にじさんじ・石神のぞみに感じる“のびしろ”の正体とは 「Idios」の名付け親となった慧眼と向上心
周囲から愛される“笑いの無限コンボ”
石神のぞみの配信や参加している企画などを見ていると、ノリが良く笑い上戸な一面があり、そこからリスナーや同期・先輩からの支持につながっていることに気づく。
リスナーからのコメントを読みながら、大いに笑い、ツッコみ、ときに話題を大きく広げて、さらに笑いはじめる。こちら側から送ったコメントから端を発し、笑いの無限コンボともいえるような状況をひとりでに生み出してしまう様を見ていると、視聴者もどこかうわ浮いた気持ちにさせられてしまう。
そんな状況だから許されるだろうと、小ボケなコメントも多く投稿され、興に乗った石神がさらに乗っかる、そんな快活な一面からコミュニケーションの循環が生まれやすいのが、石神のぞみの配信の特徴だといえる。
こうした流れもあり、「彼女がいれば沈んだ空気にならない」というイメージや期待感がうまれていく。デビューして数ヶ月後ほど経過した時期からにじさんじ公式番組や企画に呼ばれるようになると、持ち前のノリの良さや笑い上戸なキャラクターで“イジりやすい後輩”ポジションを確立し、同期・鏑木ろことともに先輩メンバーから愛されるタレントとなった。
また先述した運転免許持ちというのが影響し、オフの場面では鏑木や倉持とともに先輩らと交流し、そこから配信上でも先輩とコラボ配信する頻度も多い。こういった経験やつながりがまた周囲に知られ、にじさんじ公式のアウトドア企画に呼ばれるなど、外ロケにもしばしば登場しているようにもなっている。
数年先にデビューした先輩にも臆すること無く堂々と話しかけられるのは、Idiosのなかでも彼女の際立った資質かもしれない。
ここまでは、石神のぞみをさまざまな側面から記してみた。アニメやマンガに詳しいインターネット民であり、ゲームが不得手で、ノリが良くて笑い上戸。その不思議でいびつなパーソナリティとバックボーンを見てみると、尖ったスキルや経験があるとは正直言い難い。
しかし、そんななかで彼女を彼女たらしめる重要な要素は、プロフィールからも伺える「すこし背伸びしがちな一般女性」であることではないだろうか。
壱百満天原サロメが「本当のお嬢様に憧れる一般女性」としてお嬢様を目指すのと同じく、石神も“何者かになろう”とする。“厨二病”めいたプロフィールで見え透いたウソをつくのも、配信中のコメントやコラボ相手の会話に乗じてすこし見栄を張ろうとする(あるいは冗談を言う)のも、「これまでの自分自身ではない、何かになろう」と目指さんとするベクトル、ある種の変身願望や上昇志向が顔をのぞかせるではないだろうか。
そんな彼女が自身の3Dお披露目で歌い、ラップしたのは、Creepy Nuts「のびしろ」だった。その意味・重み・深みが感じられるし、なにより彼女が自分自身の”等身大”をしっかりと捉えているのが伝わってくる。
そんな彼女にとって、いや「Idios全員」にとっての大きな契機が、2025年5月27日夜に発表された。
「#いでぃおす重大告知」と題された生配信でわいわいとボドゲ対決を終えたあと、Idiosとして初となるミニアルバム『By Colors!』を9月3日に発売決定すると発表した。
そのなかには「謎の先行抽選シリアルコード」が封入されており、詳細は後日改めて公開すると発表されている。実際どのようなアクションを起こすかはわからないが、今回のリリースに関わらず「Idios ファーストライブ」という念願の夢舞台への期待は膨らむばかりである。
ミニアルバムはオリジナル楽曲5曲を収録予定となっており、「かわいいSweet Color」と「クールなBitter Color」が混ざり合ったという謳い文句が記されているが、その言い回しは言い得て妙だ。
Idiosといえば、可愛らしさと泥臭さ。愛らしさと凶暴さ、落ち着きとヘンテコさ、フロントライン(最前線)にいながらもオタクっぽい……といった対置にあるであろうイメージや要素が共存し、独特の“アクの強さ”を発している面々が揃ったユニットだというイメージがある。
Idiosとは、特異性・癖・独自性・風変わりという意味を持つ英単語「Idiosyncrasy」からとられたグループ名である。デビュー時につけられたグループ名は、約3年が経過したいま、よりこの7人にピッタリのものになっている。そしてこのグループ名を発案したのは、他でもない石神のぞみである。
当時メンバーたちと出会って間もない彼女が、自分を含めた7人がこういった変化や成長をしていくだろうと見据えていたかどうか7人それぞれに共通する本質を見抜いていたかどうかは、流石にうかがい知ることが難しい。
ただその慧眼ぶりや立ち振る舞いを知ると、自身の身の丈を知りつつも、それでもなお楽しくて面白いことをやってやろうという彼女の資質が見て取れるのだ。