問われる『LoL』日本チームの競争力、誕生した新王者「QT DIG∞」 『LJL 2025 Grand Final』の熱戦を振り返る
王者の誇りか、挑戦者の意地か 両雄が相まみえる
試合前、決勝戦の開催地である高田馬場、そして各チームのホームである東京と福岡と思われる場所で撮影されたティザームービーが流れ、各々の思いが伝えられる。RC・Recap選手の「日本人MID」、QTD・hetel 選手の「日本人BOT DUO」への自負心は、世界における日本チームの競争力が問われる中で、より心に響く内容だった。
いつもはWEBカメラ越しでしか見られなかった選手たちが、目の前で堂々と入場するシーンも感慨深い。一人一人が整列しながら見せるポーズは皆自信に満ちていて、レギュラー・シーズンからいわゆる“カメラ芸”を見せてきたQTDの選手、中でもWashidai選手によるカ=サンテのモノマネを生で見れたのも良い体験だ。5人が並んだ際、RCは揃って指で「1」を表すポーズを、QTDは指で「Q・T・D・I・G」を模したポーズを取っており、それぞれの個性が表れる場面だった。
また『LJL』のオフラインイベントならではのコスプレイヤーたちはラウンド・パーソンとして各ゲームの開始を盛り上げてくれた。現場に広がる深い音圧はサモナーズ・リフトの臨場感を客席と共有するようであった。実況・解説は Jaeger & Recruit。GAME1の火蓋が切って落とされる。
GAME 1
まずドラフトでは、パッチ25.17以降『LPL』を中心に注目されているキヤナ(ジャングル)がRC側から早速登場。RCがオリアナ、コーキなどレーン戦の強さを意識する反面、QTD側は集団戦に強いウーコン、ガリオ、ランブルに加え、ここぞのアルティメット(ULT)が輝くカイ=サと、状況に変数を与えるポッピーを抑えた。
序盤、RC側がレーン有利を掴む中、最初のドラゴン戦では、QTD・hetel選手のポッピーがチームから孤立した位置にいるのを発見したRCが襲いかかる。しかしRC側の仕掛けを見てすぐに反転。QTDのガリオとランブルがアルティメットを放ち、3キルを獲得、最序盤の流れを掴んだ。
その後は再び一進一退の攻防が続く。次々と登場するオブジェクト周りで集団戦が繰り広げられ、ゴールド差が激しく入れ替わって状況がコロコロ変わる。
決め手となったのは、30分以降の集団戦。34分頃にQTDがACEで大きなリードを得ると、その後バロンを獲得し、さらに再度ACEを決めた。これらの集団戦はRC側(特にForest選手のキヤナ)のエンゲージから始まることが多かったが、QTD・Washidai選手のランブルとDICE選手のガリオによるカバーが間に合い、ADCであるYuhiのキャリー力で状況を逆転させる構図が繰り返された。
QTDがゲームを決める直前、ミッドのインヒビターが復活してネクサスを殴れなくなるというハプニングもあったが、Washidai選手のランブルがしっかりとテレポートしてネクサスを破壊し切って勝利を収める。この極限状態で起こるハプニングが、両チームの実力が拮抗していることを象徴する場面のように思えた。
GAME 2
GAME2のドラフトでは、QTDがトップレーンで使われることの多いアンベッサをミッドレーンでピック、さらにトップレーンではカ=サンテをピックし、相手の得意チャンプを取り上げる形に。フィアレスドラフトならではの戦術と言えよう。
GAME 2序盤は、GAME 1同様にRC側がレーン有利な立ち上がり。ボットレーンでファースト・ブラッドを獲得すると、その後もドラゴン前の集団戦で相手を誘い込んでキル、そのままドラゴンの獲得に繋げた。
それ以降も17分頃の集団戦でRC・Recap選手のタリヤが活躍。ACEを獲得して3つ目のドラゴン獲得に繋げた。その後、何度か逆転されたりし返したりが続くも、全体としてはRC有利のまま試合は進行した。
転機が訪れたのは29分頃。ドラゴン・ソウルを巡る集団戦でRCがマウンテン・ソウルを獲得するものの、1-3キル交換と共に流れをQTD側に奪われる。そして34分頃にRC・Forest選手のヴァイによるエンゲージが相手陣形に飲み込まれてデスし、その勢いで今度はQTD 側がバロンを獲得。エルダー・ドラゴンを巡る集団戦でも5-0の完璧なACEを記録。そのままゲームを決める逆転劇を披露した。
勝因としては、マウンテン・ソウルを獲得したRC側に対してQTD・Washidai選手のカ=サンテが驚異的な粘りを見せ、QTD・Yuhi選手のシヴィアがシールドを剥がして安定したダメージを出し続けたところか。自身を象徴するチャンピオンで活躍したWashidai選手に拍手を送りたい。
GAME 3
GAME3は、序盤からガンクやオブジェクトを巡っての戦闘が続き、シーソーゲームとなった。13分、ボット・レーンでQTD・DICEのビクターがタワーダイブに対して逆に3キルを決める。以降も集団戦を通じて有利不利がコロコロと入れ替わる、RC・Recap選手のアーリとRC・Forest選手のシン・ジャオ、RC・Kitatu選手のエイトロックスがチームをけん引する。
特に33分の集団戦が圧巻で、RC・Kinatu選手のエイトロックスがブッシュから奇襲してスタートすると、RC・Samver選手のザヤがダメージを出し続けて有利状況に。QTD・Yuhi選手のゼリが強気にフラッシュインしてくるが、そこにRC・Recap選手がアーリのチャームを合わせて戦闘を制し、バロンとアタカンの両方を獲得。その勢いで35分頃にエルダー・ドラゴンのラッシュを始めると、止めにくるQTDの選手らを見事に返り討ち。5-0のACEを決めてそのままゲームに勝利した。集団戦での冴えで魅せた勝利からは、今年『LJL』のトップを走り続けたRCの威厳すら感じられた。
GAME 4
ドラフトにおいて、QTDはサイドレーンプッシュに強いヨリック/ジグスと機動性が高いライズ/リーシンをピック。RCは安定性の高いサイオンとジンに、オーロラ/ヴィエゴのキャリーチャンピオンをピックした。
序盤はQTD側が優勢。4分頃にQTD・VAN選手のガンクが決まると、6分頃にボットレーン側で発生した少数戦も制して一気にスノーボール体制へ。さらにサイドレーンのプッシュ力を活かしてタワー破壊やオブジェクト獲得に繋げ、有利をどんどんと広げていく。28分頃にはQTD・Washidai選手のヨリックがジャングルから奇襲してきたRC・Forest選手の攻撃を見事に交わして返り討ちにすると、サイドレーンの圧力がさらに増していく。
そのままQTDがバロンやアタカン、ケミテック・ソウルなどの大型バフをすべて獲得すると、詰め将棋のように試合を決めきり、見事『LJL 2025』年間王者の座に輝いた。