にじさんじ7周年で“更なる一体感”を見せつけた8人のライバー 『OVERTURE Nighttime Stage』ライブレポート

2025年2月21日から23日にかけて、『にじさんじ 7th Anniversary Festival(にじさんじフェス2025)』が幕張メッセで開催された。
今やインターネットシーンを飛び越えつつあるバーチャルタレントシーンの中でも群を抜いて人気を集めるVTuber事務所・にじさんじの超大型イベントということもあり、全国各地から多くのファンが幕張メッセに集まり、活気あふれ大いに盛り上がった。
開催初日には『にじフェス』をはじめとする関連ワードがSNSの日本トレンド1位(もしくは上位)を獲得し、その影響力を見せつけていた。
2月24日には『にじさんじ 7th Anniversary Festival』を締めるライブイベント、にじさんじ 7th Anniversary LIVE『OVERTURE』が開催された。昼・夜の1日2回公演にわたって、Daytime Stageは海外メインで活動しているメンバーを、Nighttime Stageは日本メインで活動しているメンバーを中心に、それぞれパフォーマンスを披露する形となっていた。
今回、筆者はイベントに足を運び、24日に開催されたライブイベントの取材も試みた。本稿では、写真を交えながらライブレポートをお届けしたい。
筆者が取材した「Nighttime Stage」に出演したのは、える、アルス・アルマル、星川サラ、甲斐田晴、ローレン・イロアス、レオス・ヴィンセント、風楽奏斗、ソフィア・ヴァレンタインの8人だ。
アルスとソフィアによるライブ前アナウンス、そしてステージ袖で円陣を組む声が聞こえると会場から歓声が湧く。フェス3日間とおおよそ同じく、客層は女性7割、男性3割といったところだろうか。
1曲目は「Virtual Strike」。8人が揃って歌い、踊り、なんと原曲にはないラップパートも披露。その後はそれぞれソロ・複数人でのパフォーマンスを見せ、十人十色ならぬ“八人八色”な内容となった。
2曲目に登場したレオスがチョイスしたのは、フレデリックの「オンリーワンダー」。フレデリックのヒットソングというと、コミカルな要素を用いた歌詞・MV・サウンド構成になっていることが多く、エンタメやお笑いをつよく意識した言動でファンの注目を集めるレオスが、「音楽ライブの一発目」として選んだのには納得だ。レオスらしい、「マジ」と「ユーモア」が混ざった選曲だったように思う。
つづく星川と甲斐田は、ヤバイTシャツ屋さんのヒットソング「ハッピーウェディング前ソング - 2年以内に別れないver.」を披露。赤青に染めてカップルに見立てた黒子2人を(かなり強引に)お祝いしてアッパーなムードを演出した。
3曲目にはレオスがえるとともに登場し、アニメ『かいけつゾロリ』のテーマソング「ハッスル」を歌い、次の曲ではえる、アルス、ローレン、風楽の4人による「ぼうけんのしょがきえました!」が流れ、さらに会場を盛り上げる。
今回の出演メンバー8人をあらためて見てみると、ファンタジーなプロフィールをもったメンバーが多い。そういったなかでRPGをパロディしたアップテンポな楽曲、しかもにじさんじの面々もファンも大好きなボカロ曲。これで盛り上がらないわけがない。
ライブ序盤からユーモアやコミカルさを強く意識した選曲がつづき、それらを軽快かつ思い切りよくパフォーマンスをしていくことで、会場のテンションを上げていこうとするのが目に見える。
選曲・演出・パフォーマンスにさまざまな意味を持たせ、メッセージを通していこうという流れはこれまでのライブでも見られていたが、この日のセットリストはもしかすれば過去イチで明確かつわかりやすく提示された例かもしれない。
続けて笑顔を見せながらMCパートを終えた星川サラが「Ubiquitous dB」を歌ったのだが、意味のもたせ方・メッセージの通し方という点でピカイチだ。
この曲は『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の劇中歌であり、同作のなかで「世界初のAR(バーチャル)アイドル」として描かれているキャラクターが歌う楽曲でもある。
「バーチャル空間」「アイドル」という、星川にとって欠かせぬ部分、彼女自身が大好きな作品の登場人物、「この一瞬に/永遠に」生きることにフォーカスをおいた両義的な歌詞、ギターに重きをおいたクールな楽曲。こうした要素が揃った曲をセレクトし、それらを背負いながら歌っているのが見て取れた。
つづくレオスとローレンの同期組コンビは、こっちのけんとの「はいよろこんで」。まさかの選曲に驚いた観客も多くいただろう、それまでテンポよく動いていたペンライトが、驚きで一瞬だけ「スンッ」と止まったのが目に見えたほどだ。
