『チェンソーマン』監督も唸るその性能。『Wacom Cintiq』“嬉しい進化”だらけの新モデル体験レポート

 ワコムは液晶ペンタブレットの『Wacom Cintiq』シリーズの後継機を2025年6月5日に発表した。2019年以来約6年ぶりの全面刷新となる今回の発表では、『Cintiq 16』と『Cintiq 24』(タッチ機能付きモデル含む)の3モデルがラインアップ、発売は6月26日からとなっている。

 本製品は見た目に分かるレベルの変化だけでなく、“痒いところに手が届く”アップデートがいくつも入っており、使用感が大幅に向上している。アニメ『チェンソーマン』で監督を務め、『Wacom Cintiq』をアニメ制作の現場に導入している中山竜氏も体験会に登壇し、「どんな人でも満足できる」と大絶賛。

 ここでは新製品のスペックや使用感を紹介しつつ、中山氏が現場目線で感じたという“嬉しい進化”もレポートする。

6年ぶりの大幅刷新で薄型&高性能を実現

 今回の新たなCintiqシリーズ最大の特徴は、製品本体の根本的な設計見直しにある。『Wacom Movink』で採用されたフレキシブル基板を大型液晶タブレットにも初めて採用することで、従来比約半分の薄さを実現。同時にファンレス設計も採用し、動作音のない快適な制作環境を提供する。内部パーツの最適化により、表面温度の上昇もしっかり抑制されている。

 また内部のセンサーの改良により応答速度が従来の25ミリ秒から12ミリ秒へと大幅に短縮され、カーソルの追従性が格段に向上した。実際に筆者も体験したがカーソルの遅延は全く感じず、もはや“同時”と言ってもいいほどピタリと追従してくる印象だった。

 そして、既に『Cintiq Pro』シリーズで高い評価を得ている『Wacom Pro Pen 3』が採用された。ペン搭載のサイドスイッチは旧モデルの2つから3つに増加。持ち手とペン先はシャープなデザインになり、まるで鉛筆のような描き心地に。プロ機レベルの性能が手の届きやすい価格帯で味わえるようになった。

フルフラットデザインがもたらす没入感

 デザイン面では、『Cintiq Pro』シリーズを踏襲したフルフラットデザインを採用。ベゼル幅が従来の約半分に狭小化され、より画面に集中できる環境を実現している。特に『Cintiq 24』では、画面サイズが22型から23.8型に拡大されながらも筐体サイズは小さくなり、厚みは約半分になっているという。

 解像度も大幅に向上し、『Cintiq 16』は2560×1600(16:10)、『Cintiq 24』は2560×1440(16:9)の2.5K表示に対応。縦長アスペクト比により作業領域が拡大し、ソフトウェアのUIを表示しながらでも十分な描画領域を確保できる。

 ディスプレイには『Wacom Cintiq』シリーズでは初めてダイレクトボンディング技術を採用し、ペン先と画面の視差を大幅に軽減。さらにアンチグレアガラスの採用により、紙に描くような自然な摩擦感と画面の映り込み軽減を両立している。最大輝度も向上し、より明るく鮮明な表示を実現した。

「あらゆる調整がやりやすくなった」中山竜が語る現場でのメリット

 今回登壇したアニメーション監督の中山氏は、20年近くWacom製品を使い続けており、これまでも『Cintiq 16』を愛用してきたとのこと。今回は新製品を事前に1週間ほど使用してきたようで、その感想が語られた。

 中山氏が今回の新製品で一番テンションが上がったのは「ペンとデザイン」だという。採用された『Pro Pen 3』については「本当に鉛筆と変わらない太さで、めちゃくちゃ軽い。ボタンが3つあるのが大きい」と評価した。普段からマルチモニターで作業をしている中山氏は3つ目のボタンに「マッピング切り替え」を割り当てたようで、それによりマルチモニター環境での作業効率が大幅に向上したという。

 デザイン面では「ベゼルが少なくて、すごくフラット。ボタン類も左右にあることで表面には余計なものが何もなく、スッキリしてて使いやすいし、邪魔にもならない」と、フルフラットデザインの恩恵を実感したようだ。

