のん、父のために復讐するダークヒーローを怪演 『MISS KING / ミス・キング』1話
のんが主演を務めるABEMAオリジナルドラマ『MISS KING / ミス・キング』が、9月29日の配信開始から好調なスタートを切っている。ABEMAのドラマランキングで1位、さらに国内だけでなく世界配信もされているNetflixでは「今日のシリーズTOP10(日本)」にて2位を記録し、香港、マレーシア、ナイジェリア、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾といった8つの国と地域でランクインを果たしたのだ。
本作は、天才棋士の父・結城彰一(中村獅童)に捨てられた国見飛鳥(のん)が将棋を通じて自らの人生を取り戻す物語。のんにとって、これまでで最も不幸な役どころであり、今まで見せたことのないダークヒーローを演じていることが配信前から話題を呼んでいた。
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ドラマの始まりは、汚れた公衆トイレ。荒い息遣いの飛鳥が洗面台に嘔吐し、鼻血をたらし、刃物を握った震える手に血が滴り落ちる――。衝撃的な幕開けだ。そして、飛鳥が向かったのは、鳳凰戦最終局。彰一にとって、タイトル通算100期がかかった運命の一局の場で、観衆が固唾を呑む一方、飛鳥は彰一を鬼気迫る表情で睨みつけていた。そこに込められているのは復讐心。この第1話では、なぜ飛鳥が彰一に憎悪を抱き、棋士として彰一を倒すことを目指していくのかが描かれる。
その背景にあるのが、飛鳥の母・桂子(奥貫薫)の存在だ。スキルス胃がんとなってしまった桂子を、清掃バイトをしながら必死に看病している飛鳥。病院の屋上で桂子は、彰一を含めた家族3人で行ったファミレスを懐古しながら、「会いたいな。だって家族じゃない」とつぶやく。すでに桂子と離婚している彰一は、新たな妻で将棋連盟の専務でもある香(山口紗弥加)、息子で棋士の龍也(森愁斗)と第2の家庭を築いている。それでも桂子は彰一が飛鳥と自分を今でも家族として思ってくれていると信じていた。しかし、その思いを踏みにじるようにして、彰一は自伝『THE END』に、家族として香と龍也の名前を挙げ、桂子と飛鳥には一切触れていなかった。
母の死後、飛鳥はそのことを知り、桂子が最期に遺した「飛鳥は私みたいにならないで。自由に生きて」という言葉、さらに彰一がワイドショーのインタビューで自身の原動力として話していた「やはり、家族ですかね」という返答を思い出し憤る。それは「なんでこんなやつに」という慟哭へと変わっていく。
復讐心を燃やし殺気立つ飛鳥を止めに入るのが、後に“共犯者”として飛鳥とバディを組むことになる元棋士の藤堂成悟(藤木直人)。彼も彰一への殺意を秘めていた。けれど、カリスマと崇められている彰一を今、殺害しても神格化され、人々の中で永遠に生きてしまう。真の意味で殺すただ一つの方法、それが将棋で打ち負かすこと。「あんなやつカリスマなんかじゃない。ただのクソ野郎だ」と叫び、飛鳥が棋譜並べの盤面に打ったのは、彰一と同じ手。それは飛鳥が彰一を“殺せる”という棋士としての才能の片鱗だった。
第1話の回想では、将棋教室で着実に力をつけていく幼き飛鳥と彰一が対局する様子は一度もなく、それは本作の最終局面で描かれるということだろう。また、これから楽しみなのは、のんによる飛鳥としての演技の変化。インタビューで「飛鳥は将棋を始めると、それまで抑えつけられていたポジティブな部分が表れてくるんです。最初と最後では飛鳥はまったく違った表情をしているので、そのグラデーションのきっかけを考えるのが難しかったですね」と答えており、それが全8話の中で見えてくるはずだ。飛鳥にとっての、“クソみたいな世界”を変える物語が始まった。
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