連載:エンタメトップランナーの楽屋(第14回)

“推し”ロバートと仕事をする夢を叶うも…メモ少年がFIREBUG代表取締役・佐藤に語った“クリエイターとしての苦悩”とは

篠田のクリエイターとしての葛藤 “ビジネス脳”と“クリエイティブ脳”の使い分け

佐藤:最初に秋山さんと仕事したのは、スポンサーありきの番組ではないんですよね?

篠田:そうですね。最初はコロナ禍のとき、オンラインフェスが流行って。そのときにネットコンテンツを作ることになったんです。自分で企画を考えて、予算を使っていいよって。それで秋山さんが『クリエイターズ・ファイル』でやっているテレビプロデューサー・唐沢佐吉にメ~テレを改革してもらうみたいな企画をやっていただくことになりました。それが、社内的には数字が良かったので、3年目で地上波と配信でまた同じようなシリーズをやらせてもらって。そのタイミングでYouTubeで、作り手が実はファンだったという裏動画を出させていただきました。

佐藤:それまでは言ってなかったんですか?

篠田:そうですね。僕自身が中学のときからメモ少年というSNSアカウントを持っていたので、そこでは言ってはいましたけど。YouTubeに載せたことで広まって。その勢いをもって、初めて『秋山歌謡祭』という番組をやらせてもらいました。それが入社4年目です。

佐藤:あれってどういう座組みでやってるんですか? 単発特番みたいな感じなのか、クラウドファンディングとかやってたんでしたっけ?

篠田:そうです。1年目は局の60周年記念特番だったんですが、次の年は、周年など関係なく番組予算を使ってやりましょうって。そのときに、大きい特番をローカルでやるのは結構体力を使うのでクラファンをさせてもらって、予算をさらに積み上げて作りました。

佐藤:なるほど。お金を作るとか、ビジネス的なことを考える必要もあるんですね。

篠田:そうです。ビジネスファーストな企画書とかも作ります。

佐藤:それはそういうカルチャーなんですか?

篠田:メ~テレに関しては、そのカルチャーが強いんだと思います。『ハピキャン』というキャンプ・アウトドア情報メディアをやっているのですが、その番組の視聴率というよりかは、いかにその『ハピキャン』事業全体で稼いだかっていうところがKPIになってるんです。だから、どちらかと言うと「おもしろい企画書」を通すんではなくて、「事業計画書」を通すみたいな。

佐藤:じゃあ、プロデューサーなんですね。

篠田:そうかもしれないですね。僕のなかでクリエイター的な目線とビジネス的な目線は違うなと悩んでいて。

佐藤:たしかに経営について考えるときと、クリエイティブについて考えるときは競技が全く違うなって、自分の会社を作ってからかなり実感しています。だから、僕はクリエイティブなものを作るときと、経営をやる日を分けています。経営をするってなったら経営した方がいい。僕、寝るとやっぱリセットするなと思ってるんで、水曜日は企画を考える日、その日は経営を一切何もやらないとかにした方がいいなって。

篠田:なるほど。自分はコンテンツを作りたくてこの業界に入っているし、ディレクターをやりたいから企画を出しておもしろいVTRを考えるんですけど、それをどうやってマネタイズするかも自分の仕事になる。そのおもしろいものやるためにはそっちもやんなくちゃいけないみたいなのが、難しくて悩んでいるんです。そういう悩みに対して、なにかアドバイスがいただきたいです。

佐藤:うーん……まず一旦稼ぐのを考えきるのがいいんじゃないですかね? 両方はいっぺんに進めるのは無理だから、まず稼ぐっていうのを考えるターンを作って、そのカードが出揃ったら企画を考える。実際、弊社は稼ぐ部署と企画を作る部署は別ですし。ビジネスプロデューサーとコンテンツプロデューサーを置いた方がいいなと思いますね。視点が違うので。

篠田:たしかに。

佐藤:もちろん一挙両得はありますよ。超おもしろいものができたときに、企画もお金も稼げるってことはなくはないと思います。

篠田:ビジネスプロデューサーが入ってくれた時に、ビジネスプロデューサーの考えを理解するためにも、勉強した方がいいなとは思ってはいます。ただ、どう頑張っても時間と体力が2つはやれないというか、やっちゃうと、作りたいものに心血注げないなって。佐藤さんはどうやって脳を切り替えたんですか?

佐藤:チェンジしましたよね。吉本のときは、おもしろいものを作ったら稼げるだろうでやっていたんですけど、会社だと、とはいえ稼がないと死んじゃうから、稼ぐ方から、まず考えて、今は個人でおもしろいもの作るというより、組織としておもしろいものを作っていきたいなって。なので、特にストレスはないんですね。

篠田:なるほど。ビジネス逆算で作るのが現時点では自分の能力、実力的に足りないから、すごくおもしろいものを作っていったときに「エンタメ」も「ビジネス」も両方いけるじゃんってなって、結果、お金も稼げてるってのが、いまの僕のなかではすごい理想だなとお話ししていて思いました。

佐藤:あと、これはエンタメの夢でもあるとは思うんですけど、本当に当たったら、もう稼げもなにも言われなくなるぐらい稼げるので、余裕があれば、それだけを求めるロマンもありですよね。それがエンタメなので。(笑)

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