プラズマクラスター技術で『VALORANT』の平均ADRが18ポイントも上がる!? 最新の研究結果&取材からわかった驚きの事実とは
シャープ株式会社(以下、シャープ)は9月3日、福岡・esports Challenger’s Parkにて株式会社戦国 代表取締役 西田圭氏、西日本工業大学 工学部准教授 古門良亮氏とともに記者発表会を行い、“プラズマクラスターがeスポーツに及ぼす好影響”についての調査結果を明らかにした。
この調査結果が実に面白く、eスポーツもゲームもテクノロジーもガジェットも扱うリアルサウンドテックとして取り上げないわけにはいかない、という内容だったため、現地に赴いての取材を行った。発表会のレポートのほか、キーパーソンたちへのインタビューを通して、今回の取り組みについて深く掘り下げた内容をお届けしたい。
プラズマクラスター技術が持つ“生き物へのポジティブな効果”を「eスポーツ」で検証
まず、発表会でシャープ株式会社のSmart Appliances & Solutions事業本部 プラズマクラスター・ヘルスケア事業部 事業部長 兼 チーフプラズマクラスターエバンジェリストの岡嶋弘昌氏と、同社の船守宏和氏から語られたのは、シャープと「プラズマクラスター技術」の歴史だ。同社は25年以上にわたり、自然界にあるものと同じ正(+)イオンと負(ー)イオンを人工的に作り出し、空気を浄化するプラズマクラスターイオンを開発・進化させてきた。これまでにはウイルスやカビ、細菌の抑制、有害物質やアレルゲンの低減など、空気浄化に関する46件もの効果を実証してきたが、近年では「空間」の空気をきれいにするだけでなく、「そこに居る人」や「生き物」にも良い効果をもたらす効果が発表されている。
人へのポジティブな効果を検証するなかで、スポーツ選手などのアスリートのパフォーマンスが向上したという結果があり、それを受けて次に着目したのが「eスポーツ」の分野だった。
今回は西日本工業大学工学部総合システム工学科の古門良亮准教授、九州産業大学人間科学部スポーツ健康学科の萩原悟一教授、そして株式会社戦国が運営するプロeスポーツチーム「QT DIG∞」の協力を得て、シューティングゲーム『VALORANT』のプロ選手を対象としたパフォーマンス向上効果の検証を実施した。
この検証では、QT DIG∞に所属するプロ選手延べ10名が参加。選手は「送風のみ」と「プラズマクラスターイオンあり」の2つの条件下で公式大会に向けた練習試合(1日3試合、プロチーム相手に24ラウンド固定)を行い、その後のスタッツを分析。さらに実験終了後にはアンケートに回答してもらった。この「2処置2期クロスオーバー試験」という手法により、同選手が両条件を体験することで、公平な環境下での検証が実現された。
なお、この試験では選手にはその時の試験条件が送風条件なのかプラズマクラスターイオン条件なのかを知らせずに試験をしているため、選手側の期待や思い込みによるプラセボ効果を排除した客観的なデータが取得できているといえる。
能力が軒並み向上→特にIGLのスタッツが急上昇した理由は?
結果として「平均ADR(Average Damage per Round)」が18ポイント上昇し122→140に。古門准教授は「18ポイントの上昇は、試合を決める1ラウンドの取得を左右するほどの大きなアドバンテージ」と評価した。また「K/D(Kill/Death Ratio)」は0.88から1.05へと向上。1.0以上は「倒された数より多くの相手を倒していること」を示し、エース級のプレイヤーが1.2~1.3ほどであるため、その領域に近づける結果となった。
また、客観的な数値の裏付けに加え、アンケートによる主観評価でも、プラズマクラスターイオンありの条件で被験者が能力の向上を実感している傾向が確認された。特に「集中力」「直感力」「視野」といった認知に関わる項目で大きな上昇が見られ、古門准教授は「プラズマクラスターイオンの効果は、ゲーム内での立ち回りや状況判断スキル(マクロ)に効果的である」と推察した。特に、試合中に指示を出し、より多くの認知リソースを使用する選手であるIGL(インゲームリーダー)のスタッツが顕著に上昇したことも特筆すべき点だろう。
この驚くべき結果をさらに掘り下げるべく、岡嶋氏・古門氏・西田氏へ追加でインタビュー。今回の検証の背景から今後の展望などを聞いた。