「娘の同級生と再婚」「親友婚」…意見と意見がぶつかり合う炎上時代に、自分の価値観”をさらけ出す一般女性たちが見れた『ダマってられない女たち』

生き様を追うABEMA『ダマ女』が話題

 SNSの普及により、人々が持つ「多様性」は可視化しやすい時代となった。しかし、インターネットとリアルの生活の間には、まだまだ大きな溝がある。匿名性の高いSNSでは声を上げることができても、自身の個性や価値観について、面と向かって他人に本心を伝えられる人は、一体どのくらいいるのだろうか。

 声を上げるのが怖いと感じるのは、人から非難されるのが怖いからだ。自分が善かれと思って下した決断を、誰かに否定されるのは辛いかもしれない。それでも、日本に多様性を理解せんとする波が来ている以上、私たちに残された選択肢は声を上げずに耐えるか、避難の声が上がったとしても声を上げるか、のどちらかしかない。

 ABEMAで配信中のドキュメントバラエティ番組『ダマってられない女たち season2』(以下、『ダマ女』)は、そんな生きづらい時代に生まれた私たちに、意思を伝える勇気を与えてくれる。

 スタジオではMEGUMI、剛力彩芽、ヒコロヒーという、それぞれタイプの異なる女性MCを据え、女性たちの生きざまを描いたドキュメンタリー取材から「人生」について語り合う。取材は、女性芸能人や一般人への密着形式にて行われる。

 取材を受ける一般人女性たちは、波乱万丈な人生を送ってきた人ばかりだ。娘の同級生と再婚した50代の女性や、何をしても目立ってしまうという、バストサイズMカップを超える「ビッグカップ」の女性たち。若者が結婚しない、と叫ばれる時代に、異なるジェンダー同士で“親友婚”したカップル……。

 どの女性も、日常生活の中で様々な人からの「お気持ち」を受け止めてきた人と言える。それでも、ネット番組に顔を出して出演し、自分の本当の気持ちを語る彼女たちには、自分の人生を自分で肯定しようという、強い意思が感じられる。

「自身を否定される言葉」を受けても、自分の選択を信じた女性

 #2に登場した一般人女性のみどりさんは、54歳にして娘の同級生である、21歳下の男性と再婚した。年齢を感じさせない女性らしさを感じさせるみどりさんだが、実際に彼との交際をスタートする時には、親友からも母親からも「猛反対」を受けたという。「娘の同級生と結婚するなんて、いったい周囲からどう思われるのか」、と。しかしみどりさん自身、そんなことは交際前から悩んでいたことだ。

 夫であるイサムさんの誠実さもあって、2人の交際はスムーズに進んでいき、周囲からは反対されながらも、2人は結婚前に新居を構えた。そんな2人の真剣さに、周囲が根負けしていったのだという。

 しかし、信頼している人々から交際を反対されても、自分の信じたパートナーと歩んでいくことを決めたのは、みどりさん自身だ。どんな逆風に晒されたとしても、本人たちが幸せを体現していては、周りも口を紡ぐしかないのかもしれない。反対意見に負け、交際を解消していたならば、現在のみどりさんが送っている幸せな暮らしは、もやになって消えていたはずの未来だ。

 どんなことを言われても「自分らしくある」強さと、周囲の心配も「否定しない」優しさで、逆風を乗り切ったみどりさんの選択には、女性として勇気づけられる部分も多い。結婚は「自分1人で決めていいものではない」という意見も未だにあるが、周囲を納得させていく様子も含めて、強い気持ちが感じられた。

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「結婚」という言葉の持つ固定概念を越えた愛を体現する女性

 #4で登場した「異なるジェンダー同士の親友婚」として夫婦になった2人は、番組登場前から結婚生活について発信していたインフルエンサーだ。夫である江崎びすこさんはゲイセクシュアルを公言しており、自らは「結婚という選択」を諦めていたという。

