改めて問う、“モテ”とはなんなのか? 『ラブパワーキングダム~恋愛強者選挙~』を見終えて感じたこと
単刀直入に。かつ、もう一度だけお願いしたい。『ラブパワーキングダム~恋愛強者選挙~』(ABEMA)を観てはくれないだろうか?
“もう一度”の前はいつだったかと言うと、同番組の折り返しタイミングでコラムを執筆したときのこと。読者各位においては、当時の記事をきっかけに最終話まで。そうでなくとも、せめて途中までは観てくれたと信じたいが、投票前日の選挙カーばりの念押し具合で、最後のお願いを差し上げている次第だ。それだけのために、このペンを握っている。
先ほど“投票”という言葉が登場したが、本番組こそ投票が重要な役割を担うもの。日本で“爆モテ”人生を謳歌する男女16名の恋愛強者たちが、トルコを舞台にハイクラスな恋の駆け引きに身を投じ、メンバー同士での投票を通してモテの頂点を目指すゲームが繰り広げられるのである(ちなみに早くも、シーズン2の制作決定が発表された)。
こうしたジャンルを長年にわたり追っている筆者にとっても、これまでにない企画だった。さまざまな肩書きを持ち、なかには“恋リア”出演歴がすでにあるメンバーが参加していること。形なき“モテ”を具現化し、その能力を競い合うこと。あるいは、舞台となったトルコの絶景など。どれかひとつは必ず、観る者すべてに引っかかるはずだし、つい先日に最終話を迎えたわけだが、モテの頂点=キング/クイーンの結果もまた納得いく内容だった。だからこそ、ここまで強く勧めているのである。
メンバーが競う“モテ”とはなんだったのか? 同性、異性と問わない“求心力”が鍵に
さて、前回コラムでもテーマに取り上げたのだが、本番組は常に”モテ”とはなにか? という命題とともにあった。結論として、メンバーたちが共同生活をした期間と視聴者の体感でいえば全8話=約420分間を通して“モテ”という言葉を再定義するのが、本番組が担った最大の役割だったのだと思う。
そもそも、我々視聴者はミスリードに操られていたのかもしれない。俗な言い方をすれば、モテる=周囲からチヤホヤされること、だと。その能力を競い合うとなれば、自身から“ウソ”のアプローチをすることも必要である。メンバー本人らを含め、誰もが多少なりともそう考えたに違いない。
が、日数を重ね、メンバー同士の投票=モテVOTEをなんとか勝ち残り、ランキング上位に進んだメンバーほど、こう強く感じたはずだ。もちろん、自分から相手に働きかけることも最初は必要。だが、真にモテるとは、周囲の人々から大切な存在として求められること。そのために必要なのは、自分を偽らず、どれだけピュアにいられるかだ。彼らが辿り着いた答えが、俗な考え方の対極にあったとは、なんたるアイロニー。ともあれそうした構図を我々一般人でなく、自他共に認める恋愛強者たちが再現してくれた点でも、ある程度はわかりやすく提示されていた気もするわけだが。
そして、どれだけピュアにいられるかは、自身がオトしたい=好意を抱いてほしい相手に向けてだけではない。周囲の友人に対しても同様でなければならない。つまり、モテとは同性や異性を問わない、人間としての求心力。日頃、大してそうでもない場面でこの言葉が多用されがちだが、いまこそ使いたい。これぞ、“コペルニクス的転換”である。
おらつキング=あり、恋愛名言メイカー=ひろき、番組の笑いどころをハイライトで紹介
前述の内容を、メンバーごとの具体例で振り返ってみたい。今回の旅を通して、筆者が最も爆笑させられ、同時にピュアだと感じたのが、俳優兼経営者のあり(亜莉)。彼は旅の中盤、デート相手として自身を選ばなかったアナウンサーのあかね(瀧山あかね)に対し、ソファーの上にコンバースの靴で直座りした状態で、メンチを切りまくっていたのをよく覚えている。
さらには「ウザいね、あなたとてもウザいね」と、謎のカタコトで畳みかけながら、くねくねと動き回り、このときのぎゅんとねじれた首の角度や、見え隠れするヤンキー気質ーーあの瞬間、彼はトルコの誰よりもピュアに人間らしさを爆発させていた。その姿に敬意をもって、こう言いたい。ありは、“おらつキング”だったと。
大手コンサル勤務のひろき(田中宏樹)もまた、違う意味で誰よりも“着ていなかった”メンバーのうちのひとり。彼もあかねに振り回された“おとこのこ”なのだが、自身が騙されていると感じながらも、彼女を慕い続ける。それでいて、大手コンサル勤務&会社経営者という輝かしい経歴にも目を惹かれるだけでなく、番組終了後に自身のSNSで全メンバーにキャッチコピーをつけるなど、恋愛名言メイカーとしても活躍をしてくれていた。ちなみに、筆者が最も好きなのは、プロバスケ選手のけいいち(長谷川惠一)に名付けた「心がベンジャミンバトンな恋愛兄貴」と、俳優のけいし(荒井啓志)への「戦略的恋愛参謀長官」だったと付け加えておく。
また、鍛え上げた肉体美をときおり無駄に披露したり、室内で必要ない、かつ妙に“様子がおかしい”サングラスを着けていたり、自身の敗者復活時には「恋愛証券取引所のストップ安株になっていたから、妥当」と独特なコメントを残していたり。この番組は、彼の存在なくして盛り上がらなかった。