6割以上が「外見や年齢性別を脱ぎ捨てたい」 新時代のコミュニケーションをバーチャル配信アプリ運営とともに考える

6割以上が「外見や年齢性別を脱ぎ捨てたい」

  近年、多様なエンターテインメントが台頭する中、バーチャルライブ配信は独自の進化を遂げ、多くの人々にとって新たな自己表現とコミュニケーションの場となっている。そこには、SNSが当たり前になった世界の中でコミュニケーションの在り方や人との関わり方が変わってきていることが背景としてあるのではないか。そう考えた編集部は、読者のみなさんの声を聞いてみることにした。

 それが先日行った「インターネット・SNSの使い方」に関するアンケートだ。結果としては「表アカ」と「裏アカ」という二元論ではないほど、人々は複数のアイデンティティを分離させてコミュニケーションをしていること、そのうえで一部の方は自分の本来的な見た目や性別に規定をされて、理想的なコミュニケーションがとりづらいと感じていることがわかった。

8割以上が”外見や年齢にとらわれない関係を求めている” アンケートで分かった「令和のコミュニケーションの現状」

リアルサウンドテックでは、4月2日から4月14日にかけて「インターネットの使い方」に関するアンケートを実施。本アンケートはリアル…

 その結果を踏まえ、今回はバーチャルライブ配信サービス「IRIAM(イリアム)」のマーケティング部 部長村山秀幸氏をお迎えし、IRIAMの新たなブランドメッセージとキービジュアルにある背景、そして競合サービスとは一線を画すIRIAMならではの魅力、そしてアンケートの結果と現在のIRIAMユーザーの共通点などについて、じっくりと話を聞いた。

 新たなキービジュアル・キャッチコピーで描いた「リスナーも主役の舞台」

ーーまずはじめに、村山さんのこれまでのご経歴といまのIRIAMでの立ち位置について伺わせてください。

村山:大学卒業後、オフィスキューで大泉洋さんたちと芸能関連の仕事をしていました。映画監督に憧れていたのが原点です。その後、映像や広告の世界でクリエイティブディレクターとして活動し、さまざまなプロジェクトの企画・制作を担当しました。そこからアプリゲーム業界に転身し、いくつかのヒットタイトルを経て、昨年4月よりIRIAMのマーケティングを担当しています。

ーー村山さんがIRIAMにジョインされる前と後で、サービスに対する印象の変化はありましたか?

村山:正直、最初は「得意領域ではないかも」と感じていました。従来のキービジュアルだけを見ると一見美少女系コンテンツに似たものを感じ、「自分が使うサービスではないかもしれない」と思ったんです。ただ、実際にアプリを触ってみると、シンプルに「面白い!」とその印象が一変したんです。活気があり、ユーザーの熱量が高く、ライバーとリスナーが心から楽しんでいる様子に驚かされました。「外から見える印象」と「中身の楽しさ」のギャップこそが、マーケティング上の課題だと感じたんです。

ーーその課題をもう少し詳しく伺えますか?

村山:広告を見て興味を持ってくれたユーザーが、ダウンロードの手前で離脱してしまうケースが多くありました。その理由は、接触する情報ごとに受ける印象が異なるからです。広告では、リアルなユーザー素材を使って、ワイワイと楽しそうな雰囲気を伝えていますが、ストアや公式サイトに行くと、落ち着いた美しいイラストや治安の良さを強調した「静かで清潔」なトーンになっている。そのため、「楽しそう→クリック→静か→あれ?違うかも→離脱」という構造が生まれていたんです。

ライバー5秒で紹介 GO! #IRIAM

 さらに、IRIAMはアーカイブ機能がないため、アプリを実際に使ってみるまで何が起きているのか分かりづらい。広告を覚えている人も少なく、せっかく興味を持ってくれても、インストール後に楽しさが伝わる前に離脱してしまうケースが目立ちました。

ーーそのため、新しいキービジュアルやキャッチコピーを作られたわけですね。

村山:はい。IRIAMの面白さは、コメントやギフトといったコミュニティ参加によって生まれるリアルタイムの体験にあります。それをインストール直前の接点であるストアや公式サイトで伝えたい。楽しみ方を先に記憶してもらい、初期行動に結びつけるための強いメッセージが必要だと考えました。