 恋愛感情はないものの、親友として2人で支え合いながら生きる決意をし、妻であるめろんてゃさんと結婚。親友を一生守ることに生きる喜びを感じ、互いを精神的支柱として愛している2人を見ていると、結婚は「恋愛感情があるもの同士がするもの」という固定概念が打ち砕かれる。結婚には必ずしも恋愛感情が必要とは限らないことが分かるはずだ。

 そして何よりもスタジオを驚かせたのは、めろんてゃさんの実の父が、2人の結婚を心から応援していたということだ。恋愛感情があるもの同士で結婚しても、関係にひびが入ることがあること、結婚には様々な形があることを受容し「今ある絆を大切にしてくれれば」と語った。自分とは違う誰かの価値観を受け入れることができることも、強さだ。人と自分の価値観が違うことを当たり前と思えれば、声を上げた時の周囲との衝突も、怖いものではなくなるのかもしれない。

 反対に、#4の後半に登場したレズビアンカップルは、過去に「あなたと付き合っているとうちの子がレズビアンだと思われてしまうから別れて」と、元恋人であった女性の母に言われたことがあるという。それでも「自分自身」を否定しなかった彼女は、現在東京都の「同性パートナーシップ制度」を利用して、愛する人と結婚した。自分らしい生き方を肯定しているだけで、周囲から強い否定を受けることはある。ただ、重要なのはその逆風を受けても「自分がどうあるか」なのだと気付かされた。

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体型のコンプレックスを受け入れ、自分の居場所を見つけた女性

 #3には、Mカップ、Pカップというかなり大きめなバストサイズの一般人女性が2人登場した。胸の大きさは、一般的に「大きい方がいい」という声もあるが、2人の女性の過去を聞くと「人と違うことの苦悩」を長年抱えてきていることが分かる。

 体型のコンプレックスは人によって異なるが、2人の女性は日常生活での不自由を感じつつ も、自分の居場所を見つけることができていた。学生時代のからかいや、好きな服が着れない悲しさ。実際に本人から聞いてみなければ、想像もつかないような不便もたくさんあった。それでも2人とも「これが自分」と受け入れているように見えたのも、印象的だった。

 また奇しくも、2人ともプラスサイズをメインで取り扱うアパレルショップを愛用。体型にはどうしても各国に“平均的な標準”が存在し、多くのショップは「数が生産できるから」というビジネス的視点のもと、標準サイズの商品を多く取り扱うわけだが……マイノリティな個性を抱える人にとっては、このような企業の存在も心の支えになっている。

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なぜ彼女たちは「顔を出して発信」できるのか

 『ダマ女』に出演する一般人女性たちには、一つの共通点がある。自分の存在や、選択を悔いていないからこそ、ドキュメンタリー番組の取材を受けているのだということだ。

 平成後期に生まれた多様性を重視する価値観。しかし、SNSとネットが発展しすぎた弊害として、誰もが自分の意見を主張しやすくなった結果、インターネットでは毎日、毎秒意見がぶつかり合い、炎上している。意見を語れば否定されるリスクは高まっており、平成初期以降とは違った理由で、自分をさらけ出すことは難しくなってきているようにも感じる。

 そんな時代に、自分の価値観をありのまま話すことは、とても勇気がいることだろう。だがその一方で、彼女たちの表情は非常に爽やかだ。現代は意見がぶつかりやすい時代ではあるが、意見が「言えない」時代ではなくなった。自分の価値観を人に話せるということは、自分を肯定していなければできないことだ。『ダマ女』に出演する女性たちは、だからこそ強いのだ。

 誰かの反対意見を怖がっているうちは、声を上げずに耐えるしかない。しかし、そのうちに自分が自分を信じられなくなっていく。自分が自分を信じてあげられなければ、誰が私たちを肯定してくれるというのだろうか……そう言わんばかりに、彼女たちは自分の人生と選択を、ありのまま受け入れている。

 自身のコンプレックスも、マイノリティな価値観も、恥ずかしいと思う必要はない。そんな意思の強さを、出演する一般人女性たちの目から、言葉から感じさせてくれる『ダマってられない女たち season2』。自分の人生や選択に自信が持てない時には、彼女たちから元気と勇気を分けてもらおう。

ABEMA『ダマってられない女たち season2』

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