『エルデンリング ナイトレイン』は100時間超の大作アクションRPGをタイムアタックする“タイパ最強のソウルライク”だ
これは狭間の地にエルデの王が現れなかった、別のお話。かの物語が試練と栄光の英雄譚ならば、これは挑戦と非業の群像劇である。
『エルデンリング ナイトレイン』はメーカー公称「協力型サバイバルアクション」だ。大作アクションRPG『エルデンリング』のスピンオフ作で、ジャンルはオンライン・マルチプレイゲーム。スピンオフ元のダークファンタジー世界を流用しつつ、アクション要素・RPG要素を3人パーティのローグライトへ調整した。
そう聞いてプレイを始めると大きく戸惑うことになる。端的に言えば、エルデンリングの推定クリアタイム約100時間で味わう苦痛を40分強に濃縮し3人で背負うゲームだ。発売初日で多くのプレイヤーが不満を表したのも仕方がない。難しすぎるうえに敗北を他責にしやすいのだ。しかし、プレイヤーが生き残った現在ではユニークなプレイ感で好評を博している。
本稿はその「現在のプレイ感」を紹介する。まずはメーカー公式ページの言葉から引用したい。“本作は、他プレイヤーとともに圧倒的なシチュエーションに挑むアクションゲームです。”何に圧倒されるのか。それはタイムアタックめいたゲーム展開だ。
タイムアタックはハードコアゲーマー向けの遊びである。慣れないうちから挑むものではない。当然、始めたてのころは途方に暮れることだろう。しかし、ゲーム展開についていけるようになると快感に変わる。さらなる強敵との死闘を求めてオープンフィールドを駆け抜ける、熱狂めいた戦闘と成長にヤミツキだ。濃厚なゲーム攻略体験を何度も味わえる、今年イチオシの“タイパゲー”だと保証しよう。
最高レベル到達タイムアタック
これから始める人にオススメの遊び方は、外部ツールでボイスチャット(以下、VC)しながらのフレンドマッチである。本作では力を合わせて強大なボスを討伐する。団体行動と連係プレイが大事だ。VCがどれだけ役立つか、気心知れた友だちがどれだけ心強いか、ゲームの流れを通じて説明する。
マッチングが完了すると、パーティの3人は舞台の地リムベルドに降り立つ。ゲームスタートから時間経過で日が沈み、ボス出現位置への移動を促される。夜のボス戦に勝利すれば次の日を迎える。2日目の夜を乗り越えると休憩を挟んで大ボス戦が始まる。大ボスを撃破すればゲーム勝利だ。
勝利から逆算すればゲーム展開が分かりやすい。夜ボスや大ボスを倒すには高いレベルと強い武器を要する。マップに点在する神殿や遺跡には経験値と武器をドロップする強敵が居る。よって、日中はロケーションの強敵をたくさん倒すのが目的だ。みんなで移動し、みんなで殴ろう。VCで声かけすれば道に迷わず、戦いに戸惑わずに済む。
ボスがどれだけ強大だろうとも、あなたと友達の絆に勝るはずはない。そう思っていても、夜ボス・大ボスは想像を上回る強さである。何度も地べたを這うことになろう。次はもっと強力な武器を握り、レベルも上げるぞ。そう思えたならしめたものだ。レベルアップと強い武器を求めてリムベルドを疾走する、この超特急アクションRPGにVCが合わさったとき、友だちと相談しつつゲーム攻略に挑むという希有な体験が生まれるのだ。
以上のプレイ感は、本作のゲーム展開を除けば普通の特徴だ。協力型マルチプレイゲームなのだから友達がいてVCがあれば遊びやすいのは当然である。面白いことに、本作はチャット機能やコミュニティ機能を実装していない。本章で紹介した遊び方は枝葉のひとつなのである。それを用いずとも(やがて)楽しめるから『エルデンリング ナイトレイン』の現在があるのだ。
奇跡のマッチングとめぐり合おう
発売初日で評判の賛否を分けた要因は、フレンドマッチを使わないプレイ、俗称「野良マルチ」にある。本作はVC非搭載かつテキストチャットもない。ゲーム中の意思表示手段はマップや足元に立てるピンだけだ。ゲームの難しさと釣り合わない不親切な仕様で、最初のうちは不快感しか覚えない。だが現在なら、このピン立てこそが本作の魅力だと分かる。ゲームをやり込めば意図を読み取れるようになるからだ。
本作はローグライト様式を採用する。レベル1の初期武器からスタートし、ロケーションの強敵やドロップアイテムには運がかかわる。ソウルライクは死んで覚えるゲームだが、ローグライトは死のシチュエーションが毎回違う。つまり、死んで覚えるのが難しい。
誰か、このゲームの遊び方を教えてくれ。そう願ったところでマッチングの奇跡が起きる。手練れのプレイヤーとめぐり合い、引率してもらえるのだ。そして現在ではその奇跡が頻繁に起きる。なぜ奇跡が起きるのか。その仕組みは大小さまざまあるが、分かりやすいのはマップ構造だ。
マップの形が1種類のみでプレイ回数をこなせば土地勘を得やすい。これを初心とし、ゲーム内図鑑やシングルプレイのストーリーイベントなどでプレイヤーの熟達を促している。ゲーム外情報だがメーカー公式サイトのTips集もそのひとつだ。それらゲーム側の手助けを得て、手練れのプレイヤーは日夜増えている。
見ず知らずのプレイヤーも手を差し伸べてくれる。なぜなら運命共同体だからだ。対等か主従か関係はともかく、ひとつの目的に向けて言葉を介さず団結する。この以心伝心の連係プレイにはVC付きフレンドマッチと違った趣の快さがある。信じてついていける。背中を預けてもいいと思える。自ら引率し道を指し示す。プレイヤーたちが千差万別のパーティプレイを生みだす。
だからこそ、価値がないマッチングが生まれるのでは? そんなことはない。成功・失敗ではなく、挑戦そのものが楽しいのだ。ザコ敵だけと戦っていてはボスに勝てないので、無理して強敵に挑まねばならない。そして知勇も蛮勇も死がオチとなり、プレイヤーたちが共感する「あるある体験」を生みだしていく。さあ行くぞ、鈴玉狩りだ、ああ行くな。そうした、口伝したくなる物語がピン立てひとつから始まるのである。
その群像劇は非業をもって幕を閉じる
『エルデンリング ナイトレイン』はジャンル:ソウルライクにフレッシュな風を吹き込んだ。高難度アクションRPGのタイムアタック、というハードコアゲーマーめいた遊びを3人がかりで挑む。その圧倒的なシチュエーションはまさに100倍濃縮エルデンリングである。
隠さず言うが、ゲーム初勝利にはかなりの時間を要する。だからどうか、そこまでの道のりを楽しんでもらいたい。最初は誰かに付いていき、誰かが殴った敵を叩けばよい。外部ツールVCを併用したフレンドマッチならば、初勝利への道のりを友だちと共有できるだろう。
フレンドマッチを使わないプレイではどうか? 安心してほしい。現在なら手練れのプレイヤーとすぐに会える。もしもパーティの誰もがゲームに慣れていないなら? そのときはそのときだ。運命にあがき死に様を笑う、ダークファンタジーならではのカタルシスに浸ればよい。