『明末:ウツロノハネ』プレイレポート――病に侵された美しき女侠客が戦う、良くも悪くもオーソドックスなソウルライク

 『明末:ウツロノハネ』をプレイした。

 本作はLeenzeeが開発するソウルライク・アクションRPG。明代末期の古蜀を舞台にした作品であり、戦乱と疫病が蔓延する土地で戦い抜くゲームだ。

 戦闘はシビアで、世界観は暗く、メインストーリーは断片的に語られるという、非常にオーソドックスな作りのソウルライクであった。これまでに多くのソウルライクが登場してきたが、その中でも群を抜いて原点に忠実な作品だと言えるだろう。

 物語の主人公は、無常という名の女侠客。どこかの洞穴で目覚め、謎の声を聞くが、自分のことは思い出せずにいた。

 彼女は「羽化病」という病に侵されており、強大な力を得る代わりに、いずれ化け物へと変身してしまう。羽化病を治す方法を探すため、混沌に満ちた蜀を旅することになる。

 何度も言うが、本作は非常にオーソドックスなソウルライクだ。それ以上でも以下でもなく、看板通りの体験が楽しめる。

 モーションをキャンセルしてコンボをつなげたり、特殊能力を組み合わせてスタイリッシュに戦うゲームではなく、『ダークソウル』三部作のように、攻撃のひとつひとつにどっしりとした感触があり、技に隙がどの程度あるのかを考慮して動かなければならないデザインになっている。片手剣、長刀、槍などいくつか武器種は用意されているが、斧の一部攻撃を除くほぼすべての技に予備動作やフォロースルーの硬直時間が存在する。

 本当に10年以上前の、ソウルライクが流行り出したあたりのゲームデザインであり(今となっては)古き良きアクションRPGの感触だった。

 本作オリジナルの要素としては「須羽」というリソースがある。こちらは羽化病の副作用(むしろ作用というべきか?)であり、無常が敵の攻撃を直前で回避したり、特定の攻撃を当てたりすることでスタックする。

 本作はソウルライクにありがちなMPのような要素がない代わりに、大技や遠距離攻撃、防御バフなどの特殊な行動にほとんどすべてこの須羽が必要になる。しかも、初期状態では1個しか保持できないうえに、上限値が上がるタイミングもほとんどない。

 潤沢なMPで大魔法を浴びせかけるゲームデザインではなく、優位に立つにはまず自らリソースを集めることが必要なので、どんな敵と戦っても多少はヒヤヒヤする作りになっていた。これはかなり面白いシステムと言えるだろう。

 他にも、武器に装着して武器の能力を底上げする「御言葉」や、腕に装着してバフを付与できる「淬羽」、「赤汞の精華」を払うことでレベルアップするスキルツリー兼レベルアップ画面など、色々とオリジナリティを出すために工夫しているが、どれも煩雑でわかりづらいだけで、本質的な仕組みは数多のソウルライクに実装されているステータスアップ画面と同じであり、特段優れているとは思えなかった。

 ストーリーや世界観についても、世に出ているほとんどのソウルライクと大きくは変わらない。奇病が蔓延して狂っていく世界で、数少ない生き残りが半壊したお寺に身を寄せながら救世主を待っている状態だ。

 古蜀が舞台ということもあり、建築物や、キャラクターの言い回しなどは物珍しく、ユニークなゲームを遊んでいる感覚になった。

 ただ、結局のところ、登場する敵は僧侶や盗賊などのベタな連中ばかりだし、道中で読めるテキストはどれもいたずらに露悪的で、ソウルライク系の作品で読んだことがある内容が多かった。アートやクリーチャーデザイン、作中のロアなどのオリジナリティに関しては『黒神話:悟空』には及ばなかったところである。

 しかしながら、ビジュアルは凝っている。

 全体的に黒ずんでいるものの、自然豊かな山奥の古寺や、山賊が身を隠している洞穴など、ロケーションには統一感がありつつバリエーションがあった。『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』を彷彿とさせるものの、それなりに差別化は図れているだろう。

 常に分かれ道があり、ショートカットも多く、マップがないせいで迷うこともあったが、これくらい複雑なほうが探索する意味もあるので、筆者は好みだった。とはいえ、迷わないようにプレイヤー側が介入できる要素がもう少しあっても良かったかもしれない。

 そして、無常のビジュアルも本作の売りである。スラッとした美人である無常は、防具を付け替えると見た目にも反映される。托鉢僧にも、娼婦にも、兵士にもなれるので、装備を集めるモチベーションは高かった。

 とはいえ『Stellar Blade』ほど豊富に用意されているわけでもなく、メニュー画面でじっくりと眺めたり、姿態を存分に見せてくれるようなダイナミックなジャンプモーションもないため、あくまで旅のついでにちょっと気分を変えてくれる程度のものである。色々な衣装を身にまとった美女を目に焼き付けたいという思いで遊ぶと肩透かしを食らうかもしれない。

 ほかにも、メニュー画面が全画面表示の割にゲーム内時間が止まらない(敵に攻撃されるリスクがある)とか、中ボス以上の敵のモーションの途切れ目がわかりづらいとか、いくつか気になる点はあったが、オールドソウルライクが好きなプレイヤーに向けた十数年越しのラブレターだと、とにかくそう感じたゲームだった。

『FF14』×パセラリゾーツ「エオルゼアカフェ」 潮風薫る横浜店で夏真っ盛りなコラボフードにお腹も心も満たされた

『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)のコラボレーションカフェである「ファイナルファンタジー エオルゼアカフェ」に遊…

関連記事