ーー新しいキービジュアルは、従来の可愛らしい雰囲気から一新され、より多様なキャラクターが登場し、賑やかで自由な雰囲気が表現されているように感じます。

村山: 特に「リスナーも主役の舞台」を描くことを強く意識しました。IRIAMには、0.1秒の低遅延でコミュニケーションできる独自の技術や、豊富でエンタメ性の高いギフトなど、リアルタイムの盛り上がりを生み出すための環境が整っています。そのなかで、ライバーとリスナーの掛け合いによって、毎日1万以上もの配信枠で、多種多様で個性的なコンテンツが自発的に生まれているのです。

キービジュアルに描かれるリスナーたち

 私たちはその「共創性」こそがIRIAMの核だと考え、今回のキービジュアルではライバーだけでなく、配信に参加し盛り上げるリスナーの存在も前面に押し出しました。ギフトを投げたり、コメントで反応したり、絵文字で感情を表現したりといった一つひとつの行動が、配信の一部となり、その空間の“物語”を形作っていく。それを、視覚的にも伝えられるよう意識して制作しています。

ーー「自分でいるより、自由になれる。」というキャッチコピーも非常に印象的です。

村山:「自分でいるより、自由になれる。」というキャッチコピーには、IRIAMが提供する“自己解放”の価値を込めました。私自身はある程度の年齢の男性ですが、IRIAMの中では現実の年齢や性別といった属性を意識することなく、自由なキャラクターとして配信や交流を楽しんでいます。

 実際、多くのユーザーが、自分の“ありたい姿”でコミュニケーションを楽しんでおり、そうした姿を見るたびに、IRIAMが提供しているのは単なる配信の場ではなく、現実の制約から一歩離れた「もう一つの自分でいられる場所」なのだと実感します。

 ライバーだけでなく、リスナーにとってもこの体験は共通していて、外見や属性に縛られずにいられる自由さが、本音のやり取りや自然なつながりを生んでいます。他のライブ配信サービスでは「ライバーとして輝ける」というメッセージが前面に出されることが多いですが、IRIAMは“観る側”の自由も大切にしている点が大きな違いです。

ーー今回のインタビュー前に、リアルサウンドテックの読者向けに「インターネットやSNSとの関わり方」についてアンケートを実施したところ、興味深い結果がいくつも得られました。村山さんがこれらの結果を見て、印象に残ったものはどの項目でしょうか?

村山:「自分の外見を脱ぎ捨ててみたいと思ったことがあるか?」という問いには62%の人が「はい」と回答していました。また、「SNSで複数アカウントを使い分けているか?」という質問には72%が、「性別や年齢などの属性にとらわれずに人間関係を楽しみたいと思うか?」という問いにはなんと87%が、それぞれ「はい」と答えています。

 この結果には、私たちも正直驚いています。ここまで、多くの人が現実世界の枠に収まりきらない“もう一人の自分”を持っていて、その自分で生きたい、関わりたいという思いを抱えていることは予想外でした。あたらしい現代人の気持ちをよく物語っていると感じました。私たちIRIAMとしても、この結果には大きな示唆があると感じています。

ーーお話に挙がったように、アンケート結果からは多くの方が「外見からの解放」を求めていることが分かりました。IRIAMでは初期からそういった「コードから解き放たれる」ような価値観を意識していたのでしょうか?

村山:そうですね。私自身は創業メンバーではないのですが、IRIAMの立ち上げに携わったのは、VTuber黎明期から企画や運営に関わってきたメンバーたちです。当時の経験から、外見に縛られずに表現できる楽しさを、より多くの人に届けたいという想いで、このサービスが生まれました。

 そうした“本質でつながる世界”を描こうとする姿勢は、現代のカルチャーにも通じていると感じています。たとえば最近読んだ『路傍のフジイ』や『スキップとローファー』といった漫画にも、IRIAMの精神と重なる価値観が描かれていると感じました。外見や肩書きよりも、内面の個性や魅力が重視される世界観が描かれていて、「まさにIRIAMらしいな」と。

 そうした価値観は、現代の“推し活”ブームにも通じるところがあります。年齢や性別を問わずオタク文化を楽しむ人が増える一方で、「若い女性だからこそ起きる面倒」や「年齢層の違いによる居心地の悪さ」といった課題も見えてきています。

 だからこそ、外見というフィルターを外して、純粋に“好き”を語り合える場所の価値が増している。IRIAMは、そうした安心して関われる場として、今後ますます多くの人の居場所になれると感じています。

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