『Weekly Virtual News』(2025年5月26日号)
にじさんじ・周央サンゴがゲームの主演声優に 星街すいせいは『VRChat』での活動を本格化か
にじさんじ・周央サンゴがゲーム主演声優に抜擢
スペイン村の“バズ”など、話題に事欠かないにじさんじ・周央サンゴに、自身のキャリアに強く直結するであろう話が舞い込んできた。ゲーム作品『魔法司書アリアナ ~七英傑の書~』の主人公の声優担当――つまり、主演作品の誕生である。
もとより彼女は演技力には相当な定評があり、その実力はゲーム配信やTRPGで振るわれていた。そしてサンプルボイスを聴けば、声優としての実力は自ずと理解できるだろう。
VTuberの声優抜擢は事例が増えており、とりわけ朝ノ瑠璃は事務所所属に至っている。とはいえ、声がメイン武器の一つであるVTuberにとって、このキャリアパスは今後も大きな道であり続けるだろう。『魔法司書アリアナ ~七英傑の書~』は、8月21日発売予定だ。
一方で、にじさんじ運営企業のANYCOLORは二次創作ガイドラインを改定した。中心となる改定内容は、切り抜き動画の扱いだ。制作と投稿が登録制となり、ルールが明確化された。
切り抜き動画は、VTuberの数が増えた昨今、その活動を追いやすくするための重要なアイテムだ。しかし、再生数稼ぎを目的に、事実と異なる発信につながる編集がされた動画も少なくない。そのため、切り抜き動画を禁止しているVTuberも一定数見られる。今回のガイドライン改定も、このような事情が背景にありそうだ。
地域振興でのバーチャル活用事例がまた一つ 島根県の伝統芸能が『VRChat』へ
『VRChat』を活用した、地域振興の事例がまた一つ現れた。島根県江津(ごうつ)市の伝統芸能・石見神楽(いわみかぐら)を『VRChat』上で再現するプロジェクトだ。
大丸松坂屋百貨店と株式会社Vによって、石見神楽の演目「大蛇」を再現したワールドと、演目「鐘馗」に登場する「鐘馗(しょうき)」、「疫神(えきしん)」の伝統衣装を再現した3D衣装が展開される。28日に公開され、大阪・関西万博での展示も行い、多方面で体験機会が提供される。
ワールドへの訪問はもちろん無料だが、3D衣装も無償で配布されるのがポイントだろう。「東京から最も遠いまち」とも呼ばれる江津市の文化を広めるにあたり、無料で全世界から体験できるようにするのは最適な戦略といえる。同じタイミングで、旅Vlog動画をいくつか手掛けるVTuber・敷嶋てとらを起用した江津市PR動画も公開されており、エッジの効いたシティプロモーションが仕掛けられている印象だ。
グローバルな取り組みとして、インディペンデント映画の映画祭・レインダンス映画祭のXRクリエイター部門「Raindance Immersive」が今年も開催される。『VRChat』発コンテンツのプッシュを強めている表彰部門でもあり、今回も一定数以上の作品やイベントがノミネートしている。
10回目の開催を迎える今回のテーマは“Step Into the Light(光の中へ)”。部門は8つで、コンペティションに入る作品は30作品となる。6月6日から29日は『VRChat』内でイベント開催が告知されている。例年通りであれば、特設ワールドへのアクセスや、一部ノミネート作品の特別講演が予定されているはずだ。
新衣装発表に2時間ボクシング ユニークなVTuberの『VRChat』活用を紹介
ここ最近盛り上がる『VRChat』とVTuber・ストリーマーの親和性は、本連載でたびたびお伝えしている。先週はいくつか、VTuberやストリーマーのおもしろい『VRChat』活用が見られたので紹介していこう。
まずは、ホロライブの星街すいせいだ。2ヶ月ぶりの休暇明け最初の配信は、『VRChat』で行う新3D衣装お披露目だった。5周年記念ライブで披露された3D空間が『VRChat』ワールドとして再構成され、ここから星街すいせいは新しい3D衣装を発表した。
黒マスクも装備できるフーディーを用いたコーデは、『VRChat』配信やショート動画を中心に活用されるとのこと。どことなくアーティストのオフの日を連想させる装いが、これらの用途を想定しているのは興味深い。普段の配信とは異なる環境が、彼女にどのように作用していくかは見守りたいところだ。
すでに『VRChat』にどっぷりとハマっている企業VTuberの一人、ぶいぱい所属の鬼頭みさきは、グローバルな人気ワールド「VRCボクシング」から配信を実施した。本物さながらの身体動作が求められる、本格的な“eスポーツコンテンツ”だ。
この配信は、なんとパブリックな空間で実施された。つまり、入口さえわかれば誰でも配信会場へ行ける。この特性を利用し、ファンを中心にボクシングに興じる配信を実施したのである。昨年のスタンミの配信スタイルに近いが、企業所属VTuberが同じ手法を採用するのは思い切った判断だろう。
ちなみに、筆者も配信現場をこっそりと訪れたが、休みをはさみながら2時間近くもボクシングに明け暮れる姿にはシンプルに感心した。俗な表現を用いるなら「体力オバケ」である。これを「配信の感想」ではなく「現場を見た感想」として抱けるのはおもしろい。何気ないVTuberの配信に“現場”の概念を生み出せるのは、大きなポイントだろう。
TRPG界隈ではおなじみのシナリオライター・ディズムは、シンガー・藍月なくるとともに、『VRChat』の人気イベント『逢曲時』へ訪問する動画を公開した。二人と関係値のあるVTuber・日ノ森あんずが、同イベントのキャストを務めていることがきっかけのようだ。
このイベントでは、現世と常世の狭間にある旅館で、「誘魅(イザナミ)」という女中の接客を受けたり、舞などを鑑賞できる。世界観がしっかりと作り込まれたイベントであり、TRPG方面の活動が盛んな両名とは相性が良さそうだと、動画からも伝わってくる。
この二人であればいずれ「VRTRPG」にも到達するものと思われるが、TRPG以外にもロールプレイが求められるシーンがある『VRChat』では、TRPG界隈出身者との相性は比較的良い。VTuberやストリーマーとはまた異なる角度から、カルチャーの魅力発信につながりそうな人が現れたのは興味深い展開だ。