ゲームの元ネタを巡る旅 第24回
「ブロック崩し」はどこから来たのか? 『Breakout』から『BALL x PIT』までを追いかける
多種多様な販売形態の登場により、構造や文脈が複雑化しながら、より多くのユーザーを楽しませるようになってきたデジタルゲーム。本連載は、そんなゲームの下地になった作品・伝承・神話・出来事などを追いかけ、多角的な視点からゲームを掘り下げようという企画だ。
企画の性質上、ゲームのストーリーや設定に関するネタバレが登場する可能性があるので、その点はご留意願いたい。
今回は「ブロック崩し」の歴史をまとめてみた。
初めに登場するのはやはりAtari社だ。彼らは世界で初めてヒットしたビデオゲームとなる『Pong』(1972年)に続くヒット作として「パドル+ボール」という構成を一人用ゲームにする構想があった。そこで生まれたのが『Breakout』(1976年)だ。
本作の時点で、プレイヤーは横移動するパドルを操作し、ボールを跳ね返して画面上部のブロックを破壊するというルールや、ブロックが消えるとゲームスピードが上がっていくというギミックが採用されており、ブロック崩しの原型はほとんど完成していると言ってもいいだろう。
『Breakout』のコンセプトはAtariの創設者であるノーラン・ブッシュネルが考えたものだが、開発には多くの人間が携わっている。たとえば、のちにAppleを創業することになるスティーブ・ウォズニアックとスティーブ・ジョブズだ。特にウォズニアックはゲームに使用するチップを大幅に削減し、コストダウンさせたことで有名である。
そしてその2年後には、ナムコ初のオリジナルビデオゲームである『ジービー』が発売される。発売までの経緯としては『Breakout』を輸入したものの模倣品ばかりが目立ってしまったことや、その模倣品たちや『スペースインベーダー』のヒットによって喫茶店などにもアーケードゲーム筐体が置かれるようになったことなどが挙げられる。
ピンボールとブロック崩しの要素を融合した本作は、一定の評価を得られたものの、大ヒットとまでは行かなかったが、ナムコがオリジナルビデオゲームを展開するきっかけとなった作品である。
そして80年代。ブロック崩しのブームは本格的なものになっていき、大量のクローンが作り出されていった。そのなかでもタイトーが1986年に出した『Arkanoid』は注目すべきタイトルである。
多様なステージ構成、リッチな世界観演出、パワーアップ要素など、数多くのフィーチャーを導入した本作は、第二次ブロック崩しブームの火付け役となった。
1990年代に入ると、『Mega Ball』(1991年)や『カービィのブロックボール』(1995年)などのタイトルが登場するが、ブームは落ち着きを見せていく。『Mega Ball』をPC向けのシェアウェアソフトとして移植した『DX-Ball』(1996年)など、アーケードや家庭用ゲーム機の主役の座からは徐々に降りていくこととなった。
2000年代に差し掛かると、PCブラウザ向けゲーム(JavaScriptやFlashなど)が流行し、数多くのブロック崩しが生まれた。その背景にはウェブ上で動くJavaアプレットを使用した「爆裂ブロック崩し」という脱衣ブロック崩しの存在が重要である。当時は自分のサイトを検索エンジンに登録し、公開しているイラストを見てもらうという文化が主流であり、その延長線でブロック崩しなどのゲームを置いておくことが多かったのだ。
これらの文化はブログやSNSの台頭によって過去のものになったうえに、多くのFlashゲームがサポート終了によって起動すらできなくなってしまった。筆者はドンピシャ世代だっただけに、寂しい気持ちもある。
現在では、Steamなどのプラットフォームが隆盛していることもあり、すでにある特定のジャンルのクローンや亜流、独自の解釈を加えた新作が生まれ続けているが、ブロック崩しも例外ではない。筆者が最近ビビッと来たタイトルをひとつ取り上げて本稿を閉じよう。
『BALL x PIT』はブロック崩しとローグライトを掛け合わせたタイトルだ。プレイヤーはおなじみの縦型画面で、自機を操作し、自動で射出される弾で並みいる敵を“壊して”いく。画面は少しずつスクロールし、敵が底までついてしまうか、攻撃を受けてしまったらダメージになる。そういう意味では、弾幕シューティングや『スペースインベーダー』の要素も混じっている。
加えて、昨今流行りの『Vampire Survivors』のように、シナジーのあるアップグレードを取得すれば、一回の射出でとんでもないダメージを叩き出すことも可能だ。画面は派手になっていき、何も考えずにボーッと遊べるが、ほどよく技術介入もあるというなんとも理想的なローグライトである(申し訳程度にシティビルダーや放置要素もあるぞ)。
一見してどれも似たようなゲームに見えなくもないが、実は現代までに多種多様なブロック崩しが生まれてきた。これからもさまざまなジャンルやIPと合流することで、きっとさらなる進化が起きることだろう。“ブレイク”スルーはお手の物だろうから。
参考
・Atari Game History 02.11.2022 NEW INSIGHT INTO BREAKOUT’S ORIGINS
https://atari.com/blogs/atari/new-insight-into-breakout-s-origins
・Hero Concept A Brief History of Brick Breaker Video Games
https://www.heroconcept.com/a-brief-history-of-brick-breaker-video-games