 接続の簡素化についても高く評価。新製品ではUSB-Cの接続にも対応し、配線をスッキリまとめられるようなデザインになった。中山氏も「専用の三又ケーブルを使わなくてよくなった。USB-Cになったのもいいし、ケーブルを長くしたいなら市販品を使ってもいいし、あらゆる調整がやりやすくなった」と、現場での運用で感じたメリットを語った。

液タブと板タブ、それぞれの価値

 中山氏の発言で興味深かったのは、状況によって液タブと板タブを使い分けていることだった。そこにはアニメーターとして、監督としての特性が表れていた。

 まず液タブは「アニメーター向き」だと語る。「ここ(液タブ)に向かって“描いている”という感覚が強く、“描いてる感”がダイレクトに伝わってくる。そのため、レイアウト・原画と呼ばれる清書の作業など、細かい表現が求められたり、線にこだわりたいような絵の力で勝負する時に最適」と説明。

 一方で板タブは「常にモニターが垂直にあって、前を見た状態で描けるから、姿勢が下向きにならなくて体の疲れが少ない」としたうえで、「一連の絵を“映像”として感じられるのは垂直で見た方。アニメはテレビやモニターに映されるもののため、正面を向いて描く方が“映像を作ってる感覚”で描ける」と、監督ならではの視点も明かした。

中山竜、新『Cintiq』シリーズは「どんな人でも大体満足するのでは」

 今回の新『Cintiq』シリーズは、エントリー向けの『Wacom One』と、プロ向けの『Cintiq Pro』の間を埋める“ちょうどいい”製品として位置づけられている。薄型化・高解像度化・ファンレス設計などの本体進化に加え、既に定評のある『Pro Pen 3』の採用により上位モデルの描き味を実現しながら、価格は抑制。学生からプロフェッショナルまで幅広いユーザーのニーズに応えている。

 中山氏も「どんな人でも大体満足するのでは。アニメーターであれば『Cintiq Pro』までのスペックを必要としない可能性すらある。イラストレーターでも、描き始めだったり、アマチュアだったら全然事足りるレベル」と、製品のコストパフォーマンスの高さを賞賛した。

ユーザーの声をもとに周辺アクセサリーも進化

 周辺アクセサリーも大幅に刷新された。新しいペンスタンドは角度調整が可能で、ディスプレイの角度に合わせてペンを最適な角度で保持できる。背面スタンド『Wacom Adjustable Stand』は、従来ユーザーから指摘されていたぐらつきやノイズの問題を解決し、スムーズで静かな角度調整を実現している。

 接続面では、『Cintiq 16』がUSB-Cケーブル1本での接続に対応。PC側も対応していれば、電源・映像・データをケーブル1本で完結することができる。背面にはケーブルをまとめる留め具も配置し、デスク環境をすっきりと保てる配慮がなされている。

 また、環境への配慮も忘れていない。製品本体にはリサイクルプラスチックを使用し、パッケージもリサイクルしやすいダンボールを採用。印刷にはフレキソ印刷を使用するなど、持続可能な製品作りへの取り組みも見せている。

 さらにWacom ID登録により、CLIP STUDIO PAINT EX(3カ月)、イラストが学べるパルミー(1カ月)、ファイル転送サービスのMASV(3カ月/250GB)の各サービスが無料で利用可能だ。

アマチュアからプロまで魅力的な選択肢に

 今回の新『Cintiq』シリーズは、技術的な進歩だけでなく、ユーザーの創作プロセス全体を見据えた製品作りが印象的だった。『Pro Pen 3』の採用により描き味が格段に向上し、フルフラットデザインによる没入感の向上、そして学習コンテンツとの連携まで、創作者が「次のステップ」に進むための環境が総合的に用意されている。

 価格はそれぞれ『Cintiq 16』が118,800円、『Cintiq 24』が206,800円、『Cintiq 24 touch』が250,800円(いずれもワコムストア価格)。「創作を磨きたい人たちへ、次のステップを」というコンセプト通り、より多くのクリエイターの成長を支える製品として魅力的な選択肢になりそうだ。

これはSNSが楽しくなるスマホだ! 『Galaxy A25 5G』に新搭載のマクロカメラに大興奮した話

Samsungから発売された『Galaxy A25 5G』は、エントリー向けスマホとしてこれ以上ない満足感を与えてくれる。ペット…

関連記事