お菓子の袋やチラシを超絶クオリティの衣装にーーバズってブレイクした衣装デザイナー・塩川夏子が語る「第二のステージ」

衣装デザイナー・塩川夏子が語る第二のステージ

反響のなかで見えてくる、SNSの“特性”

ーー鏡の衣装はTikTokで665万回再生(2025年2月現在)と、かなりの反響でがありました。

塩川:こんなに反響があるとは思っていなかったので、本当に驚きました。しかも想像していなかったようなコメントがきて、それも面白かったです。私は「かっこいい」とか「可愛い」っていう反応がくるかなと思っていたのですが、「危ない」とか「真昼間に着ないでください」「目がやられる〜」とか、大喜利みたいなコメントが多くて(笑)。「あ、そういう感じなんだ!」と楽しませてもらいました。

ーーツッコミに近いですね(笑)。

塩川:グミの服を投稿したときも、「大量のグミ食べたい」とか。そっち!? って私もツッコミたくなるようなコメントが来ました(笑)。

ーー作品は、複数のSNSで発信をしているのですか?

塩川:そうですね。衣装はSNSに照準を合わせて作っているわけではないのですが、投稿するSNSによって見せ方を変えるようにしています。同じ衣装でも、たとえばInstagramだったらちょっとオシャレな感じで写真を撮ってみたり、Xだったら、使った素材と完成した衣装の画像を2枚貼って、ビフォーアフターをわかりやすくしたり、TikTokは動画を見てもらえるように、最初の掴みを考えたりしています。

@natsuko_make マンガって服になるんだ、、、、、😳⁉️ ##推しの子##oshinoko 【推しの子】原作完結おめでとうございます!😭❣️ #衣装 #costume ##making##kawaii#costumedesigner モデル @九重くく #CapCut ♬ POP IN 2_推しの子公式 - TVアニメ【推しの子】公式

ーー同じ作品でも、SNSによって反応は違いますか?

 
 
 
 
 
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塩川:違いますね。TikTokは、先ほど話したようなツッコミっぽいコメントが多いです(笑)。反響があったのも、鏡の衣装や、『【推しの子】』の漫画を使った衣装です。反響がある衣装もSNSによって違います。Instagramだと、ディズニーの袋を使った衣装の1番反響が大きかったです。純粋に見た目のデザインが可愛いものが、Instagramでは反響が大きい気がします。

 Xでは、IKEAの服が1番反響をいただきました。多分パッと見でわかりやすかったのもありますし、IKEAって全世界共通でわかるものなので、海外の方からも反応をいただけたんだと思います。

『IKEAの服』(モデル=ちち)

ーーなるほど。最近ではVTuberの方の衣装や、マンガのキャラクターなど、2次元の衣装を作っていますよね。

塩川:2次元の衣装を再現するときは、現実世界で着ても違和感がないかを大事にしています。そのまま作って再現度を高くすることはできるんですけど、現実にその衣装を着ている人がいたら、「なんか違うな……」って感じると思うんです。

宝鐘マリン船長の衣装を リアルverで作ってみた(^-^)

 VTuberの宝鐘マリンさんの衣装を再現したときも、本当はお腹の部分が透けてて、おへそが見えている衣装なんです。でも現実で着るとなると、おへそを出したくない人って一定数いると思うんです。実際、アイドルさんの衣装を作っているときも、「お腹は出したいけどおへそは出したくない」っていう人もけっこう見てきました。私自身も、そのまま再現するより、誰が着てもマリン船長になれる衣装を作りたかったので、そこは割り切って作りました。

 あと、本来は肩を出してマントを羽織っているんですけど、そのまま作るとマントがズルッと落ちてきてしまうと思ったので、ジャケットを着るだけでそのまま肩も出るし、マリン船長っぽいデザインも残した衣装にしました。再現衣装を作るときは、3次元の人が着ることが軸にあって、そこからどう本家に寄せられるかを考えています。2次元のデザインにはもちろんリスペクトをしつつ、あくまで着るのは3次元の人、ということを念頭に置いてますね。

好奇心を絶やさないために

『アルミシートの服』(モデル=ririko)

ーー改めて、デザイナーとしての経験を振り返ってどうでしょうか。

塩川:意外かもしれないんですけど、作っていると自分ではいい衣装なのかわからないんです(笑)。満足感や達成感で良く見えてしまったり、逆にアラ探しをしたり、作っているときの感情や、制作が上手くいってる、いってないなどの影響もあって、「これって人からどう見えるんだろう」という客観的な視点が持ちづらいんです。

 だから昨年SNSでたくさん反響をいただいて、「いい衣装になってるんだ」と、改めて発見したというか、いい意味でギャップを感じることができました。とくに「なんでも服にする人」の作品は“衣装で遊びたい”が主軸で、「カッコいいでしょ?」と思って作っているわけではないので、よりそのギャップを感じましたね。

ーー塩川さんが衣装を制作するときに、大事にしていることはなんですか?

塩川:楽しむことを忘れたくないなと思っています。いい衣装を作るためにも、自分のテンションが上がる環境にしたり、仕事量を調整することを意識しています。 私は、何かを成すために服を作っているんじゃなくて、服作りが好きで、楽しむ気持ちを大事にしています。SNSを通じて、その楽しさが伝わると嬉しいです。

ーー今後の活動については、どう考えていますか?

塩川:この活動をできるだけ長く続けていきたいと思っています。おばあちゃんになっても「楽しい〜」ってミシンを触っていたい(笑)。いつか服作りで疲れてしまったら、ミシンから手を離しちゃうんじゃないかな、と思うこともあるんです。現状いろんなことに興味はあるのですが、まだ自分のなかで明確なものになっていない部分もあって。だから、いまはあえて目標は立てずに、自分のなかにある「こうしたら面白そう!」っていう好奇心とワクワクを、大切にしたいなと思います。

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