがそうだったように、今はやっていないけれどもう一回やってみようと思えた人が、思いもよらない可能性に巡り合って結びつく場所として、『VRChat』はすごく面白い空気を纏っていると思います。
<後編へ続く>


