この選曲もまた、この日の雰囲気にマッチしたユーモアのある楽曲なのだが、なんと2人は全体を通してダンス&シングでクールにキメてみせた。レオス&ローレンの同期コンビが、コミカルなこの曲を笑いの要素一切なしにバッチリと披露する。何重にもヒネった結果生まれた特大のギャップにヤラれた観客もいただろう。
そんな2人のダンス&シングにつづくように、複数人でのダンスに重きをおいたパフォーマンスがつづく。える、ローレン、甲斐田が3つの並んだ椅子を横に移動しながらダンスをしていく「オルターエゴ」を披露すれば、Gigaによる「Ready Steady (feat. 初音ミク,鏡音リン, 鏡音レン)」を披露する星川、風楽、ソフィア3人は緩急のついたフォーメーションダンスをみせてくれた。
クラブ寄りのサウンドメイクにあわせてのダンスはクールそのもので、一瞬だけみせるキメのシーンには会場からも黄色い歓声がワッと湧きあがる。
そこから、クールなムードを引き継ぐようにえるが「花になって」、風楽が「オトノケ」を披露する。えるの出番では本家MVを模した車の運転シーンがムービー映像で流れ、風楽の出番では瞳を光らせ妖しさを増した演出で登場し、『ダンダダン』オープニング映像を意識したであろうムービーが流れる。両者ともに本家・タイアップ作品への愛・リスペクトを感じるさまざまな演出をみせてくれた。
なにより、すこし低めで芯のある歌声を披露したえる、バックで鳴っているオケに頼ることなくバチバチのラップ&フロウを決めた風楽を見ていると、両者ともにかなり強い意気込み、かつ高いハードルを自身に設定したうえでライブに臨んだのがつたわってくる。
える、風楽、ソフィアがにこやかにMCをしたあとに、続いて歌い始めたのはアルスだった。共通衣装を着つつ、天使の輪と白い羽をつけて歌うのは、ナナヲアカリの「ダダダダ天使」だ。
どことなく自信なさげで自虐的な節のあるアルスが、〈注目されすぎたらビビる ディスコミュ系〉〈深夜のネトゲがやめられない!〉〈ダメダメなあたしを愛してね!〉と会場に向けて歌う姿に、心が揺さぶられたファンも多かったろう。
星川同様、普段の配信を見ていたり、楽曲について知っていたりしないと気づきづらい、ハイコンテクストなメッセージを伝えようとしている。
そんなアルスからバトンを渡されたソフィアは、直近になってリリースした自身初のオリジナル曲「ヴェルヴェット」を歌っていく。スローテンポかつ情感あふれる1曲に彼女のウィスパー気味な歌声が絡み、〈どうせいつかは忘れる最初であっても この先二度とない僕のもの〉という歌詞の切なさをより色濃くする。
水色&銀色がモチーフカラーであるアルスから、銀色&紫色がモチーフカラーのソフィアへのリレー、そこから2人がデュオで歌唱した「可愛くなりたい」は、共にウィスパー気味で線の細い声を持つ2人だからこそ、愛らしいビジュアルとダンスが際立ち、ポップなムードに乗っかっていった。
ソロのパフォーマンスといえば、残るローレンと甲斐田も印象深い。ローレンはこれまで「神っぽいな」「ド屑」「ずうっといっしょ!」などシニカルな描写をつよく含んだ楽曲のカバーを投稿し、いずれの楽曲もファンに支持されてきた。
そんな彼が「それでは聞いて下さい! 『シャンティ』」と口にすると、会場にこの日いちばんの歓声と悲鳴が上がった。悪役視点のストーリーを持ち前の低い声色で歌っていくと、つぎはため息を漏らす観客の姿がチラホラと。「選曲の時点で“勝ち”」と、こうも強く感じさせてくれる組み合わせも、なかなかにない。
つづく甲斐田は自身のソロ楽曲「水の記憶」を歌唱する。ROF-MAOやVΔLZでの活動でライブ経験も豊富な彼だが、ソロ楽曲を披露する場面は限られている。
そんななかで、自身7枚目となる最新曲を歌う、それもかなりエネルギッシュに歌ってくれたのには驚いた。「クラップユアハンズ!」「もっとくれもっと!」「手拍子をくれ!」そんな風に会場へ呼びかけながら、ステージを左右に歩きながら歌う甲斐田の姿には、いくつもの活動でつけてきた自信と経験が目に見えた。
そのままライブは最終盤へ。女性陣4人が「最上級にかわいいの!」でポップ&キュートに歌い上げれば、男性陣4人は「狂乱 Hey Kids!!」でアグレッシブ&ホットに盛り上げ、本編最後には『プロジェクトセカイ カラフルステージ!』の楽曲「Flyer!」で締めくくった。男女双方の魅力を引き出しながら、「にじさんじの未来へ」というニュアンスも混じった選曲に心躍ったファンも多かったろう。
アンコールで披露したこの日最後の楽曲は、にじさんじ7周年記念プロジェクト楽曲としてリリースされた「Arc goes oN」。7年目から先、にじさんじの栄光を願って未来へと橋をかけていこうとする1曲。カラフルな照明とアップテンポなサウンド、そして8人のボーカルとともに締めたのだった。





































