最近「刀で敵を切っていない」ゲーマーへ 思い通りに忍者として暴れ回れる『SHINOBI 復讐の斬撃』の快感
『SHINOBI 復讐の斬撃』がめっぽう面白い。まさに操作すること自体というか、「キャラクターを動かして敵を倒す」ことの快感に特化したゲームになっている。「最近、刀で敵を切ってないな~」というゲーマーの方は、ぜひとも試していただきたいタイトルだ。
一応書いておくと、このゲームはセガの忍者アクションゲーム『忍 -SHINOBI-』シリーズに連なる作品である。主人公は1987年の初代『忍』と同じく、忍術のエキスパートであるジョー・ムサシ。世界観はコテコテのサイバーパンクで、巨大な資金を持つ私設武装組織「ENEコーポレーション」に忍軍団「朧一族」の村を焼かれたジョー・ムサシが、ENEコーポレーションとその首領であるルーズ卿への復讐に立ち上がるというストーリーだ。ネオンきらめく"ザイバツ"の戦闘ヘリや重武装のサイボーグやキモいバイオ兵器が飛び交うサイバーパンク世界と、謎のパワーを持つ古の忍者の食い合わせは、牛丼と紅生姜、ピザとビール、富士山と月見草並みの好相性。世界観とストーリーを「あ、こういう感じのやつね」と即座に飲み込める喉越しのよさが素晴らしい。
実際のところ、このゲームの売りは込み入ったストーリーではない。とにかく「ジョー・ムサシを操作して、バッサバッサと敵を切り刻みまくる」という体験そのものの気持ちよさ。これが『SHINOBI 復讐の斬撃』のセールスポイントである。
ジョー・ムサシは忍者なので、メインの武器は背中に背負った刀である。攻撃時にはこの刀を振り回しすのだが、その攻撃のモーションがまず気持ちいい。2Dの横スクロールアクションゲームなので立体的なモデルが動くわけではなく、攻撃モーションと言っても基本は「絵」というか「アニメ」である。しかしそのアニメ自体の精度が抜群。刀を振る動作ひとつとっても、弱攻撃ならばノーモーションですばやく刀を振るい、強攻撃ならばグッと腰を落として一瞬タメたのちに大振りのモーションでジョー・ムサシが動く。日本刀の刃が動いた軌跡にはエフェクトがビシッと入り、それが敵にヒットすればこれまた派手なモーションでダメージが入る。タイミングよくポンポンとボタンを押していくと滑らかかつド派手な動きで敵が切り刻まれていき、脳が勝手に気持ちよくなってしまう。この快感を味わいたいがために「は、早く敵が出てこねえかなあ」「切りてえなあ……敵を……」と、忍者というより辻斬りのような心境になること請け合いだ。
移動時の動きも大変気持ちいい。前傾姿勢で素早く脚を前後させて走るムサシ。Rボタンを押せば残像を残して高速移動し、このボタンを押せば多少の障害物ならパルクールのように飛び越えたり転がって避けたりできる。左右の壁を飛び移って高いところに登ることもできるし、手を引っ掛けることさえできれば段差の上に体をヒョイと引き上げることもできる。全ての動きが滑らかでシームレスにつながるので、タイミングよくジャンプしたり高速移動したりして障害物に詰まらずに動ければ、「おお、おれってすごい忍者なんじゃないか……」という気分になれる。電車に乗っている時、窓の外の風景に忍者を走らせている人はたくさんいると思うが(走らせますよね?)、あの電車から見える忍者の滑らかでスピーディーな動きを自分で操作して再現できるのである。横スクロールなのもあって、気分は本当に「電車の忍者」だ。
この快感、個人的には「作画の出来がものすごくいい戦闘シーン」を見ている時に近い。ギュッとタメを効かせた後に高速かつ重量を感じさせるモーションが決まり、そこにタイミングよくこれまた派手なエフェクトとコントローラーの振動がバチバチッとハマる感じは、往年の金田伊功作画のような滑らかさとテンポ感だ。それをただ単に眺めるだけでなく、自分で操作してバッチリキメることができるのだから、これが気持ちよくないはずがない。これは自分で操作しないとわからないタイプの快感だろうし、おそらくプレイ動画を見ているだけでは味わえないはずだ。
というわけで、本作をプレイすることで改めて「2Dアクションゲームってこんなに面白かったんだ……!」という気持ちになれた。似たようなタイトルで言うと、『SANABI』とかが気持ちよかった人ならば絶対に気に入る作品だと思う(どっちもサイバーパンクっぽい世界観ですし……)。移動上の難所の中には単純に性格が悪くて通過しづらいものがあり、最低難易度にしても何度も詰まった箇所もあったが、その難しさを乗り越えてでも「あの……敵をバッサバッサと切り倒す快感をもう一度味わいたい……」という気持ちになれる良作。「最近、気持ちいいゲームやってないな~」という人には、ぜひともおすすめしたい一作である。